男とは? 7/31(木) 11:40:06 No.20080731114006 削除
「話してみろ」
「亜希子とは上手く行っていたつもりだった」
三浦と元妻の亜希子さんとは日常の生活では可も無く、不可も無く普通の夫婦生活
を営んでいたようです。しかし意見の衝突するような事があると亜希子さんは、自分
が社長の妹である事、三浦の会社での地位も自分と結婚したからだと言葉の端々に
出すようになったのだそうです。その亜希子さんの言葉が三浦の心に沈殿していった
のです。三浦は会社でも家でも自分の居場所がなくなってしまいそうに感じてしまい
ます。大容量メモリーの量販店との交渉の時、三浦は既に自分を無くしていたのです。
そんな時、ダンス教室で妻を見かけたのです。
「奥さんは亜希子に無いものを持っていた。ダンスを習っていても
講師の言葉に素直に頷き、頬を染めながら教えを受けていた」
「俺が一度だけ話しかけた時も、恥ずかしそうに下を向いて、只一言
はい、と言っただけだった」
「あんたは何と言ったんだ」
「いや、ダンスの素質がありそうですね、習えばきっと上手くなりますよ、
と言っただけだ」
妻は人見知りが激しいのです、特に初対面の男性には、目を見て話す事が出来ません、
話す言葉もごく短く、俯きかげんに話します。
「可憐だった、俺の想像はどんどん膨らんで言った」
「その揚句、脅かしか」
「済まない、奥さんは初めは激しく抵抗した、しかし最後は喜んでくれた。
こんなに感じた事はなかったと言ってくれた」
「そんな事を言いに来たのか」
「いや違う、俺もこの年だ、もう就職する場所もない。
兄が家業を継いでいる、そこの手伝いをしようと思っている。
田舎へ帰る」
「奥さんとそうなってからも、俺は何と言う事をしたんだと反省していた。
しかし家に帰って亜希子を見ると、奥さんへの思いは増すばかりだった。
止められなかった。ばれれば会社を辞めて田舎へ帰るつもりだった。
亜希子と結婚して、俺は有頂天になってしまった、何でも出来ると
思ってしまった。しかし、都会生活は俺の生に合うものではなかった。
それがやっと解った。田舎に帰る前にお詫びをしたかった」
三浦は会社での地位、自分の家庭と由里子を天秤にかけても、由里子を選んで
しまったのです。
「三浦、お前は帰れる所があって良かったな。
お前は俺に謝ってすっきり出来て良かったな。
俺も由里子はもう元には戻れない」
「三浦、あんたは何故DVDを2種類作った、俺に寄こした物と妻に渡した物だ」
「いつかあんたが来ると思っていた。その時に、奥さんは俺の物だとあんたに
言いたかった。奥さんに渡したものは本当の記録だ、奥さんに見せて、俺の
物になる様を解らせたかった」
三浦は一枚のメモを残し立ち去りました。そのメモには、念の為にと実家の住所が
記されていました。北陸の小さな町です、そこで実家は昆布、海苔とか乾物の卸を
営んでいるのです。三浦は会社での仕事が、亜希子さんとの生活が重かったのです。
都会での生活を清算したかったのです、あわよくば由里子を道連れにしようと思った
のかも知れません。
私の気持が少し晴れるのが解ります、三浦は会社を追われ、離婚され一人になり
ました。自棄になった三浦はまた妻に近づいてくるかも知れない、そんな気持が
重かったのです。妻とはあれから真剣に話し合った事はありません。今日は話せる
かも知れない、そんな思いで家に帰りました。
「貴方、お帰りなさい」
「話がある、こっちへ来い」
私が一番聞きたかったのは、不倫していた時の妻の態度です、その態度はいつまでも
シコリとして私の心に残っています。余程性悪な女で無い限り日頃亭主と接する時に
態度に表れる筈だと思っています。妻は2ヶ月余り不倫をしていました。私が相当
鈍感なのか知れませんが、その間妻の態度に罪悪感、寂寥感を見た事がありません。
「由里子、お前、三浦に抱かれている時はどんな気持だった?」
「・・・・・」
「答えないか」
「嫌でした、怖かった」
「嫌だった?お前達は別れ際いつもキスをしていた。あれはどう言うつもりだ」
「信じてもらえかも知れませんが、強要されていました」
「全て強要されていた訳か?そんな事信じられるとでも思っているのか?
あいつに抱かれて感じなかったのか?」
「・・・・・」
「感じたかどうか、聞いているんだ」
「感じました」
「感じただと」
妻の頭を打ってしまいます。私はどんな答えの聞きたかったのでしょうか、感じ
なかったと聞かされても、嘘だと言って打っていたかも知れません。
「俺に対する気持はどうだったんだ?」
「解りません、複雑でした」
「解らないだと?複雑だと?普通申し訳ないと思うのが当たり前だろう」
妻の言葉にまた激高してしまうのです。
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