CR 11/20(火) 15:10:11 No.20071120151011 削除
「佐伯がテレビ電話の内容を保存してあるって」
「どうしてそれを早く言わない」
「会わない時は、それを見て楽しんでるって。私怖かったの、誰か
に見せるんじゃないかと、怖かったの」
「それでずるずる続けていたと言うんだな。本当だな。脅迫されて
いたのか?」
「いいえ、初めの頃は脅迫はされていません。でもそれがあると思
うと私は・・・」
「初めの頃は?じゃ今は」
「言われました。もう出来ないと言ったら、貴方に見せるって、会
社のメールにばらまくって」
妻の言う事は本当なのか、考え付いた言い訳を言っているのか判断
は出来ません。しかし、私の気持ちは少しですが、救われます。初
めは妻の意思で佐伯に走ったのでしょう。それ以後は妻の意思だけ
ではなく、強制されたものがあったのかも知れません。しかし録画
の存在が気にかかります。私が知っている限りテレビ電話の内容を
保存できる携帯は無いはずです。
佐伯の携帯に電話します。
「宮下だ。今から行く」
「いや、会社は困る」
「困るだと。困るような事をしたのはお前だろう」
「すまん。私のマンションでどうですか」
今は4時半。
「お前も5時までには出れないだろう。5時半に行く」
「5時半ではちょっと早すぎる、会議がある。6時半にならないか」
「ぐだぐだ言うな、俺は会社に行ってもいいんだぞ」
「解った。5時半に待ってる」
本来は佐伯を呼びつけるべきでしょう。しかしこの家に上げたくあ
りません。妻と会わせたくないのです。
佐伯にとって何が一番辛い事なのか考えてみます。社会的立場、会
社での地位は放っておいても無くなってしまいます。無くなって困
るもの、それは金に違いありません。最悪の場合、職を失ってしま
うのです。妻の体と引き換えの汚れた金は欲しくはありませんが、
金で攻めるのが一番良いのです。
「佐伯、俺は弁護士を立ててお前と戦う事にした」
私はかまをかけます。
「それは勘弁してくれ。何とか慰謝料で済ませてくれないか」
「慰謝料?一応聞いておこう。いくら払えるんだ?」
「200万なら払える」
「なら払える?女房は後10年は働ける。年間400万として4000万、
これは遺失利益だ。それに慰謝料1000万プラスで5000万だ」
「無茶だ。それに正社員にしたのは俺だ」
「関係ない。びた一文譲らん」
「では500万だそう」
「話にならん。弁護士に任す。お前も用意しておけ」
「頼む、何とか500万で」
「それがお前のお願いの仕方か」
「申し訳ありません。500万で今回の事は許して下さい」
「そうか、500万の慰謝料は了解する。只、許しはしない。許すの
は今後のお前をみてからだ」
条件として、書類を二通用意する事。1通には今回の非を詫び、今
後妻には一切連絡も会わないと誓う事、500万は私の任意の指定日
に満額を一括で支払う事。この書類には実印を押印し、印鑑証明を
付ける事。そしてもう1通は不倫の事は記載しませんが、佐伯が私
に500万の債務があり、それを私に指定通り支払う旨の公正証書を
作る事を約束させます。書類を用意させることにより重圧を与えた
いのです。
「一つ聞いておこう。テレビ電話の録画で妻を脅していたそうだな」
「今はどうか知らないが、俺の携帯にはそんな録画機能はついていない。
見て楽しんでいると言ったのはその場の成り行きだ」
「しかしお前はそれで妻を脅した」
念の為、妻専用の携帯を処分させます。
「お前に言っておくことが一つある。先日、佳子さんに会わせても
らった。お前は酷い男だな、あんないい奥さんがありながら馬鹿な
事をしたもんだ」
「・・・・・」
「書類は金曜日までに用意しておけ。取りに来る」
佐伯と妻の携帯は同じものです。携帯の取説を読みますと確かにテ
レビ電話の録画機能はついていません。出力端子も付いていませ
ん。携帯ショップでも確認します。テレビ電話の内容を保存出きる
携帯は存在していない事を知ります。
妻の不安材料が一つなくなります。
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