[3458] インプリンティング 4 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/11(Thu) 21:10
妻が降りたのは銀行に一番近い駅だったので、やはり休日出勤かとも思いましたが、私の家から
ではバスの方が遥かに便利が良く、バスなら定期券も持っている筈で、わざわざお金を払って電
車に乗る事は考えられませんでした。
妻が駅のトイレに入って行ったので、私は少し離れた柱の陰で待ったのですが、今まで、妻を見
失わない様に、妻に見つからない様に必死だった私の気持ちに余裕が生まれると、この1年半の
間に妻に何が起こったのか、どの様な心境の変化でこの様な姿で人前に出られる様になったのか、
不安で押し潰されそうです。
妻は人一倍他人の目を気にする方で、私は色気も有って丁度良い太さだと思っているムッチリと
した太腿や、私が自慢の豊満な胸でさえも、妻にしてみればコンプレックスのほか何者でも無く、
出来る限りその事を気付かれない様な服を選んで着ていました。
娘を連れて海水浴に行った時も水着になる事を嫌がり、1人日傘を差して浜辺に座って見ていま
した。
その妻が、ワンサイズ小さいのを買ってしまったのかと思える様な、今にも胸のボタンが弾け飛
びそうなシャツを着ていて、しかもそのシャツは人目を引く赤なのです。
若い人達でも余り穿いていないような、今にもパンティーが見えそうなほど短いスカートを、子
供のいる38歳の妻が穿き、コンプレックスだった太腿を人目にさらしているのです。
当然この様な姿を近所の人達にも見られているのでしょうが、以前の妻なら、死ぬほど恥ずかし
い事だったに違い有りません。
暫らくして、トイレから出て来た妻はサングラスをしていました。
妻が私の方に向かって歩いてきたので、私は柱に隠れてやり過ごしたのですが、歩く度に片方ず
つお尻がスカートに張り付いた様な状態に成り、穿いているパンティーが、男子の水泳選手が穿
く水着の様な、超ビキニの物だと分かりました。
妻がトイレで穿き替えて来たのかとも思いましたが、階段を上がって行く時に、はっきりと下着
の形が分かったと言うのは私の思い違いで、私の距離からでは下のラインしか分からず、私が知
る限りではこの様な下着は持っていなかった為に、勝手に上のラインを想像して、頭の中で作っ
てしまったのかも知れません。
どちらにしても、これでは前の黒い翳りは隠し切れずに、パンティーから、はみ出てしまってい
る事でしょう。
この様なパンティーを穿いている事からも、妻に何か有ると確信した私は絶望感を覚えましたが、
何とか尾行を続行すると、やはり妻は銀行には向かわずに、駅を挟んで銀行とは逆方向に歩き出
し、私は隠れながら後をつけたのですが、他人から見れば、ストーカーと間違えられないか心配
でした。
暫らく後を付けて行くと、妻は4階建ての部屋数が16ほどの小さなアパートに入って行ったの
で、私も入って行こうとしたのですが、入り口がオートロックになっていて入る事が出来ません。
ここまで不審な行動が重なると、否が応でも事実を受け止めなければならなくなった私は、貧血
をおこしそうになり、その場に座り込んでしまいました。
すると、サングラスをかけてヘッドフォンをした坊主頭の若者が、頭でリズムをとりながら出て
来て。
「おっさん、大丈夫か?救急車いるか?」
言葉使いは無茶苦茶ですが、それでもしゃがんで私と同じ目線で話してくれ、親切な若者だと感
じたので。
「ありがとう。それよりも今入って行った女の事を知らないか?今日初めて会ったとか、よく見
掛けるとか、どこの部屋に行ったとか。」
「おっさんは刑事か?そんな訳ないよな。張り込みで蒼い顔をして座り込んでしまう刑事なんて
聞いた事がない。それとも探偵?その顔だとそれも無いな。どっちにしても俺は他人のごたごた
に巻き込まれるのは嫌だから。じゃあな。」
私に背を向けて、手を何度か振って去って行こうとする若者に、1万円札を出して。
「これで何とか頼む。」
振り向いた若者は。
「ウワー。そんな必殺技を出されたら断れないな。ここでは話し辛いから向かいの喫茶店にでも
行くか?」
喫茶店に入って話を聞くと、妻とは以前からよく階段ですれ違うと教えてくれました。
「どこの部屋に入って行くか分からないか?」
「俺の丁度真下に住んでいる、1人暮らしの親父の所さ。ここから見えるだろ?2階の一番右端
の部屋さ。俺が301だから201。」
「いくつ位の男だ?」
「親父の歳は分かり難いからな。おっさんの少し上ぐらいじゃ無いのか?普段やあの女が来る時
は、きちんと7、3分けにしているが、あの女が来ない休みの時は髪もぼさぼさで、昼間でもパ
ジャマのまま新聞を取りに来る、冴えない親父さ。」
若者が指差した郵便受けをみると、201号室の所に稲垣と貼って有りました。
建物から見ても、おそらく独身の1人暮らしか単身赴任者が借りるアパートの様で、部屋番号の
所に名前が貼ってあるのは稲垣だけです。
「あの親父は見栄っ張りなのか、高い車に乗ってやがる。俺ならそんな金が有ったら、もっと広
いアパートに引っ越すよ。どちらにしてもあの女と親父は普通の関係では無いな。女はいつもサ
ングラスをしていて、俺とすれ違う時は必ず俯いているし、2人で出掛ける時は決まって親父が
先に出て、あたりをキョロキョロ見渡してから女が出てくる。女もそうだが、あの親父も女と一
緒の時は夜でも必ずサングラスをしていて、車に乗り込むまでは外さない。まあ、よく有る不倫
の関係というやつかな。」
私の顔が見る見る蒼ざめて行くのが自分でも分かりました。
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