CR 11/11(日) 10:12:36 No.20071111101236 削除
佐伯が卑劣であろうとなかろうと、騙されたのは妻です。いや騙さ
れたのではなく、妻はそれにのっただけかも知れません。
「宮下さん、君は佐伯をどうしたいんだね」
「頭の整理がついていません。出来れば殺してやりたい」
「そうだろうな、しかしそれは出来ない。奥さんの方は?別れますか?」
「余計な事だ」
「失礼した。人生相談ではなかったな」
”別れますか?”この言葉に困惑します。別れなど考えたこともな
かったのです。真相を知り男を叩きのめす、これしかありません。
妻と別れられるのか、それとも一緒に暮らせるのか、今の私には考
えがつきません。
「佐伯の身上調査は火曜日には纏まる。取りに来るといい。ところ
で中条さんとは会ったかね?」
「中条さん?」
「佐伯の別れた奥さんだ」
「あ、今日お会いしようかと」
中条さんと会った後、佐伯の所へ乗り込む積りです。
「直ぐ会った方がいい」
「そうします。では失礼」
興信所を出る私の背中に声が掛かります。
「困った事があったらいつでも来てくれ。人生相談の窓口は開いてる」
中条さんのお宅へは車で40分程度の距離です。椿の垣根で囲まれた
質素なお宅です。呼び鈴を押します。
「はーい」
「宮下と申します。山岡さんに言われて伺いました」
客間でしょうか、8畳の和室に通されます。
物静かな女性です。女の一人暮らしのせいでしょうか、凛とした表
情が漂っています。
「どうぞ、お座りになって下さい」
「はい、今日は失礼を省みずお伺いしました」
「どうぞ、気楽になさって下さい」
「あのー」
聞こうとしている事が事だけに中々口火が開けません。
「ご主人の、いえ失礼、佐伯の、いえ佐伯さんの・・」
「佐伯でいいんではないですか。もう私はあの人の妻ではありません」
「無礼を承知でお聞きします。佐伯とはどうして、そのう、離婚を」
「短兵急な方ね。お茶も未だですのよ。それにご自分の事は何もお
喋りになってないわ」
「失礼しました」
妻と佐伯の事の大筋を話します。
「御免なさい。本当は山岡さんから聞いていたの。貴方が死にそう
な顔をしてるから、ちょっと言ってみたの」
「そうですか」
「佐伯も昔はいい人だったわ、私にも優しくしてくれた。8年前に
変わったわ。手術をしたんです」
「手術?何処か悪かったのですか?」
「いえ、そうじゃ無いんです。男の手術です」
「男の手術?」
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