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北原夏美 四十路 初裏無修正

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CR   11/2(金) 23:24:21 No.20071102232421 削除
『汚らわしい事をしてしまった』

皿に盛られた精液を、女陰を擦りながら犬のように舐めとった。今、妻は
恥じ入っています。自分を卑下しているのです。自分が今までしてきた事に
気がつくのです。

『佐伯とはもう』

夫の電話で我に返ります。夫の声を聞くと申し訳ない思いで一杯に
なるのです。昨日の行為で尚更、その思いは強くなります。

「ただいま」
「お帰りなさい。お疲れ様でした」

妻の顔は沈んでいるようです。しかし、いつも通りの受け答えに腹
が立つのです。

『どうしてお前はそんな普通の態度でいられるんだ』

妻の髪を掴み引きずり回したい衝動に駆られます。押さえたものが
顔に出たのでしょう。

「貴方、お疲れになったみたいですね?顔色が優れません」

妻の言葉にまた腹が立ちます。

「疲れるのは当たり前だ。昨日・・・・・」

喉まで出掛かっている言葉を飲み込みます。

「昨日どうかされたのですか?」
「いや、何でもない。少し疲れた。早いが風呂に入る」

私はバスルームに向かいます。

妻はあんな行為をしても、平常でいられるのか。佐伯との関係も私
の推測が正しければ50回は超えているかも知れません。私にばれな
ければ、平常でいられるのでしょうか。

その回数の圧倒的な多さに怒りを覚えるのです、劇的に妻を変えて
しまった男に怒りを覚えるのです、妻を犬にしてしまった男を殺し
たいのです。
 
『待っていろ佐伯』

怒りを抑えようと冷水シャワーを頭から浴びて、バスルームを出ます。

「貴方、食事にされます」

テーブルには私の好物が並んでいます。 

「いや、飯はいい」

好物を摘みにビールを飲みます。 

妻は毛糸で何か編んでいます。マフラーのようです。今時は毛糸で
編物をする女性は少ないでしょう。妻は色々編んでくれます。靴
下、手袋、セーター。今でも季節がくれば、私はそれを身に着けて
いました。妻の気持ちで暖かかったのです。

「貴方のマフラーを編んでるの。今年の冬は寒いそうですから」

妻の気持ちが解りません。佐伯とあんな関係になっても平常の生活
を営めるのです。

私はウィスキーを持ってリビングのソファーに座り直します。 
CR 11/3(土) 22:46:44 No.20071103224644 削除
ごく普通の夫婦の風景がそこにはあります。

その風景に引っ張られて、一つの事を思い出します。台湾で買って
きた妻へのプレゼントがあるのです。バッグから小さな包みを出し
妻に渡します。

「有難う。これは何ですか?」

「まあ、綺麗」

ブローチです。大きな紫水晶の回りに普通の水晶を散りばめてあり
ます。まるで、妻の好きなフラッシュダークネクタリーのようで
す。妻も直ぐ気がつきます。

「クリスマスローズみたい」
「気に入ってくれたか」
「うん、嬉しい、本当に有難う」

妻は着ているブラウスに付けようとしています。

「本当は昨日、渡そうと思っていた。だが昨日はまだ台湾だ」
「どうして、昨日なんですか?」
「君は覚えていないか、昨日10月17日は僕たちが初めて会った日
だ。あれから25年か」

大学対抗水泳で私はある大学のOBとして、妻は対抗側の3年生とし
て参加しました。それが妻との出会いでした。

妻も思い出したのでしょう、ブラウスに付けようとした手が止まり
ます。その手を膝に置き、妻は顔を俯け、その目はブローチを見つ
め続けています。

「どうした」
「嬉しいんです。それなのに・・・」

後は言葉になりません。

『圭一さんはこんな事まで覚えていてくれた。それも私の好きなリ
スマスローズに託してくれて。それなのに、それなのに私
は・・・』

”それなのに”、私はわざと違う解釈をします。

「特別な記念日でもない。君も忙しかった。忘れる事もあるさ」

私はずるい男です。こんな時にわざわざ贈り物をする亭主はいない
でしょう。喜ばす為にあげたのではありません、妻の反応を見てい
るのです。贈り物で妻を苛めているのです。妻はそんな事を知る由
もありません。

