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北原夏美 四十路 初裏無修正

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沢木の来訪から一週間が経ちました。
その間、果歩とはまともに話す事ができませんでした・・・いえ、話せる状態ではなかったんです。
翌日、彼女が息子の部屋から出てくることは在りませんでした。
だからといって、私はそれを黙って許容出来る訳もなく固く施錠されたドアの前で思いの限りの言葉を投げかけました。
しかし・・・返事はなく、妻が出て来る事はありませんでした。
私も、初めの内は不貞の事実がある以上、立て篭もり、口を閉ざすのにも限界があると思いひつこくは追いかけませんでしたがそろそろ限界です。
今日こそは扉を壊してでも果歩に向き合い、夫婦として・・・いえ、人の親として、何らかの決断を出さなければいけません。
そう思い、彼女と向き合おうと決意して私でしたが二つだけ引っかかる物がありました。
それは、沢木の去り際の言葉と、沢木来訪の翌日に見た在る物のせいでした。
沢木が言った去り際の一言・・・それは、私の思考を3歳児程度まで戻すに十分の威力と衝撃がありました。

『ヒデオが別に居る?』

どうでしょう皆さん。貴方なら予測出来ますか?
すみません・・・この手の話に疎い私には全く考えも及ばない事でした。
私の知る妻は、明るく・思いやりがあり、隠し事を何より嫌う人でした。
どちらかと言うと、姉御肌+男勝りで、曲がった事や下手な言い訳を嫌う人でした。
それがどうでしょう・・・夫には嘘を吐き、未成年と不貞を続け、肝心な事は黙秘する。
仕舞いには、元凶と重いし人間に、

『僕とは他に”ヒデオ”が居る!』

そんな、突拍子もない事言われた日には、はっきり言ってノープランで自分のプライドしか考えていない私には、全てを飲み込むには処理出来ませんでした。

”果歩には別の・・・がいる!”

確証もないその沢木の言葉を、裏付ける物を見た時・・・私は・・・隆の笑顔を・・・二度と家族3人で見る事は出来ないと思いました。
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「会った事がないって…ちょ、ちょっと沢木さん!一体どう言う事ですか!」

沢木が来てから努めて冷静に振る舞っていました。
それは少しでも果歩の夫としての…いえ、男としての余裕をこの男にだけは見せ付けておきたいと言うちっぽけなプライドがそうせていました。
しかしメッキは剥がれる物なのでしょう。無様にも取り乱し、沢木の言葉にそんな事を忘れてしまいました。

「つ、妻は、あなたと隆がキャッチボールしたり電話で話したりした事があると言ってたんですよ!」

「……………」

私の質問に、沢木はただ黙って聞き役に徹し一言も喋りません。

(何でそこで黙りこくってるんだ?こんな肝心な所で…クソっ!)

私の苛立ちはピークを迎え、落ち着きがなくなった足は小刻みに貧乏揺すりを始めます。
少し落ち着こうと上着の胸ポケットから煙草を取り出し火をつけゆっくり吸い始めました。

「どうやら…」

沢木に背を向け、苛つきながら煙草を吸い始めた私の背後から唐突に沢木の声が聞こえ、瞬間的に沢木に向き直りました。
そして、その話を聞いた私は凍りつきました。

「どうやら…奥さんには別の【ヒデオ】が居るみたいですね。」

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