[44603] 家庭訪問・4 公務員 投稿日:2009/08/13 (木) 12:46
間違いない!あの男だ!
私は思わず声になりそうなのを、こらえました。その男は、頭ひとつ分は他の指導者よりも高く、座っていても、大柄なのがわかりました。色が黒く、白髪が多い頭髪は、覚えがある。ただ、顔自体をはっきり認識していませんでしたが、私には確信できました。その男の顔には、数箇所、傷の後があったのです。絆創膏を、額に一枚貼っている。
私があの男を、襲ったときのものに違いない。間違いない、あの男だ。
男は、厳しい目つきで子供たちを見ています。五十代の前半ぐらいだろうか。ひょっとしたら六十近くて、若く見えるのかもしれない。色黒の顔は血色が良く。いかにも性欲が強そうに見えてしまうのが、異様にムカムカしたのを覚えています。剣道着の胸に、名前が書いてあり。目を凝らしました。『峰垣』とあります。あの男は峰垣というのか。
私はその時、あの男の襲撃に成功した事が、いくら背後から襲ったといっても、運が良かったのかもしれないと思っていました。男は一目で秀でた身体能力が明らかでした。剣道の有段者であることが明白でした。正面から向かって勝てる相手ではないと、本能的に察知できました。
運が良かった・・・その運の理由が、私をメラメラと燃えさしました。
あの男は、妻との性交で、体力を消耗させていたのだ。私の家で、家庭訪問に来ていながら、自分の教え子の母親である私の妻を、激しく抱いていた。私はをれを目撃した。それ程のセックスだった。私の妻を攻めたてたことによって、素人の私にやすやすと襲われるほど体力を消耗していたのだ。
私は妻を捜しました。すぐに見つかりました。まろやかな妻の体のラインは、母親たちの集団の中で目立って浮き立っていたから。ぴっちりした黒のノースリーブで、豊満な胸が突き出ている。ウエストは細く、その為、余計にプリプリのお尻が際立っている。パンティ-ラインが見えそうだ。それに、髪をかき上げるたびに、ノースリーブの腋から下着が見えてしまうじゃないか。くそう、たまらない。
妻は前方を見ていて、それは、息子の健太を見ているのか。それとも、あの男をじっと見ているようにも見えました。たまらなくムカムカとしていました。その時の私は。
メーン!ドーッ!
甲高い声が響く中、妻と息子の健太が向き合っていました。二人とも笑顔でした。健太は、昇級審査を終えた後で、うまくいったのでしょう、満面の笑顔を母親に向けていました。そこに、あの男がやってきたのです。
男は健太の頭を撫でて、健太もうれしそうな顔を男に向けていました。妻は、男に礼を言うようにお辞儀をしています。背の高いその男は、小柄な妻を見下ろしています。私はメラメラと燃えました。妻がお辞儀することによって、豊満な胸の谷間が晒されているに間違いないのです。
男は、妻と健太の元を離れ、他の親子にも話をしながら歩いています。私は燃える目で男を追いました。そして、ハッとしました。男が、白い紙切れを床に落としたのです。それとも、たまたま袴のポケットから出て落ちたのか分かりませんが、誰も気づくことではありません。私のように男を目で追いつづけていなければ。ただ、一人いたのです。それに気づいていたのが。私の妻だ。
嘘だろうと、妻の行動に鼓動が速まりました。妻は、何気なく男のたどった跡を行き、そして、ごくさりげなく屈むと、紙切れを拾ったのです。誰も、そんな妻の行動を気にするものなどいません。私以外。いや、あの男と私以外。妻は、チラッと、その二つ折りの紙切れを開いて見ると、バッグの中にしまいました。
私は男を捜しました。男の姿が見当たりません。その時、健太は剣道仲間の中に入っていました。そして妻が、その場を離れだしたのです。
体育館を出て行く妻。息子の勇姿を見て、帰る親御さん。誰が見てもそう見えるでしょう。いや本当にそうなのかもしれない。私は、そう願いながら、体育館を出て妻の姿を追いました。そして血の気が引いていったのを覚えています。
妻は、帰り道の校門への方角とは逆の、体育館の裏手へと歩いていくのです。体育館の裏は、まったく人気がなく、体育館の中から響く歓声が聞こえるだけでした。そこを歩く妻。
そしてなんと、妻は、体育館の正面の大きな入り口とは正反対の端にある、古びた鉄のドアを開けると、そこからまた、体育館に入りなおしたのです。私は走って行き、ドアノブを回してみました。カギが、かけられていました。
私は、正面の入り口から体育館に入りなおしました。妻が入ったドアの位置を考えると、あの、ステージのどん帳の裏じゃないか!?いったい、何が目的で妻は?
私は、昇給審査で弾ける子供や歓声を上げる親たちの横を、静かに進み、トイレでも探す風な風体でステージの階段を上り、どん帳の裏へ入りました。真っ暗で、手探りしながら進み、奥へ奥へそっと進み、聞こえてきたのです。妻の声が。それは、最も端の奥の、テーブルやパイプ椅子やらが積み重なっている奥から、漏れてきました。
真っ暗な空間、積み重なる物の隙間。私はのぞくことができました。天井の小窓から入ってくるかすかな光が、照らしていました。妻と、あの男をっ!
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