漫然とテレビを見ています。妻はまた編物を始めています。10時に
なり妻はトイレに立ちます。こんな時でも佐伯との約束は守るので
す。ついさっき、”それなのに”と涙を流したばかりです。妻には
魔物が住んでいるのでしょうか。 

相手が佐伯だと100%の確証が無くとも、ここで妻にもう止めろと
言えた筈です。携帯を取り上げて確認すれば済む事です。結果が出
るまでは手を出さない、そう決めています。相手は腐れ男でも一応
地元の名士です。100%の証拠が無ければ叩けません。成り行きに
任せる事にします。
CR 11/3(土) 23:05:59 No.20071103230559 削除
私はトイレのドアーに耳を付け聞き耳を立てます。下卑た行為に自
分でも嫌気がします。でも聞きたいのです。

妻の細い声が聞こえてきます。

「・・・・・」
「火曜日、金曜日出張ですか?もう出来ません」
「・・・・・」
「えっ、そんな、酷いです。そんな事しないで下さい」
「・・・・・」
「解りました。行きます」

妻は一旦は断ったようです。酷いとはどう言う事か、妻はその後で
出張を了解してしまうのです。佐伯はたった4日間、妻と会えない
だけで、もう妻を抱く予定を立て知らせているのです。余程、妻に
執着があるのでしょう。妻は必ず、出張の予定は前もって私に知ら
せます。月曜日の夜には私に伝えるでしょう。しかし今その予定
を知りました。私はその前に行動を起こせます。時間を稼げま
す。

もうこれ以上聞いていられません。私はトイレの前で今歩いてきた
ように大きな足音を立てドアー越しに妻に声を掛けます。

「今日は疲れた。もう寝るから」

私はもう逡巡しません。佐伯を叩くだけです、熟睡します。

日曜日の朝、いつものように妻は朝食を用意しています。テーブル
に向かいます。腹は空いています。佐伯の男根を握った手で作り、
咥えてた口で味見をしていると思うと喉が受け付けません。もどし
そうになります。早々に席を立ち、出かける用意をします。妻と一
日中、一緒に居るのが耐えられません。

「どうされたのですか? 具合が悪いのですか? 10月17日の事で
怒っているのですか?」
「いや、何でもない。見たいアクション映画があるので見てくる。
体が鈍っている、その後水泳に行ってくる。晩飯も要らない」
「やっぱり怒っているのですね」

妻は勘違いしています。私が感づいたとは思っていないのです。と
んだ間抜け亭主だと思われているのです。それはそうです、この3
ヶ月余りの間、全く気が付かなかったのです。ここで感づかれたと
思う訳がありません。今の私にはその方が好都合です。

「あっ、それから来週一杯、台湾のメーカーと一緒だ。朝も夜も食
事は一緒だ。作らなくていい」

とっさに出た嘘です。正直、食べられそうもないし、食べる気もし
ません。

7時に戻ります。9時半、私は自分の仕事部屋で時間を潰します。仕
事をする訳ではありません、妻がトイレに立つのを見ていられない
のです。仕事部屋で考えます。佐伯を潰したところで、妻を受け入
れられるか? 解りません、あれ程の痴態を見てしまったのです。
では離婚か?離婚した私を、妻を想像してみます。 離婚した妻
は、これ幸いと佐伯の元へ走ってしまうのか?あり得ます、佐伯は
独身です。不倫の証拠を掴むだけでは駄目だ。佐伯の事を全て知ら
なくては。自分と妻の事はその後で考えれば良い。

翌朝、早く家を出た私は銀行が開くのを待ち、金をおろし興信所へ
向かいます。
CR 11/4(日) 16:00:29 No.20071104160029 削除
「随分早いですね?」
「妻と佐伯の行動予定が解ったのです」
「ほう、どうしてですか」

