投稿者:MMさん教えて 投稿日:2005/02/11(Fri) 21:45
この後も、野次馬根性からなのかも知れませんが、二人の奥さんは親身になって色
々教えてくれました。
「奥さん達が見ていて、池村はどういう男だと思いますか?」
「うーん、どちらかと言うと臆病かな。」
「あの男が臆病?」
「自分より弱いと思う人や自分より立場が下だと、威張り散らして徹底的に追い込
むけど、逆に、自分より権力が有る人やこの人には敵わないと思うと、何も出来な
いタイプの弱い男だと思うの。」
「そうそう、二十年近く前の噂だけど、池村さんが駅前のあるお店屋さんの奥さん
に手を出したらしくて。」
「私も聞いた事が有るわ。私はお米屋さんの奥さんらしいと聞いたけど?」
「そこのご主人は虫も殺さないような優しい人だったのが、その時はナイフか何か
で池村さんを襲ったそうなの。幸い腕にかすった程度だったし、自分にも非が有る
からと警察沙汰にはしないで、余裕が有る様な顔をして、その後すぐに一ケ月も何
処か旅行に行ったらしいけれど、本当は更に恨みを買うのが怖くて警察沙汰にしな
かったとか、旅行ではなくて相手のご主人が落ち着くまで、怖くて隠れていたのだ
と聞いたわ。まあ、一ケ月はオーバーでも何処かに隠れていたのは本当みたいよ。」
「今はバブルの時の土地絡みで、変な人達と付き合いも多少有るみたいだから、威
張っていて怖そうに見られているけど、本当は気が小さくて臆病な男じゃないの?
臆病なくせに他所の奥さんに手を出して。一種の病気ね。怖いくせに辞められない
のよ。」
「昔ある人に聞いた事が有るけれど、気に入った奥さんに手を出す前にご主人の事
も調べて、大人しいご主人じゃないと諦める根性無しだと笑っていた事が有ったわ。
あなたも根性を据えて頑張りなさい。」
長年池村を見てきた、この奥さん達の言う事は正しいのでしょう。
私には池村に対抗できる権力も力も無いので、妻に対して好き勝手な事をしている
のだと思いました。
やはり私を怖がっていたり、特別に思っている事は無く、妻を特別気に入っている
為に、私に対しては今迄のやり口と多少違うのだとしか思えませんでした。
その後池村の様子を知りたくて家に行ってしまいましたが、通されたいつもの部屋
には、きちんとスーツを着た初老の紳士が座っていました。
玄関先での池村との会話を聞いていたのか、私が部屋に入るとすぐにその紳士は立
ち上がり、お辞儀をしながら名刺を差し出し、自分が池村の弁護士だと言いました。
「先日はお電話で失礼しました。今池村さんが、あなたの奥様と不貞行為が有った
事を、潔く話してくれていた所です。私の見解としましては、ご主人の暴力により
婚姻関係は既に破綻しており、その後の関係なので慰謝料は発生しないと思うので
すが、正直に言って過去の暴力の証明は難しく、裁判官の心象にも依りますし、時
間も掛かりそうなので、ここは前回申し上げた解決金と言う名目ではなくて、離婚
される事でも有りますので慰謝料として、池村さんと奥様合わせて六百万、ここの
麻子さんとご主人が不貞行為を働いた慰謝料として、不貞行為の期間も短く、ご主
人の気持ちも分からなくは無いので、奥様に対して五十万、差し引き五百五十万ご
主人に支払うという事で如何でしょう?勿論共同不法行為として、一方の池村さん
が満額支払いますので、奥様が支払う事は有りません。後は財産分与ですが、ほと
んど財産らしい物は無いとお聞きしておりますので、奥様は全て放棄されるとの事
です。もう一つ養育費の問題ですが、それはどちらが親権を持たれるのか決まって
からで無いと決められませんので。」
私は弁護士とは無縁で、目の前で弁護士と言う職業の人と話すのは初めてだった為
に、この前の電話とは違い、どこか緊張していました。