洋子 4/15(火) 14:59:54 No.20080415145954 削除
また先生が入ってきました。先生の後ろに人影があります、主人です。先生は直ぐに
部屋を出てくれました。
主人はじっと私を見つめてくれます。佐伯と関係をもってからまともに主人の顔を
見た事がありません。主人に見つめられて涙が出てきます。
「貴方、御免なさい。私を許してください」
後は言葉が続きません。どんな言葉も足りません、どんな言葉を喋っても主人に謝り
きる事は出来ません。言葉が涙に変わります、今の私には泣くことだけが出来る事です。
主人は私を見つめ続けてくれます。優しい言葉を掛けてくれます。
「ご飯は食べているのか?」
「はい、食べています」
主人は暫く窓の外を眺めて、
「又来る」
そう言って帰っていきました。
主人の寂しそうな背中、その背中に縋りつきたい、許して下さいと何度も何度も
言いたかった。でも遠ざかるその背中を眺めているだけでした。
先生が入ってきます。
「奥さん、貴方の精神状態はまだ不安定です、まだ退院は出来ません。
心療加療をさせて下さい、3日程かかります」
主人が受け入れてくれたとしても、主人の待つ家にこのまま帰る自信がありません。
心のケアーをして頂きます。
主人の事ばかり考えています。主人はどんなに傷がついたのでしょうか?疑っていた
時の主人の気持、はっきり解った時にも堪えていた主人の気持、オナニーを見た時の
主人の気持、大阪に来てくれた時の主人の気持、私が薬を飲んで倒れているのを見た
時の主人の気持、主人の心の傷の大きさは私には推し量れません。
許してくれなくても、主人の傍にいたい、主人がどんな結論を出しても、主人に
従います。例え離婚されても、主人を感じられるところで生きていたい。
漫然と、佐伯、佐伯の離婚した奥さん、松下さんの事を考えていました。
佐伯が私の事を思ってはくれていなかった、それははっきり解りました。ではどうして
私は佐伯に抱かれてのでしょうか?ずっと自分の都合の良いように考えていました。
愛と言う言葉と、特別な存在と言う言葉で自分を納得させていました。深く考えるのは
辛い事でした。でも3日間もありました、いやでもそれを考えてしまいます。
解った事がありました。私にも自尊心がありました、二つの自尊心があることに
気がつきました。自分の欲求を満たしたかった、その相手が主人であればどんなに
良かったか。でも主人には20年間以上拒み続けてきました、いいえ実際に拒んだ
のは最初の数年間ほどでした、それ以後は主人が試んでくれなくなったのです。
して欲しい、させて欲しいと思っても自分から言い出せなかったのです。
私の欲求はどんどん大きくなっていきました。40になった頃から焦りだしました。
そんな時、佐伯の誘いがありました。私は受けてしまいました。佐伯は私の自尊心
を満たしてくれました。外見、知識、人望、優しさ、地位、佐伯でなくても良かった
のだと思います、佐伯のような人であれば他の人でも良かったのかも解りません。
佐伯でなければ関係を続けられなった、ずっとそう思い込ませていたのです。
圭一さんだけを見つめて生きていきます。妻として女として私をお傍に置いて下さい。
佐伯、離婚した奥さん、松下さんに会わなければいけない、自分の気持に偽りが
無い事を確認しなければいけない、そうしなければ主人に償う事も出来ない。
そんな事を考えていました。
水曜日のお昼過ぎ、主人が迎えに来てくれる事になっています。この3日間で心の
整理をつけたつもりです。主人がどんな結論をだしていてもそれに従おうと決心を
しました。
主人が来ました。
「迎えに来た」
「貴方、御免なさい。迎えに来てくれて有難う」
車の中では、主人は終始無言です。言いたい事が山ほどある筈なのにじっと前を見つめて
運転していました。私もただ俯いているだけです。
家に着きました。私の入院中の荷物を家の中に運んでくれます。私は家の玄関に入る
事が出来ません、玄関脇に佇んでいました。
「何をしている、早く入りなさい」
「私、この家に入って良いんですか?」
「当たり前じゃないか、ここは君の家だろう?」
「でも、私は・・・」
「僕はまだ結論を出していない、それまではここは君の家だ」
家に入り、主人は私の荷物を整理してくれます。
「整理は私がします」
「君は半病人だ。僕がやる」
主人が整理をしてくれている間、私はお茶の用意をします。
「俺は要らない、飲みたければ自分の分だけ入れればいい」
主人の感情が激してきたのでしょうか、言葉つきも変わってきました。
しっかりとしているように見せかけは超一級のようです
。
自尊心を持つ方法や手段が間違っていたのかもしれません。
単に性欲に負けたのでしょう。
こんな風になっても、まだ夫が原因のような感情が伺えます。口でいくら謝罪しても汚された体は元どおりにはなりません。そんな汚れた身体で夫のそばにいたいというメスの身勝手な描写に苛立ちを感じます。