ここは隠す訳にはいきません。妻が携帯で話していた要点を伝えま
す。

「そうですか。二人の仲は相当深いですな」

ぐさりと来る言葉を平気で言います。

「これは失礼な事を言ってしまった。早速これから行動開始といき
ますか。これは簡単な調査になりそうだ、これだけ頻繁に会ってる
とね」

こんな切り口で言われますと、何だか深刻な事を頼んでいる気がし
ないのです。かえって、所長に親近感を抱かせます。

「おっと失礼。また変な事を言ってしまった」

所長の目の前に現金を置きます。

「所長、これ調査費用です」

土曜日に言われた調査費用の3倍の金額です。家を建てる時の足し
にと自分名義でも貯めています。今はそれどころではありません、
少しも惜しくはありません。

「こんな小さな興信所だ。山岡でいい。それにしても多すぎません
か?」
「いえ、浮気の調査だけではなく、佐伯の身辺調査も徹底的にお願
いしたのです」
「ふむ」
「女関係とか、離婚の理由とか」
「どうしてだね?」
「佐伯は独身です」
「ばれても奥さんを佐伯の元へ行かせたく無い。そう言うことだ
ね?」

所長はもう佐伯と断定した口ぶりです。

「そうです。それと佐伯を徹底的に叩きたい」
「奥さんとは離婚するのかね、それとも受け入れるのかな?」
「解りません。山岡さん、ここは人生相談所ですか」
「ご免、ご免。しかし、人によっては相談所にもなりうる」

『全く惚けた親父だ。何が人生相談所にもなりうるだ』

しかし、不思議な信頼感があります。

「あ、そうか身辺調査は無理ですね。ここにはスタッフが居ません
ね」
「いやそんな事は無い。この業界にも横の繋がりがある。浮気調査
の得意な所、身辺調査が得意な所。経済問題が得意な所。任せてお
きなさい」

所長に言われると妙に納得してしまいます。

「そう言うもんですか」
「金は先日言った金額でいい。後は実費精算だ。余ればお返しす
る」
「しかし、身辺調査を追加している」

結局、所長は持っていった額の1/3しか受け取りません。

「浮気調査は来週月曜日、身辺調査はもう少し掛かると思う」

所長の言葉を聞いて、興信所を後にします。
CR 11/4(日) 16:08:50 No.20071104160850 削除
会社でも妻の事が頭をよぎります。処理すべき仕事があるのが幸い
です。仕事している間は忘れています。夜、外食し、スイミングク
ラブに寄って11時頃、帰宅します。

「お帰りなさい。貴方、今日急に出張が決まってしまったの。明
日、大阪で一泊、金曜日、金沢で一泊なの。行っていいてすか?」
「行っていいですかって、業務だろ。行くしかないじゃないか」

妻は今まで通り、宿泊するホテルも私に教えます。

『何が行っていいですかだ。勝手に行け』

私は心の中で毒づきます。顔には出しません 私の心の中には二人
に対する怒り、憎しみしかありません 湧いてくる他の気持ちをそ
れで押さえているのです。

妻と交わした言葉はそれだけです。風呂に入り寝ます。

翌朝一番で、所長に電話して、妻の予定、宿泊先を伝えます。

今日は人と会う予定はありません。昼前、松下さんに話しかけられ
ます。

「社長」
「もう社長はいいよ。こんな小さな会社だ。君と僕しか居ない。宮
下でいいよ」

興信所の所長と同じ事を言っています。

「でも私にとっては社長です。社長以外には呼べません」
「そうか、仕方ないか。それで?」
「お弁当作りすぎちゃったんです。良ければ半分食べて下さい」
「それは嬉しいね。勿論頂く」

松下さんが来てくれて3ヶ月余りです。こんな事は初めてです。そ
れは作りすぎたと言う量ではありません、完全に二人分です。私が
そうさせなかった事もありますが、妻の手弁当を食べた事はありま
せん。実に美味い弁当です。

