洋子 3/25(火) 12:08:21 No.20080325120821 削除
「洋子か、聞いて欲しいことがある」
「部長、携帯電話はお仕事でなければ、もう出るのを控えたいのですが」
勇気を振り絞って言いました。
「どうした?何かあったか」
「やっぱり、仕事でも無いのに電話で話しているのは変だと思います」
「ご主人が何か言ったのか?」
「いいえ、主人は電話の事は知らないと思います、でも私の気持ちが」
「そうか、解った。仕事じゃない電話はこれを最後にしよう」
「有難う御座います。でも聞いて欲しい事って何でしょうか?」
「仕事では無いから止めておこう、でも君に関係ある事だからな」
「聞かせて下さい」
「君がそう言うなら、解った。ご主人の会社に女性が入ったと言ったよね」
「はい」
「名前は何と言ったかな?何歳だったかな?」
「松下由美子さんです、38です。それが何か?」
「未だ若いし、独身だろう?いや僕が一人で気を揉んでいるだけだと思うが」
「何をですか?」
「彼女がどんな人か、君も一度見た方がいいんじゃないかと思ってね」
「どうしてですか?」
「いや、ご主人の会社はご主人とその女性に二人きりだろう?君のご主人に
限ってなにも無いとは思うがね」
「主人にそんな事はありません」
佐伯にそう言ったものの、私の心の中に小さな波紋が出てきました。
次の朝、主人は忘れ物をして会社に出かけました。私は午前中取引先に出かけ
ます。その帰り主人の会社に寄り忘れ物を届ける事にしました。丁度お昼時です。
主人の会社だと思いノックもしないで部屋に入りました。
ドアーを開けると主人と由美子さんは食事をしています。コンビニで買った弁当
だと思います。弁当とお握りが少し、味噌汁とお茶。ごく普通のお昼ご飯です。
何を話していたのか知りませんが、笑い声が弾んでいます。応接のソファーに
どう言う訳か二人並んで座っています。私が声をかけると主人は少しびっくりした
様子で私に振り向きました。
「洋子、来るなら来るで電話をくれれば、弁当もう一つ買っておいたんだが。
もう飯は食べたのか?お握りでも食べるか?」
「出先でご馳走になりました、お腹が一杯なの」
ご飯は頂いていません、何故あんな嘘をついたのでしょうか?主人と由美子さんは
本当に楽しそうに食べていました。羨ましかったのです、私の知らないところで、
主人が女の方と楽しそうにご飯を食べている、それだけで嫉妬心が湧いてきたのです。
主人が由美子さんを紹介してくれます。高そうなものは身に着けていないようです
が、小奇麗にさっぱりとした印象です。女性の私から見ても女の魅力もあり、好感
が持てる方でした。
『洋子、貴方どうしてあんなに由美子さんを見つめていたの?』
『うん、綺麗な人だなと思って、何だか心配だわ』
『圭一さんがそんな心配するような事するわけないわよ』
『でも朝から晩まで一日中一緒に居るのよ、お昼ご飯もあんなに楽しそうに
食べていたわ。それに夜の遅い時も一緒の時もあるみたいだし』
『そんなに心配なら貴方が圭一さんのところで働けばいいんじゃない?』
『それは出来ないわ』
男と女が一つの部屋に朝から晩まで一緒にいて、同じ仕事をして食事も一緒にして
います。寝ている時間を除けば主人は私より由美子さんと過ごしている時間の方が
長いのです。それに由美子さんは女の私からみても魅力のある方です。主人と
由美子さんの事が私の心を占めるようになりました。
佐伯に聞いて欲しいような気がしましたが、あれから佐伯からは、約束通り電話は
ありません。翌週の火曜日、課長に話があると声を掛けられました。
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