[3465] インプリンティング 6 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/12(Fri) 19:18
私がすぐには帰って来られない様な遠い所にいて、他にここを開ける者がいないので安心し切っ
ていたのか、クローゼットの中には私が見た事も無い、これをあの妻が着るのかと唖然とする様
な、豹柄などの派手な服が普通に掛けて有り、ミニスカートも数着有りました。
それらは色や柄が派手な物だけではなく、身体の線がはっきり出てしまう様なニットで出来たミ
ニのワンピースなど、色は地味でもデザインが派手な物も有ります。
次に下着を探すと、普通の下着が入っているすぐ下の引き出しに、私がいた時には持っていなか
った、色取り取りなセクシーで高価そうな下着が有りました。
しかし、もう1段下の引き出しの中を見た時、私は絶句しました。
そこには普通の下着売り場には絶対に売っていない様な、セクシーと言うよりは卑猥な下着ばか
りが入っていたのです。
いいえ、それらは下着としての機能を果たさない、下着とは呼べない様な物がほとんどなのです。
これをあの妻が身に着け、あの男に見せていたのかと思うと悔しくて涙が出そうです。
私はそれらの下着を手に取り、ぼんやりと見詰めながら落ち込んでいましたが、今は弱気に成っ
ている場合では有りません。
下着を元に戻してから2個のバケツにお風呂で水を汲み、それを玄関の上がり口に置いて居間で
待っていると、それから3、40分経った頃に家の前で車が止まりました。
気付かれない様に半身になって窓から見ていると、運転席からあの男が降りて来たのですが、妻
は降りて来ようとはしません。
すると男が助手席のドアを開けて妻に何か話し、ようやく降りてきた妻はハンカチで涙を拭いな
がら、近所の人に見られるのが嫌なのか、小走りで玄関に向かいました。
帰って来るのに時間が掛かったのは、きっと口裏合わせでもしていたのでしょう。
私は玄関に先回りをして、水の入ったバケツを構えているとチャイムが鳴りましたが、返事もせ
ずに無視しました。
すると次の瞬間ドアが開いて妻が入って来たので、持っていたバケツの水を頭から勢いよくかけ
て次のバケツを持ち、続いて入って来た男には、頭を狙ってバケツごと投げ付けましたが、男は
咄嗟に手で防いだのでバケツは当たりませんでした。
それでも頭から水を被ったので2人共びしょ濡れです。
「智子だったのか。まさかおまえが、この家に帰って来られるとは思わなかったので、泥棒でも
来たのかと思ったよ。いくら嘘つきで人を裏切る事が平気な女でも、2度とこの家には帰って来
られないと思っていたが、夫や娘、世話になった親を平然と裏切る事の出来る女は、流石に図々
しさが違うな。身の回りの物でも取りに来たのか?」
「あなた、ごめんなさい。違うのです。誤解なのです。」
妻が水浸しの土間に泣き崩れると、男も慌ててその場に土下座して。
「ご主人には要らぬ誤解を招く行動をとってしまい、本当に悪かったと反省しています。今日は
休日出勤だったのですが、私が昨夜から熱っぽかったので起きられずに、携帯が鳴っているのに
も気付かずに寝ていたので、部下が心配して出勤前の奥様に、様子を見て来て欲しいと電話をし
たらしいのです。昨夜から食欲が無くて何も食べていなかったので、ファミレスに付き合っても
らってから出勤しようと車に乗った所にご主人が・・・・・・・・。」
この男はべらべらと言い訳を並べていましたが、妻は泣きじゃくっていて、何も話す事が出来ず
にただ土下座していました。
私はその場に胡坐を掻き、返事もしないでただ煙草を吸っていましたが、この男のいい訳に腹が
立ち、私がいない間、何度も妻が行っていた事を知っていると言おうかとも思いましたが、相手
に嘘を言わせておいた方が、その嘘を指摘する事で他の事も聞き出し易くなると考えて、あえて
何も言わずに黙ってキッチンに行くと包丁を持って来ました。
「申し遅れましたが、私は支店長の稲垣と申します。奥様には大変お世話に・・・・・。」
その時少し顔を上げた稲垣は、私が包丁を持っている事に気が付き。
「ご主人、本当です。誤解を招いた事は謝ります。これは誤解なんです。本当です。そんな物は
置いて下さい。」
その言葉で顔を上げた妻も包丁に気付き。
「やめて~。許して~。ごめんなさい。ごめんなさい。」
私の足に縋ろうとした妻を思い切り蹴飛ばしたのを見て、支店長は謝りながら飛び出して行きま
した。
支店長の言い訳に腹がたち、少し黙らせる為の脅しに持って来た包丁ですが、逃げなければ刺し
ていたかも知れません。
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