CR 11/13(火) 14:48:34 No.20071113144834 削除
佐伯の会社に向かう途中考えます。所長が早く中条さんに会えと言
った訳を。佐伯の人間性を私に解らせたかったからでしょうか?そ
れもあるでしょう。それよりも佳子さんさんの強さと優しさを見せ
たかったのでしょう。しかし私はあんなに強くはなれません、優し
くもなれません。今の私には如何に佐伯と妻に復讐してやるか、思
い知らせてやるか、それしか頭の中にはありません。
それにしても、佳子さんと妻は違いすぎます。その当時、夫であっ
た佐伯のものをグロテスクだと受け入れられなかった佳子さん、喜
んで縋りついてしまった私の妻。妻の中の女が解りません。
佐伯の会社の前に着きます。この時間には佐伯が社内に居る事は確
認してあります。受付で佐伯を呼出、応接に案内されます。思いに
任せてここまで着ましたが、話すべき事を何も用意していない事に
気がつきます、いや考えても自分でもどうして良いか解らないのです。
『まあいい。今日は事実を突きつけるだけだ』
暫く待つと佐伯が応接に現れます。
「宮下さん、申し訳ない。昨晩は見苦しい所をお見せしました」
当然、妻から興信所の件は佐伯に連絡があったものと思っていまし
た。妻が連絡していないのか、それとも佐伯が惚けているのか。
「別に見苦しくは無い。あんた達二人にとっては当然の事だろう」
「は、仰ている意味が良く解りませんが」
「腕を組むぐらいは、愛し合ってる二人にとって当たり前の行為だ
と言っているんだ」
「益々、解りません」
「惚けるんじゃない。随分前からのようだな」
報告書を佐伯の前に放り投げます。
「これは?」
「表紙に書いてあるだろう。興信所のレポートだ」
佐伯はどうしてこんな物が此処にあるのか不思議そうに眺めています。
「中を見たらどうなんだ。先週一週間の物だが、3回も会っている
んだな。随分、洋子にご執心のようだな」
此処まできても、私はまだ数に拘っています。佐伯の膝と手が小さ
く震え出します。
「こんな物嘘だ。でっち上げだ」
「洋子を呼んで3人で話し合ってみるか」
「いや、それは」
「まあいい、兎に角今日はこれを届けに来ただけだ。俺もあんた達
をどうしようかまだ考えていない。勿論それ相応の事はして貰うつ
もりだ。あんたも良く考えておくんだな」
言う事だけ言って佐伯の会社を出ましたが、私はこれからどうすれ
ば良いのか全く見当がつきません。佐伯には慰謝料で済ませる積も
りはありません、徹底的に社会的に葬ってやる。その場合、私の事
も妻の事も社会に晒されるでしょう。私は一人で仕事をしてる身で
す。仕事に影響が出るとは思えません。妻が社会に晒されようと自
業自得です。私が気にしているのは妻と別れられるかどうかその一
点です。
『出て行けと言えば、間違いなく妻は佐伯のマンションに行く。そ
れは耐えられない』
妻がどうなろうと自業自得と思っている私、妻と別れたくない私、
私の思いは矛盾だらけです。
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