洋子 4/11(金) 16:49:06 No.20080411164906 削除
佐伯と関係を続けている間も主人はいつも優しかった。疑いの言葉を掛けられた事も
なかった。それを良い事に私は主人を裏切り続けていたのです。私の何かが音を立てて
崩れます、その場にしゃがみ込んで泣き伏しました。これだけの事をしたのです、主人は
許してくれる筈がないでしょう。
「洋子、裸になれ。どう変わったか見てやる」
「出来ません、堪忍して下さい」
「堪忍だと、俺を馬鹿にするのか」
「違います。汚れてしまったこんな体をお見せできません」
以前手鏡で見た変わってしまった私の女、乳首。身に着けているブラとショーツ。
主人に絶対に見られたくなかったのです。
抗いましたが、とうとう主人に見られてしまいました。変わってしまった女の全てを
見られてしまったのです。たったの5ヶ月で佐伯にこんなにまで変えられてしまった、
主人には見せたくなかった。あんなに見て欲しかった派手な下着姿の私、それがこんな
時、こんな格好で見られてしまった。見せた後、優しく抱いて欲しかったのに、メス犬
になった変わり果てた姿を見られてしまった。
「変わってしまった。こんなにしやがって」
主人はその言葉を投げつけて、部屋を出て行きました。
「もういい。俺は出かける。自分が何をしたか、これからどうするのか
良く考えておけ」
主人はバスルームから持って来た私が普段身に付けている下着を放り投げ出て行きました。
『洋子、また出てもいいかしら?』
もう出て来ないでと言ってから、出て来なくなってしまったもう一人の洋子が顔を出します。
『貴方、さっき圭一さんに謝らなかったわね』
『えっ』
『先ず謝るのが最初でしょ。許してくれるくれないは
その後圭一さんがきめる事』
『謝りたかった、許して欲しかった。でも言えなかった』
『貴方、今後どうしたいの?圭一さんに許してもらいたいの?
それとも佐伯のところへ行くの』
『いやっ、佐伯のところへなんか行きたくない。圭一さんと一緒に居たい』
『あれだけの事をしておいて、随分勝手ね。圭一さんの事はまだ愛してるの?』
『愛してるわ、前よりずっと愛してるわ。こんな事をしてしまっても
私を責めなかったわ。それに比べて私は、私は』
『そうね、圭一さんはそう言う人だわ。もし圭一さんが許してくれたら、
一生かけて償わなければね』
もう一人の洋子は一生をかけて償えと言いました。
ー こんな事をした私を圭一さんは許してくれるでしょうか?ー
ー 一生をかけて償えるものでしょうか?ー
ー 短期間でこんなに変えられてしまった私を道端に落ちているゴミでも見るよう
に思っているのでしょうか?ー
ー 20数年かけて築いた夫婦生活が一瞬で崩れ去ったと思っているのでしょうか?-
ー 世間の皆様に知られたら、私はどう思われるのでしょうか?ー
圭一さんはもう私の事を愛してはくれない、私に向けてくれたあの優しい顔を見る事
も出来なくなってしまう。
ふと自分の事ばかり考えていることに気がつきます。圭一さんの事は何も考えていない。
圭一さんがどんなに傷がついたか、崩れ去った夫婦生活にどんな思いを抱いているのか、
私には主人を思いやる気持がなかったのです。
それに気がついた私はつくづく自分が嫌になりました。生きていく価値も無いと思った
のです。
こんな時でも携帯が気になります。テレビ電話の内容と私の恥の記録です、主人には
知られたくありません。そしてこの携帯は私と佐伯の関係の印そのものです。ハンマー
で打ち壊しメモを添えてテーブルの上に置きました。主人の書斎に行きます、主人の
パソコンを開けます。死のうと思っても、私の事が何か記されていないか気になったの
です。主人のパソコンにはパスワードが設定されていません、主人には私に知られて困る
秘密がないのです。
行動の記録のファイルを開けました。仕事とプライベートの記録が日付順に書かれて
います。10月17日の記録が目に飛び込んできました。こう書いてありました。
10月17日:夜遅く帰宅。妻異変。ホテルに宿泊
10月19日:興信所に依頼
主人に見られていたのです。メス犬になった私を見たのです、その場で殺されても
仕方がなかったのに主人は何も言わずにホテルに泊まったのです。こんな時でも
私を気遣ってくれたのです。
私に選択の余地はありません、こんな女は主人の傍にいる価値はないのです。
私の命で主人の傷を購うしかありません。
バスルームで汚れた体を清めます、主人に渡された下着を履き、主人のお気に入り
だったベージュのスラックスと真っ白なブラウスを鏡の前のストールの横に揃えます。
鏡の前に座ります。主人が好きだった長い髪はもうありません。少しでも長く見せようと
必死で髪を梳かします。目の下に少しくまが出ています。こんな顔を主人に見せられ
ません、ファンデーションで隠します。
貴方が好きだったパールピンクのルージュ、これをつけた唇に
貴方もう一度キスして欲しい。
貴方が好きだったライトグリーンのアイシャドー、自慢の長めの睫には
少しきつめにカールをかけて、
貴方もう一度見つめて欲しい。
両頬にはライトオレンジのチークをつけて、
貴方もう一度頬ずりして下さい。
主人が好きだった薄めの化粧、以前に戻ったような気がします。楽しかった事が次から
次へと思い出します。もう戻れないのです。抱きしめて欲しいと願っても、それはもう
叶わないのです。
薄化粧した私の顔を眺めていると涙が止めども無く溢れてきます。
『洋子、死ぬつもりなの?』
『死にたくない。』
『そうね』
『圭一さんにもう一度、抱きしめて欲しい』
『そうね、私も抱きしめられたい』
『でも、もう無理だわ』
『明ちゃんはどうするの?』
『あぁ明子、こんなママを許して。もう貴方のママでいる資格もないの、
貴方にも死んでお詫びをします、貴方にはパパがいます』
『決心したの?』
『ううん、本当は怖いの。でも他に道はないの』
『私も一緒に死んであげる』
薬箱から睡眠薬を出しコップの水で一気に飲みました。
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