黒熊 11/27(月) 00:00:00 No.20061127000000 削除
「すみませんあなたッ…私は…私はふしだらな女です…でも、これだけは
信じて欲しい…私は、今でもあなたの事を愛しています…あなただけを…
愛していますッ!」
呆然としている私に妻はそう告げると、「ごめんなさいッ…」と再び頭を
下げます。そんな妻の態度からは、私に対する切実な想いが伝わってきま
した。
妻の告白からすると、私にも至らない点があったのだと思います。
仕事に追われて妻の事をないがしろにしてしまっていた事。妻の存在を居
て当たり前だと思っていた私の思い上がり。釣った魚には餌をやらない的
な、妻の事を一人の女として見ることが出来なくなっていた自分。そして、
夫としての責任を放棄していたにも等しい1年以上のセックスレス。
ここ数年の生活を振り返り、妻に対する愛情と呼べるものが果たして存在
していただろうかと私は考えました。
炊事をし、洗濯をし、掃除をする――それが妻として当たり前の事だと思
っていました。
仕事がどんなに遅くなろうとも、きちんと食事や風呂の用意をして待って
てくれた妻。
仕事のトラブルで苛々している時も、いつもと変わらぬ優しさで接してく
れた妻。
夜遅くに会社の上司や同僚・後輩を家に連れてきたときも、嫌な顔一つせ
ず接待をしてくれた妻。
新婚当初であれば、そんな妻に対し私も労いの言葉や感謝の言葉を返して
いたと思います。しかし、いつしかそれが当たり前の事だと思うようにな
ってしまっていました。そして、感謝の気持ちすら忘れてしまっていたの
です。
それでも妻は愚痴一つ零さず私に尽くしてくれました。それはきっと、私
に対して変わる事のない愛情を持ち続けていてくれたからなのでしょう。
そんな妻に対し、私は果たして愛情と呼べる接し方をしていたでしょうか。
今考えれば、その答えは「NO」です。
そんな事を考えていると、妻に対して申し訳なかったと言う感情が込み上
げてきます。
しかし、いくら自分にも非があったとしても、今の私には妻の言葉を到底
聞き入れる事など出来ませんでした。
私の脳裏には、ビデオの中の妻の姿が焼き付いて離れないのです。
決して私には聞かせた事のない激しい善がり声。全てを支配してくれる事
を望むようなお強請りの言葉。蕩けきった表情。そして、献身的なまでの
口奉仕。
それを思い出せば、またしても私の心には沸々と怒りが込み上げてきます。
出会って以来の妻の私に対する態度が、全て嘘で塗り固められた偽りの姿
だったのかと思えて仕方がないのです。
「ふざけるなッ!」
再び私は大声を上げていました。
「何が愛してるだッ!…そんなの信じられるかッ!…じゃあ…じゃあ何
だあれはッ!…こいつの身体にしがみ付き…好きなどとほざきながら気
持ちよさそうにしていた姿は一体何なんだッ!!…馬鹿にするなッ!!」
私は一気に捲し立てるように言うと、「フウゥッ…フウゥッ…」と鼻息も
荒く妻を睨み付けました。
妻は一瞬グッ…と唇を噛み締めると床に倒れこむようにして突っ伏して
しまい、「ごめんなさい…ごめんなさい…」と繰り返しながらすすり泣き
を零します。
「謝って済むことか!…ほら!…見てみろ!…これがお前の本当の姿な
んだろッ!?」
私は言いながらテーブルの上に置かれていたビデオのリモコンを取り上
げ、再生のボタンを押します。
『…アアッ!…す、凄いッ!…アッ!…アアッ!…またッ…またイッちゃ
うッ!…アアンッ!…裕之くんッ!…アアッ!…イッ…イクッ!…アア
ッ!…い、一緒に…裕之くんも一緒にイッてぇッ!』
途端にスピーカーからは男に媚びるような激しい善がり声が響き、画面に
は快楽を貪り合うような妻と男の痴態が余すところなく映し出されます。
「ああッ!…いやッ!…いやぁッ!…止めてッ!…あ、あなたッ!…お願
いッ!…見ないでッ!…見ないでぇッ!…お、お願いですッ!…お願いだ
からッ!…止めてぇッ!」
床に突っ伏していた妻は、スピーカーから自分のあられもない善がり声が
響くと同時に、私の腕にすがり付くようにしながらリモコンを奪い取ろう
とします。
「俺には見せられないのかッ!?…こいつとは愉しそうに見ていたのに
なッ!」
そう言いながら私は妻の髪の毛を掴み上げ、無理矢理にテレビの画面の方
を振り向かせました。
「いやッ!…いやぁッ!…あなたッ!…赦してッ!」
『…アアッ!…アッ!…イ、イクッ!…裕之くんッ!…わたしッ!…また
イッちゃうッ!…アアッ!…イクゥゥッ!…イクウゥゥゥゥッ!!』
『由紀子さんッ!…僕もッ!…僕もイクよッ!…ッ…ウッ…ウウウゥゥ
ゥッ…』
画面の中の二人が同時に絶頂を極めました。
髪の毛を掴み上げられたままの妻は「いやっ!いやっ!…見ないでぇ
ッ!」と叫び声を上げています。
画面の中では、同時に果てた二人が寝具の上でギュッと抱き合いながら、
恍惚の表情で口付けを交わしていました。
それを見ながら私は、自分の理性や精神が音を立てて崩れていくのを感じ
ていたのです。
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