洋子 3/28(金) 12:46:02 No.20080328124602 削除
考えれば考えるほど、主人と由美子さんが抱き合っている光景が浮かんで来ます。
主人に抱かれて喜んでいる由美子さんの顔が、先程のホテルを出で来る顔と重な
って浮かんで来ます。
思案している私に佐伯が声を掛けてきます。
「どうかしたか?」
「いえ、何でもありません」
「この写真か?僕にも見せて」
佐伯は主人と、Uホテルで一度主人と会っています。佐伯は主人を覚えていたよう
です。食事をして打ち合わせしただけだろうと、私を心配して言ってくれます。
最後にこう言いました。
「仕事でなければ、何だと思う?」
「多分・・・・・」
「多分、何だね?男と女の秘め事かね?君のご主人に限ってそれは無いだろう」
佐伯の慰めの言葉が私の心に染み通ります。
「ホットブランデーでも飲みなさい。紅茶で薄めておこう。気分が落ち着く」
「はい」
事務スペースからベッドルームに移動します。手招きされてソファーに座ります。
暖かいブランデーが疲れた心に気持ちよく体がソファーに沈んでいくようでした。
ソファーに体を預けても先程の写真の事ばかりが浮かんで来ます、ぼうーっと
一点を見つめて考え込んでいました。
「ここは32階だ。夜景を眺めると気持ちが落ち着くかもしれない」
佐伯は私を窓際に誘います。佐伯は優しい人だと思いました。自分の時間を削って
私を心配してくれる、そう思っていました。
窓硝子越しに見る大阪の夜景は宝石をばらまいたように綺麗でした。でも私の気持
を和ませる事は出来ません。この夜景のずうーっと向こうで、この金曜日の夜を
主人と由美子さんは二人で過ごしているかも知れない、ベッドの中でもう由美子
さんは主人に抱かれ喜んでいるかも知れない。そう思うと涙が滲んできました。
『洋子、気を確かにしなさい』
『そんな事言ったって無理だわ』
『今日はもう遅いわ、自分の部屋に戻ってゆっくりお眠りなさい。
写真の事は明日帰ったら圭一さんに聞けばいいわ』
『聞けば仕事と言うに決ってるわ』
『それでいいんじゃないの、貴方、圭一さんが信じられないの?』
『違うわ、仕事じゃないわ』
いつしか私の横に立っている佐伯にも気がつきません。
佐伯は私の肩を抱いてくれます、優しく髪を撫ぜてくれます。放心していた私は
断る事が出来ません。佐伯の大きく暖かな手は私の心を癒してくれます。
「ご主人は誠実な人だ、君の考えているような事は無いはずだ」
「そう思いたいです。でも由美子さんの嬉しそうな顔を見ていると」
「そうか、でも冷たい言い方だが、そうであっても君には僕がいる。
君がパートの時からずっと君が好きだった。僕は独身だ、君さえ良ければ
僕は君を迎える」
君が好きだ、佐伯はそう言ってくれました。主人からその言葉を聞いたのはいつの
事だったでしょうか。20年も前の遠い昔のような気がします。その上、プロポーズ
さえしてくれたのです。主人には何の不満もありません、私は主人を愛しています。
でも佐伯の言葉は女心を擽るのです。
いつのまにか、私は頭を佐伯の肩に預けていました。
佐伯は私の顎に手を添えて顔を自分の方に向けさせます。そっと口づけをしてくれ
ます。頬すりして慈しむような口づけでした。主人は今頃きっと由美子さんを抱いて
いる、それを言い訳にすりかえて佐伯の口づけを受けました。
「私、わたし」
私は倒れこむように佐伯の胸に体を預けました。安堵感が心と体に行き渡ります。
優しく背中を撫でてくれます。まるで母親にあやされている赤子のように私は
佐伯の胸の中に溶け込んでいきました。
「落ち着いたか?今日はこの部屋で眠るか?僕はソファーで寝る」
「それは出来ません」
「そうか、じゃあバスは僕の部屋のを使うといい。君の部屋のバスより相当広いし
窓から夜景が見える。リラックスできると思う」
「でも恥ずかしいです」
「何を言ってる、君の気持を落ち着かせる事が一番だ。僕の事は気にしなくていい」
「はい、ではそうさせて頂きます」
佐伯の言葉に誘導されてしまいました。佐伯は私の事を本当に心配してくれている
と思っていました。
バスタブに浸かって夜景を見ていると心が解けてきます。それと同時に体が熱く
火照ってきます。動悸も早くなって、女の部分に疼きも出てきます。何か変です。
乳首を触ると全身に快感が走ります。媚薬を2度も飲まされていた事に私は気が
ついていません。どうしてこんなに敏感になってしまったのでしょう?優しい
佐伯がドアーの向こうに居るからだと思いこんでしまいました。
バスからあがり、下着を着けます。用意していたものはT-バックとバタフライです。
迷いますが、これしかありません。それに佐伯に抱かれるとは思っていません。自分
の部屋で寝るつもりでした。バタフライとそのペアーのブラを着けました。
その下着を着けると、益々体が火照ってきます、女の部分も潤い始めています。
何か自分が変わったようでした。佐伯に抱かれてしまってもいいと思い始めて
います、いいえ抱いて欲しいとさえ思ったのです。備え付けのバスローブを着けて
佐伯の居るベッドルームに戻りました。
テーブルにはワイン、ブランデー、チョコレートが用意されています。佐伯に
手招きされて二人掛けのソファーの佐伯の横に座ります。何故、正面でなかった
のか疑問にも思いませんでした。
「まだ9時だ。自分の部屋に戻る時間でもないだろう。
ここで少し寛げばいい」
佐伯の言葉は自然です。チョコレートを摘みにワインを頂きました。そのワインに
も佐伯は媚薬をしのばせたのです。佐伯は無言のままです。私もテーブルの上を
眺めるともなく、一点を見つめたままでした。次第に無言が耐えられなくなって
きました。
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)