CR 11/20(火) 14:55:07 No.20071120145507 削除
「此処へ座れ」
私は向かいのソファーを指差します。知りたい事は色々あります。
その中でも佐伯の事をどう思っているのか、これからどうするの
か、その事を一番知りたいのです。
「なあ洋子、お前はさっき、佐伯の事を好きじゃないと言ったよ
な。じゃあどんな気持ちで抱かれたんだ」
「・・・会う前はもう止めようと思っていました。これでもう止めようと」
「会う前って、お前は毎日あいつと顔を会わせるじゃないか」
「いえ、そう言う意味じゃありません。声を掛けられる前はもう止めようと」
「声を聞くと欲しくなるのか、お前は」
「・・・・・」
「パブロフの犬か、お前は」
妻も最初はおずおずしていたのでしょう。その内、薬で快楽を覚え
る内に体が条件反射してしまうようになったのでしょうか。
「あいつを好きか嫌いか聞いているんだ」
「好きではありません」
「じゃっ、嫌いなんだな」
「・・・・・」
「何で返事しない。俺が悪かった。好きではなくて愛しているんだ」
「愛してなんかいません」
又、堂々巡りです。妻も嫌いとは言えないのでしょう。嫌いと言え
ば私に ”なんで嫌いな奴に抱かれたんだ、お前はそんなに淫乱な
のか”と責められるのが妻にも解っているのでしょう。
妻はぼつぼつと話し始めます。きっかけは正社員になって暫く後、
A亭で食事を奢られ帰りの車の中で抱擁された事、初めて抱かれた
のは最初の大阪出張であった事。私にしていない、させていない
行為を佐伯として感じてしまった事。事細かく話します。
「もういい。何を自慢しているんだ。俺を馬鹿にしているのか」
私は何をしているんだと思います。自分で聞いて、妻が答えればそ
れに腹をたて、情けない思いをするのです。別れを切り出せない自
分が情けないのです。しかしもう堂々巡りはご免です。
「洋子、俺たちはもうやっていけないだろう。そう思わないか」
「いやです。別れたくありません」
「さっき解っただろ。俺は立たなかった、お前の汚れたオマンコではな」
「私努力します」
「努力します?どう言う事だ。俺とは努力しなければ出来ないのか」
「間違いました。私、私・・・」
妻も言うべき言葉を見つけられないのです。
「もういい。出て行ってくれ。明子には俺が言っておく」
娘の明子の名前を聞いて、妻はわっと泣き伏します。
「お願いです。出て行けって言わないで下さい」
結婚した当初からもっと強引に妻を抱いていればこんな事にはなら
なくてもすんだかも知れない。私の優柔不断な性格も災いしている
のです。
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