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北原夏美 四十路 初裏無修正

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CR  11/1(木) 19:22:07 No.20071101192207 削除
そっと階段を降ります。 玄関に向かい外に出ます。 

『今日は家に帰れない。妻の顔を見る事が出来ない』

自分が悪い事をした訳ではありません。しかし、妻に何を喋って良
いのか解りません。今更、戻って問い詰める訳にもいきません。問
い詰めるのなら、見た時その現場でです。自分にも黙って帰ってき
た負い目がありました。妻の気持ちも考えてしまいました。優柔不
断な自分が嫌になってしまいます。これが妻と男が絡んでいたのな
ら、その場で飛び込み男をけり倒していたでしょう。

何処をどう歩いたか覚えていません。結局向かった先は駅前のビジ
ネスホテルです。気力も何もありません。軽くシャワーを浴び、ベ
ッドに寝転びます。時間の早いせいもあるでしょうが眠れません。
頭の中は真っ白です、何もありません。浮かんでくるのは先ほどの
妻の裸体、痴態ばかりです。精液を舐めた妻。それもいつの物かは
知りませんが男から渡されたものに違いないものを皿から犬のよう
に舐めた妻。電話で男に指示され、女陰をクリトリスを男の精液塗
れの指で擦り回した妻。逝かせて下さい、舐めさせて下さいと男に
懇願した妻。あれは本当に私の妻だったのだろうか。もう一度帰っ
て確認したい衝動に駆られます。

私と妻の20数年は何だったのだろう。ここ2,3ヶ月で妻のこの変貌
振りは何なのだろう。犬にも劣る妻の行為を見てしまった。何故、
そこまで妻は落ちてしまったのか?先程見た妻の痴態が振り払って
も振り払っても出てきます。男との絡みを見た方がまだ楽だった
かも知れません。自然と涙が出てきます。どれ程泣いたでしょう
か。我に返ると床に涙の水溜りが出来ていました。

これだけ変わった妻はもう私のもとへは、帰って来ないかも知れな
い。否、これ程の痴態を見てしまった私は、例え妻が戻ってきても
許す事ができるでしょうか。どうしてもっと早く気がつかなかった
のだろう。暫く終わってしまった事を悔やんでいました。

考えて居るうちに、嘆きが怒りに変わります。妻をこんな風にした
男が憎い。妻を憎むより、男に反撃しよう。怒りの矛先は先ず男に
向けるべきなのです。今は顔の無い男です。顔がない事には反撃の
しようがありません。誰だろうヒントを掴もうと考えます。

椅子に座り直します。フロントにビール、ウィスキーと少々の摘み
を注文します。うじうじしても始まりません。考える環境を整えます。 

『確か、トシオとか呼んでいたな』

トシオ、私は記憶を辿ります 私の仕事関係、交友関係の名前を思
い浮かべます。名前まで覚えている人は僅かです。トシオと言う名
前は浮かんできません。

『ふっ、まあ俺の関係でいる訳はないよな、そんな馬鹿な男は』

私は常にバッグの中に名刺ホルダーを持ち歩いています。仕事関係
と交友関係に分けてあります。交友関係と言っても、ただ一度しか
会った事の無い人も含まれています。無駄だと思いながらも一応見
てみることにします。あいうえを順に整理してあります。その名刺
は直ぐ出てきます。

佐伯俊夫、妻が勤める会社の食品部部長、肩書きは常務。妻に紹介
され名刺交換した覚えがあります。佐伯なら妻と接点が多い、しか
も妻は彼のお陰で正社員になれたと思っています。佐伯なら妻の出
張を自在に出来ます。今、思えば妻は必ず夜10時にトイレにたって
いました。 佐伯との痴話なのでしょう。例え私にばれても、仕事
の連絡だと逃げる事が出来ます。

『佐伯か。こいつだな、間違いない』

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