CR 10/24(水) 22:08:41 No.20071024220841 削除
『勝手な人。私を置いていって。もう少しだったのに』
考えずとも、妻は私と佐伯の愛撫を比べてしまいます。
佐伯には乳首を愛撫されただけで達してしまう。乳首がこんなに感じるとは思ってもいなかったのです。夫のそれは雀が啄ばむ程度にしか感じません。佐伯の接吻はストレートグラス一杯にも余る量の唾液を流し込まれ、全身に疼きを走らせたのです。舌と舌を絡み合わせ、痺れるほど思い切り吸われ、長い舌を差し込まれた時は脳を焼かれる思いでした。佐伯の唾液、長い舌は、その経験が無い妻にとっては、ザーメン、男根に匹敵、いやそれ以上のものだったのです。夫とのそれはただ唇と唇を、舌と舌を合わせるだけです。勿論、唾液を飲んだ事もありません。 愛する人との人との行為はそれでも快感をもたらします。しかし、佐伯の行為は次元が違います。妻のメスの本能を掘り起こすのです。
夫に対し酷い事をしてしまった、すまないと言う思いはあります。しかし、まだ抱かれた訳ではありません。そんな思いより、佐伯に植えつけられた快感の残滓の方がはるかに大きいのです。たった一度、口を吸われ、乳首を愛撫されただけでこんなにも変わってしまった。もし佐伯に抱かれたら、またどう変わっていくのでしょうか?
『佐伯に抱かれてみたい』
佐伯のまだ見ぬ男根に思いを馳せてしまうのです。
明くる朝、目覚めて暫くすると昨夜の事が蘇ってきます。あれが現実の事だとは信じられません。初めての食事で唇と乳房への愛撫を許してしまった、それも会社の上司にです。自分がそんな事をする女だったとはとても信じられません。今考えれば、代行の件にしても、何故断らずに佐伯の車に同乗してしまったのか、普段の自分からは想像も出来ない事です。夫に抱かれた後、佐伯と比較してしまった事、佐伯を思い描いてしまった事、そんな自分を恥じ入ります。
媚薬を使われたとは知る由もありません。何も知らない人が媚薬を使われても大した効果はない様です。その状況と”媚薬を飲んだ”と言う本人の意識が効果を高めるのです。妻の場合は ”媚薬を飲んだ”意識はなくとも、最高級の料亭の個室での食事、佐伯による体へのタッチ、その後のリムジンでの帰宅、それも頼れる上司と二人きりです。どんな女でも気分が高揚し何がしかの期待感も生まれるでしょう。佐伯の接吻がトリガーになり後は頂まで駆け上るだけだったのです。
媚薬の体への効果は3時間程度のものです。精神の高ぶりはもう少し続くようです。しかし、精神への影響も無くなった今、妻は激しく後悔し、夫の顔を見る事もできません。
その日の朝食が終わった後、二人でコーヒーを飲んでいます。妻が淹れたコーヒーはいつもの休みの朝と同じ様に、変わらぬ朝の寛ぎを与えてくれます。
「洋子、今日は何か用事はあるか?」
「いいえ、有りません。何か?」
「うん、付合って欲しい所がある」
二人は車で出掛けます。県立公園です。公園の中にグリーンセンターの建屋があり、その中に入ります。
「ネットで検索していたら、花の無料展示スペースが出ていたんだよ。この建屋の中にあるらしい」
この公園は県下でも大きな公園で、近い事もあり二人で時々遊びに来ます。グリーンセンターの中に入った事もあります。以前はそういうスペースは無かったのですが、つい最近、中の一部を開放したようです。
「あら、ここが展示スペースだわ。 バラが沢山出ているわ」
今は遅咲き薔薇のシーズンです。 薔薇の鉢には出品者の名札が貼ってあります。床に直置きしてあるもの、テーブル上に飾られてあるもの色々あります。
案内パンフレットを読んでみます。
「うーん、ここは一人5鉢まで、って書いてあるな」
「5鉢じゃ少なすぎるわ。20位あるわ、見てもらいたいなぁと思う鉢は」
「タダなんだから、あまり無理を言ってもしょうがない気がするが。もう一か所探しておいたから、そこへ行ってみよう」
「嬉しい。私の為に探してくれたの?」
「そうだ。僕の頭の中は何時も洋子の事で一杯だ」
「まぁ、そんな事を言って」
冗談めかした事を言っても妻は嬉しいのです。朝、出かける時は沈んでいた顔が明るく笑っています。次の場所は大きな民家に手を入れて展示館として市が管理しているものです。20畳位のスペースを1週間貸してもらえます。しかも無料です。予約は2か月前から早い者勝ちです。管理人の方から上手い予約の方法を教えて頂きました。予約は問題ないでしょう。
「ここが良いわ。ここに決めた、貴方、有難う」
帰途、クリスマスローズの素晴らしさを延々と私に話して聞かせます。本当に嬉しそうです。
帰ると妻はクリスマスローズの鉢一つ一つに話しかけています。
「貴方達、展示会に出してあげるからね。 一生懸命、水遣りするからきれいにお花を咲かせてね」
それから1週間は何事も無く過ぎて行きます。
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