洋子 3/17(月) 12:39:54 No.20080317123954 削除
食事が終わります。
「宮下さん、さあ帰ろうか、今日はご苦労様でした」
「こちらこそ、美味しいお料理ご馳走様でした」
佐伯の退き際は見事です。女に名残惜しさを残します。
「携帯電話を渡しておこう。私との業務連絡に使ってくれればいい。
さあ、車に乗って」
用意されている車は外車でリムジンと言うのでしょうか、バスのように長い
車です。私を先に乗せて頂き佐伯は後で乗ります。運転席に向かって私が左
です。乗せて頂いて驚きました。後部座席から運転席は見えません。運転手
さんとの話はインターフォンになります。インターフォンのスイッチは後部
座席が優先です。後部座席の声はスイッチを切ると運転手さんには聞こえな
いと言う事です。車中でのお客様との重要な話を運転手には聞かせたくない
場合があると佐伯から説明を聞きました。後部座席は足を真直ぐに伸ばして
も届かないくらいの余裕があります。テレビ、DVD、オーディオシステムも
揃っていてまるで高級な密室応接室のようです。クーラーにはワインが冷え
ています。
今日は金曜日、主人が帰ってくるのは11時前、今はまだ9時前です。A亭から
家まで車なら約20分位の時間です。
「宮下さん、この車の乗り心地は如何かな」
「素晴らしいですわ、まるで夢を見ているようです」
「ご主人は今日は遅いのかな」
「はい、11時頃だと思います」
「今はまだ9時だ。少しドライブでもしますか」
「いいえ、部長に悪いですわ」
「僕は君と少しでも長く一緒に居たい」
「解りました。ご一緒させてください」
佐伯は運転手さんに高速で東京方面に行くよう伝えます。
今、考えればここで断るべきだったと思います。この雰囲気と佐伯に嫌な
思いをさせたくないと言う気持ちで受けてしまいました。それにも増して
私の気持ちの中に高揚するものがありました。
オーディオセットからはアルゼンチンタンゴが薄く流れています。佐伯から
はワインを勧められます。車は首都高速に入っています。耳には心地良い
タンゴの響き、美味しいワインを頂き、車窓には高速道路の街灯、街のネオン
の煌びやかな灯りが流れていく様が映っています。チョコレートを摘みに
ワインのグラスを重ねます。佐伯も終始無言でワインを飲んでいます。時々
私の顔を見ているのが雰囲気で解ります。この雰囲気と、頼もしい男の方が
横の座席に座っています。私は夢見心地でした。
「少し酔ったのかな、頬がピンクに染まっている」
「ええ、少し」
「いいものがある。これを飲めばいい、酔い止めだ」
そう言って佐伯はポケットからカプセルを出し、その中身を私のワイングラ
スに注ぎます。後で主人から、私は媚薬漬けにされていた事を知らされます
が、この時それは知る由もありません。
私は佐伯の好意として受け取っていました。
飲むほどに心地良い酔いが体を包みます。暫くすると心臓の動悸が早くなり
全身が熱くなってきます。
「どうした、酔ったのかな」
「はい、何か体がだるいみたいです」
「眠るといい、良ければ僕の肩にもたれてもいい」
「はい」
私は目を閉じます。知らず知らずに佐伯に頭を預けています。佐伯は髪を
優しく撫でてくれます。私の耳元で囁きます。
「横顔もとても綺麗だ。僕のものにしたい」
「いけません、私なんか部長さんには似合いません。それに私には夫が
います」
口で拒絶をしてはいても、手を払いのける事は出来ません。”君は綺麗だ”
こんな言葉を主人から聞いたのはもう遠い昔の事です。私はこのままこの場
の雰囲気に浸っていたかったのです。
突然、佐伯は口づけをしてきます。
「いやっ、いけません」
佐伯の胸を小さく押します。形だけの拒絶です。佐伯に抱きしめられ、胸を
押していた私の手は佐伯の背中に回ります。2人で抱擁する形になりました。
抱き締められるととても気持ちがいいのです。この人の懐の中で眠っていた
い、このまま融けてしまいたい、そんな気持ちになってしまいます。
主人の事が頭をかすめますが、それを払いのけます。ここでも気持ちをふり
しぼって、止める事が出来た筈です。でも出来なかったのです、この心地良
さには勝てませんでした。頭でいけない事だと解っていても、体が言う事を
聞きません。頭が体に負けてしまったのです。それ以後も佐伯と会った時は
何時もそう言う状態になりました。食事をし、お酒を飲んで暫くすると体が
熱く燃えてきます。誰かに沈めて欲しくなってしまいます。
佐伯は私の唇を思い切り吸います、舌が私の口の中に入ってきます。佐伯の
舌は私の舌を嬲ります。舌と舌を擦り合わせます。舌が千切れるほど吸われ
ます。唾液を送り込まれます。佐伯のそれはとても甘美でした、ワインのよ
うなそれでした。主人とは経験のないことです、これが本当のキスなのかと
思いました。もうこれだけで気が遠くなりそうです。私の大事なところも
熱く濡れていくのが解りました。
長い口づけで息が苦しくなり、顔を離し、思わず溜息を洩らします。
「君の吐息は甘い香りがする、僕にもっと吹きかけて」
私は佐伯の顔に息を吹きかけます。
「いい香りだ、唾を飲ませて」
佐伯の口に唾を垂らします。
「うーん、まるで果蜜を舐めているようだ」
佐伯の言葉は更に私の情欲を高めます。
佐伯の手はブラジャーの下の乳房に伸びてきます。もう私の心に主人の事は
浮かびません。
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