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北原夏美 四十路 初裏無修正

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翌日、妻が着替えている横で私も着替えていました。
「あなたも何処か出掛けるの?」
「ああ。朋子と一緒に行って圭子さんの顔を見てから、一人で映画でも観に行
くよ」
妻の着替える手が止まります。
「早くしないと間に合わないぞ」
それでも妻の手は止まったまま動きません。
「俺が行って、何か不都合な事でもあるの?」
「彼女は恥ずかしがり屋だから」
「それなら分からないように、遠くから少し見るだけで消えるから」
「どうしてそんなに圭子を見たいの?」
「分からない。もしかすると、髭の生えた圭子さんかも知れないと、疑っているのかも」
「えっ」
「悪い、悪い。そんな事は思っていない。そのような事をしたら夫婦は終わってしまうと分かっているだとうし、父親に隠れて男に会っているような母親だと子供達に知られたら、当然親子の関係も壊れてしまうと分かっているだろうから、朋子がそのような事をするはずが無い」
妻の顔が蒼ざめていきます。
「悪い冗談だったな。圭子さんは美人だと言っていたから、男としては一目見てみたくなっただけだ。さあ、行こう」
ここまで言えば、妻は私に懺悔するだろうと思っていましたが、どうにか着替えを済ませた後、お腹が痛くなって来たので今日は断わると言い出しました。
「もう家を出ているだろうから、早く断わらないと迷惑を掛けるぞ」
私が側にいては電話出来るはずも無く、妻はトイレに行って来ると言って、携帯の入ったバッグを持ちました。
「トイレにバッグを持って行くのか?まあいいが、その間に俺が断わりの電話をしておいてしてやろうか?」
「自分で断わりますから」
「俺がちゃんと断ってやるから、携帯は置いていけよ。何て登録してある?岩井か?それとも健ちゃんか?」
トイレに向かう、妻の足が止まりました。
「何年一緒に暮らしていると思っているんだ?朋子の様子から、そのぐらいの事は分かる」
携帯を見たとは言えません。
「ごめんなさい。あんな事があったから言えなかった。健ちゃんとは何もないの。疚しい事は何もないの」
こちらに背を向けたまま話す妻によると、旅館での朝食の時に次の幹事の話しになり、あの時一緒にスナックにいた友人達に、2人で仲良く幹事をやれと冷やかされ、彼が一つ返事で引き受けた事もあって全員から拍手され、強引に幹事にされてしまったそうです。

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