[3483] インプリンティング 11 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/16(Tue) 16:20
稲垣は周囲の目を気にして口だけは平静を装っていましたが、表情は不安でいっぱいです。
「これは、これは、わざわざお越し頂きまして恐縮です。どうぞこちらに。」
本当はその場で大きな声を出して罵倒したかったのですが、逆に私が名誉毀損で訴えられてもつ
まらないので、案内された応接室に入りました。
「こちらの銀行では社内不倫についてどの様なお考えをお持ちですか?」
「いや、それは、その・・・・・・・・・。」
「人妻の行員を朝までアパートに連れ込む。2人で旅行にまで行く。この様な行員がいたらどの
様な処分をしてくれますか?」
すると稲垣はテーブルに両手をついて。
「ご主人には本当に申し訳ない事を致しました。でも本当に不倫なんかでは無いのです。信じて
頂けないでしょうが、身体の関係どころか手も握った事は有りません。本当です。しかし奥様を
付き合わせた責任は感じておりますので、大変失礼かと思いますが誤解を与えた慰謝料という形
で償わせて下さい。」
稲垣は妻が上手く誤魔化してくれただろうと思っていたのか、アパートの事や旅行の話しをした
時に、一瞬驚いた表情をしたのを見逃しませんでした。
この事で、今日はまだ妻とは何も話し合っていないと感じた私は、鎌をかけてみる事にしました。
「誠実に対応すれば穏便に済ませようと思って来たが、この期に及んでまだ嘘で塗り固めようと
するのか?分かった。おまえに誠意を期待していた俺が馬鹿だった。こうなれば俺にも覚悟が有
る。」
「すみません。しかし、そう言われましても本当に不倫などしてはいません。身体の関係なんて
無いのです。」
私は両手でテーブルを叩いて立ち上がり。
「昨夜女房が全て話したんだよ。アパートに行っては抱かれていたと。旅行でも抱かれたと話し
たんだよ。もう名誉毀損も関係ない。俺はどうなってもいい。まずは手始めにここの行員達に、
こんな支店長で良いのかと聞いてみる。」
私の言葉を聞き、稲垣は慌てて床に土下座して。
「すみませんでした。正直に話したかったのですが、ご主人のお気持ちを考えると話せませんで
した。決して自分を守る為に話さなかったのでは有りません。取り返しの付かない事をしてしま
いました。どうか許して下さい。」
「俺の気持ち?そんな事を考えられる人間なら最初からしないだろ?ばれたからって、尤もらし
い事を言うな。自分を守る為に、何とか誤魔化そうと嘘ばかりついていて、いざばれたら俺の為
に嘘をついていた?何を食べれば、そんなに自分に都合の良い言い訳が、次から次へと言える様
になれる?俺にも教えてくれ。」
私はずっと、この事実を知ろうともがいていましたが、いざ認められると私の全てが終ってしま
った様なショックを受け、尻餅をつく様にソファーに座り込んでしまいました。
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