CR 10/25(木) 22:04:19 No.20071025220419 削除
次の週の土曜日の朝、夫は午前中出勤です。出勤と言っても自分一人の会社です。先週忙しかったらしく、整理をしに出かけただけです。
佐伯から渡された携帯に着信があるのに気がつきます。会社を出れば、マナーモードにしておくように言われています。発信者はTS、佐伯のイニシャルです。着信時間は昨晩の11時になっています。
『何かしら?』
休み前のしかも遅い時間に用もない筈なのにと思いながらも、発信します。
「佐伯だ」
「宮下です。昨晩は電話を頂いたのに気がつかなくて申し訳ありません」
「なにも誤ることはない。あんな遅い時間に電話した僕の方がいけない」
「済みません。何かご用ではなかったのですか?」
「いや、用は何もない。ただ、昨日こちらで良い話があったので、君に真っ先に聞いてもらいたかった」
「私なんかにですか?」
「君にだからだよ。女房がいれば、女房になんだろうが、生憎僕にはそう言う女性は居ない」
佐伯は5年前に離婚しています。離婚の理由は知りません。
頼れる上司からそう言われれば、悪い気はしません。
「お仕事うまく行ってるのですね。良かったですね」
「君にそう言ってもらえると、本当に嬉しいよ」
「昨晩は寝不足なんだ。君から電話がいつ来るかと待っていたんだ。少々、辛かった」
「これからは直ぐ出れる様にします」
就業時間外の、しかも社用でもない話、そんな電話に本来直ぐ出る必要はないのです。しかし、正社員してもらったと恩を感じています。直ぐ出なければと思ってしまうのです。妻は佐伯の仕掛けた罠に又一つ自分から嵌まってしまいます。この時から妻は佐伯の携帯
を肌身離さず持ち歩くようになります。
自分の携帯に着信音がなります。
「はい」
思わず、部長と言うところでした。
電話は夫からです。
「洋子、昼飯の支度は終わったのか?」
佐伯との電話の後暫くぼうっとしていました。 食事の支度どころではありません。
「いいえ、まだです」
「そうか、それでは外で済まそう。これから帰るから」
「ただいま、食事に行こうか」
「どう言う風の吹き回しですか、お昼を外でなんて」
「うん、仕事の延長の積もりで君に聞いてもらいたい事がある。
それには外の方が良いと思ってね」
私は妻とUホテルと言う割と大きなビジネスホテルで食事をします。洒落たレストランが併設されています。
「また一つ良い話が纏まった。台湾の新しいメーカーの日本代理人になれそうだ。営業的な事は僕一人で大丈夫だが、処理とか書類の整理とかちょっと手に負えなくなりそうだ。それに経理もそろそろ中でやりたい」
「新しいお仕事がまた出来たのですか。良かったですね」
今経理処理は定期的に税理士さんを頼んでいます。この機会に書類、帳簿の整理を含め経理も任せる人を一人雇おうと考えているのです。それを妻にと思っています。
「一人雇おうと思っているのだが、どうだろう、君がやってくれないか。そうすれば、外に金が出ないし、君とずっと一緒に居られる」
「どれ位お給料払う積もりなんですか?」
「うーん、月10万円位かな。そんなに忙しい訳でもないし、パートで良いと思っている。」
「経理もでしょう? 10万円じゃ無理よ。誰も来ないと思います」
「そうか、でも君なら大丈夫だろ10万円でも」
「私は経理の知識もないし、それに今の所を辞めればその差は大きすぎます」
「経理は少し勉強すれば慣れるさ、そんなに処理件数は多くないから。15万円ならどうだ」
「大差ないわ。今のお仕事も面白くなってきたし辞めたくないの。もう少し頑張れって言ってくれたじゃない。とにかく一日でも早く自分の家が欲しいの」
家の事を出されれば、それ以上反論出来ません。結局、妻に押し切られます。
次の週、二人の女性と面接します。32歳と38歳の方、二人共独身です。余り若い方はどうかと思い38歳の方を採用します。 松下由美子さんと言います
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