CR 11/4(日) 16:00:29 No.20071104160029 削除
「随分早いですね?」
「妻と佐伯の行動予定が解ったのです」
「ほう、どうしてですか」
ここは隠す訳にはいきません。妻が携帯で話していた要点を伝えま
す。
「そうですか。二人の仲は相当深いですな」
ぐさりと来る言葉を平気で言います。
「これは失礼な事を言ってしまった。早速これから行動開始といき
ますか。これは簡単な調査になりそうだ、これだけ頻繁に会ってる
とね」
こんな切り口で言われますと、何だか深刻な事を頼んでいる気がし
ないのです。かえって、所長に親近感を抱かせます。
「おっと失礼。また変な事を言ってしまった」
所長の目の前に現金を置きます。
「所長、これ調査費用です」
土曜日に言われた調査費用の3倍の金額です。家を建てる時の足し
にと自分名義でも貯めています。今はそれどころではありません、
少しも惜しくはありません。
「こんな小さな興信所だ。山岡でいい。それにしても多すぎません
か?」
「いえ、浮気の調査だけではなく、佐伯の身辺調査も徹底的にお願
いしたのです」
「ふむ」
「女関係とか、離婚の理由とか」
「どうしてだね?」
「佐伯は独身です」
「ばれても奥さんを佐伯の元へ行かせたく無い。そう言うことだ
ね?」
所長はもう佐伯と断定した口ぶりです。
「そうです。それと佐伯を徹底的に叩きたい」
「奥さんとは離婚するのかね、それとも受け入れるのかな?」
「解りません。山岡さん、ここは人生相談所ですか」
「ご免、ご免。しかし、人によっては相談所にもなりうる」
『全く惚けた親父だ。何が人生相談所にもなりうるだ』
しかし、不思議な信頼感があります。
「あ、そうか身辺調査は無理ですね。ここにはスタッフが居ません
ね」
「いやそんな事は無い。この業界にも横の繋がりがある。浮気調査
の得意な所、身辺調査が得意な所。経済問題が得意な所。任せてお
きなさい」
所長に言われると妙に納得してしまいます。
「そう言うもんですか」
「金は先日言った金額でいい。後は実費精算だ。余ればお返しす
る」
「しかし、身辺調査を追加している」
結局、所長は持っていった額の1/3しか受け取りません。
「浮気調査は来週月曜日、身辺調査はもう少し掛かると思う」
所長の言葉を聞いて、興信所を後にします。
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