「美味い」
「やったー。作り甲斐があったと言うものね」
「何だ。わざわざ作ってくれたのか?」
「ばれちゃいましたね」

良く気が付く女性です。食後にコーヒーを淹れてくれます。

「社長の奥さん奇麗な方ですね」
「そうか」

松下さんは妻に一度会っています。入社して間もなくの頃、私の忘
れものを妻が届けてくれた時に話をしています。

「奥さん、社長の事愛してらっしゃるんですね」
「・・・・・、おっ、もうこんな時間か、ちょっと出かけてくる。
お弁当ご馳走さま」

私は返事が出来ません。返事の変わりに用事も無いのに出掛ける事
にします。

金曜日も、もう退社時間近くになります。

この一週間は酷かった。妻が家に居る時は、妻の姿が目に入りませ
ん、いや見れなかったのです。妻が出張で居ない火曜日の夜、妻は
そこかしこに居ます。打ち消しても打ち消しても、妻と佐伯が絡ん
だ姿態が目に浮かびます。佐伯の男根を咥えている妻、佐伯に尻を
掴まれ後ろから貫かれている妻、互いの性器を舐め合っている妻と
佐伯、佐伯の背中にに腕を回し爪を立てている妻 家で一人で居ま
すと妻と佐伯がいたる所に出てきます。打ち消すには酒しかありま
せん。浴びるように飲み、気絶するようにベッドに倒れこみます。

今日の夜はもう、そう言う思いをしたくありません。 

5時、私は松下さんを誘います。

「松下さん、用事が無ければ晩飯一緒にどうだ。僕も一人でつまら
ない」
「うわっ、嬉しい。連れてって下さい」
CR 11/5(月) 21:35:45 No.20071105213545 削除
松下さんが焼き鳥を食べたいと言う事で、焼き鳥屋に行きます。接
待で時々使う店です。隣の席とは衝立で区切られていて、焼き鳥屋
独特の喧噪さは感じません。

「社長に晩御飯をご馳走になるのは初めてですね」
「弁当のお礼と言っては何だが、たまにはと思ってね」
「お弁当のお返しで晩御飯をご馳走して頂けるのでしたら、これか
ら毎日持って来ます」

松下さんと話してると気持ちが和むのが解ります。酒が進むにれ、
食が進むにつれ心が軽くなるのが解ります。

松下さんの口も軽くなります。

「社長、言っていいですか?」
「何でも」
「社長、この1ヶ月くらい少し変ですよ。特に今週は変。何かあっ
たのですか?」

松下さんも私の変化に気が付いていたのです。いくら私でも妻が正
社員になってから、急に残業、付き合いで帰宅が遅くなり、出張も
毎週のようにあれば少しは変に思います。会社で空ろな時もあった
のでしょう。それがつい先週具体化しただけの話です。

「いや、別に何も。君がこの間 ”妻は僕を愛している”って言っ
たよね?どうしてそう思った?」
「ええ、奥さんの社長を見る目を見てそう思ったの」
「そうか、有り得ないな」
「えっ、有り得ない?」

感が良いのでしょう、松下さんはそれ以上この話題には触れませ
ん。

酔いに任せて喋ります。朝も夜も家で食べていない事、家に帰るの
はいつも遅い事。さすがに妻の浮気の事は言えません。

未だ9時、家には帰れません。二人でカラオケに寄ります。知って
いる歌は演歌です。不倫、悲恋、そんなテーマばかりです。妻と佐
伯が目に浮かび、曲が流れても歌えません。

「私も歌っていいですか?」
「勿論だ」

松下さんは60年代のアメリカンポップスを歌います。何処で覚えた
のかと思うほど上手に歌います。

「よくこんな歌知ってるね」
「父が好きで、小さい頃よく一緒に聞いていました」
「社長も一緒に如何ですか?」
私もメロディーくらいは知っています。見よう見まねで歌います。
弾けるような若い恋。駄目です、歌えません。妻と出会った頃を思
い出します。

「社長、今日は駄目みたいですね。私が一杯歌ってあげるから」

優しい女性です。私が腰を上げるまで、帰るとは言いません。私は
もう泥酔しています。

「そろそろ帰ろうか?」
「そうですね、私が送ってあげる」

一台のタクシーに乗り込みます。私の家の前です。

「有難う、おやすみ」
「おやすみなさい。奥さんの代わりをしてあげるから」

小さくそう言って、タクシーで去って行きます。その言葉は私の耳
には届いていません。
CR 11/5(月) 21:41:43 No.20071105214143 削除
シャワーを浴び、ベッドで横になっても眠れません。酒の助けを借
りて又気絶するように眠ります。夕方近くまで、眠り続けます。妻
の声で起こされます。

