私の想像通り相手が佐々木だとすれば、次の遠征までは関係を持つ心配は無いので、はやる気持ちを抑えてじっと耐えていました。
保存してある写真だけでも、妻に白状させる事は容易だとは思ったのですが、どうしても2人が逢っている現場を押えたくなったのです。
その理由は現実にこの目で見ないと、これだけの根拠が有りながらも、妻を信じたい気持ちが残っているからです。
妻が告白して決定的になっても、20年近く信じて愛してきた妻を、責めきれないと思ったのです。
それからの私は、今までにこれほど妻を意識して見た事があっただろうかと思えるほど、毎日妻を目で追うようになっていましたが、笑顔の妻を見れば見るほど、今までの妻の事を考えれば考えるほど、この妻が私を裏切り、私の知らないところであの様な淫らな行為をしていたとは信じられません。
私と一緒にいる時の笑顔も、昔から何も変わらないのです。
不倫疑惑を除けば、私にとってこれ以上無い良妻なのです。
「来週の沖縄行きは何泊の予定だ?」
大会は別にして息子達の練習試合は、ほとんどが近県の学校とするのですが、年に数回は今回のように遠方にも出向きます。
「何校かと2日間試合をしてから、3日目は海で遊ばせてもらえるらしいから、子供達は2泊して午後の便で帰ってしまうけれど、私はもう1泊させてもらってもいいかな?2泊とも那覇市内の子供達と同じホテルで泊まるから、子供達を見送ってから恩納村のホテルで泊まって、次の日北の方を観光してから帰りたいの」
本当は駄目だと言って、知っている事を全て話したかったのですが、ぐっと我慢してそれらの言葉を飲み込みました。
「美子は本当に旅行が好きだな」
「だって、交通費は同じなのだから、勿体無いから観光でもしてくればと言って、私をその気にさせたのはあなたでしょ?でも、私ばかりごめんね」
日程表を見ても、子供達の予定は妻の話に嘘は無いようです。
いくら何でも子供達や他の父母がいるホテルで、2人が部屋を共にする事はないと思った私は、3日目に泊まる恩納村のホテルに乗り込むことにしました。
その日私は午後の便で帰る息子達に会うのを避け、夕方に着く便に乗って沖縄に向かい、タクシーで妻の泊まるホテルに急ぎましたが、ホテルが近付くにつれ、既に2人の行為が始まっていないか心配になり、着くとすぐにフロントまで走って行って妻の部屋のルームナンバーを尋ねたのですが、妻の部屋どころか決まりだからと言って、ここに泊まっているかどうかさえも教えてもらえません。
急用があると言って、身分証明書代わりに免許証を提示したのですが駄目でした。
ホテルの対応は当然の事かも知れませんが、この時の私は、妻が男と泊まっている為に、トラブルを避けたくて教えないのだと思い込み、暫らく食い下がったのですが結果は同じです。
突然部屋に押し掛けて、言い逃れ出来ないようにするつもりだったのを諦めて、仕方なく電話を掛けたのですが、呼んではいても妻は出ません。
私の計画は大きく狂い、ロビーにあるソフアーに座って今後の対応を考えていたのですが、その時妻がエレベーターから降りてくるのが見えました。
妻はパーカーだけを着ていて白い足を太腿まで晒し、隣にはお揃いのパーカーを着た見覚えのある男が寄り添っています。
(やはり佐々木だ)
私は咄嗟に隠れようと慌てて立ち上がったので余計に目立ってしまい、一瞬佐々木と目が合ってしまったのですが、私がここにいるとは夢にも思っていない佐々木は、私だとは気付きません。
妻もまた何故か恥ずかしそうに終始俯いていて、周囲を見る余裕すらないようでした。
2人は外に出て行ったので後を追うと、ホテルのプライベートビーチは一部きれいにライトアップされていて、何組ものカップルが散歩したり、波打ち際に座って寄り添ったりしているのが見えました。
その時2人は立ち止まり、佐々木はパーカーを脱いだのですが、お腹の出た不恰好な体形に似合わない、競泳用の小さなパンツを穿いています。
しかし妻はパーカーを脱がずにただ俯いていたので、佐々木は妻にも脱ぐように言っているのか、仕切に妻のパーカーを引っ張っていました。
暫らくその状態が続いた後、妻は小さく頷いて脱ぎ始めたのですが、パーカーを脱いだ妻の後ろ姿を見た瞬間、心臓が止まってしまうかと思いました。
それと言うのも、一瞬妻は全裸だと思ったのです。
よく見ると肩甲骨の下辺りと腰の両横に、白く細い紐の結び目が見えるので、何かは着けているようなのですが、後ろから見る限りお尻も丸出しで裸同然なのです。
佐々木は妻が身体を隠せないように脱いだパーカーを奪い取り、恥ずかしそうに俯く妻の手を引いて、更に辱めるかのように何組もカップルがいる方に連れて行き、しばらく辺りを意味も無く歩き回ってから、椰子の木が植わっている暗闇の方に消えて行きました。
tag : 妻物語
コメント
承認待ちコメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)