「ただいま。貴方どうかされました?具合でも悪いのですか?」
「いや、何でも無い。昨日半分徹夜だ」

私は言い訳をしています。

『どうして俺が言い訳しなくちゃいけないんだ。全てお前のせい
だ』

心の中で毒づいています。何をして来たんだと聞きたいのを押さえ
ています。

「何か召し上がりますか?」
「いや、いい。どうも夜も食べれそうも無い。夜もいい。それから
明日も仕事だ。明日も飯はいい」

私に非が有る訳ではありません。正々堂々としていれば良いもの
を、こんな態度しか取れません。怒りをこんな態度でしか現せない
自分がもどかしいのです。しかしこんな思いも後2日の我慢です。

仕事部屋に篭った私を何度か妻が覗きに来ます。

「貴方、大丈夫ですか?お粥作ったの。召し上がりますか?」

少しは私の事も気に掛けてはいるのでしょうか。心配そうな顔をし
ています。

「いや、要らない」

私が返す言葉はそれだけです。

夜中の12時を過ぎますとさすがに腹が減ってきます。キッチンに降
ります。テーブルの上に皿が並んでいます。私の好物ばかりです。
横にメモがあります。”食べれるようでしたら、召し上がって下さ
い”。

翌朝、私は出かけます。

「朝御飯、召し上がりませんか?」
「昨日要らないと言った筈だが」

夜、帰るとご飯が用意されています。月曜日の朝もしかりです。私
はそれを無視して出かけます。

事務所に入りますと、松下さんが声を掛けてきます。

「社長、お早う御座います。金曜日はご馳走様でした」

そう言いながらお握りと味噌汁を出してくれます。味噌汁とお握り
は、それから毎朝続きます。

携帯に着信があります。所長からです。

「今日、報告を渡せます。5時頃です」

それから全く仕事になりません。 

「松下さん、悪いが今日はこれで帰る」

4時半になると私は会社を後にします。
CR 11/6(火) 15:42:56 No.20071106154256 削除
事務所から興信所までのゆっくり歩いて15分程度の道が遠く感じま
す。 

「随分早いですな。後4,5分待って下さい」

待っている間、所長も無言です。その無言が堪えられません。

「出来ました。説明しましょう」

所長の説明を受けます。月曜日の日中、火曜日の夜と水曜日の朝そ
して金曜日の夜と土曜日の朝の報告です。写真が何枚か添付されて
います。

月曜日の日中:時間と場所が書かれています。2時過ぎ、場所は市
郊外のラブホテルです。タクシーを利用しています。地元でもあり
慎重なのでしょう。車がそのまま、建屋に入り、二人の姿、顔はホ
テルのドアーを入る時に確認できる程度です。タクシーを呼んだの
でしょう、タクシーが建屋に入った後、4時半頃二人が出てきま
す。妻の表情は良く解りませんが、笑っているようです。佐伯の左
腕に自分の右腕を預けています。

火曜日:妻はいつものシティーホテルに1時頃入ります。夜7時、二
人がホテルから出てきます。腕を組んでいます。7時半、北新地の
ラブホテル街に入ります。一軒のラブホテルの門をくぐります。10
時半頃、二人は出てきます。11時頃シティーホテルに戻ります。水
曜日の朝10時頃妻が一人で出てきます。

金曜日:二人は新幹線ひかりの同じ車両に乗り込みます。席は隣り
合っています。米原で特急しらさぎに乗り換え金沢に向かいます。
勿論席は隣同士です。夜6時に温泉旅館に二人は入り、翌朝10時に
旅館を出ます。

「ご覧の通りです。月曜日二人はラブホテルで何をしたか歴然で
す。まさか仕事の打ち合わせでは無いでしょう。火曜日のシティー
ホテル、金曜日の旅館の中での事は解りません。しかし佐伯も馬鹿
ですな、わざわざ北新地のラブホテルまで出向いている。いい証拠
をくれた」

何と二人は火曜日まで待てず、月曜日にも関係をもっているので
す。私は所長の話を聞いていません。数枚の写真が私を打ちのめし
ます。

北新地のラブホテルから二人が出てくる写真。妻は佐伯の左腕に両
手を絡め全身を預けるようにぶら下っています。その頭は佐伯の左
肩に預けています。顔に至福の表情を浮かべて。預けているのは体
だけではありません、心までも預けているのです。

ひかり、しらさぎの車中の写真。妻の手から妻の箸から食べる佐
伯、一つのコップで二人で飲むお茶。妻はもう私の妻ではありませ
ん、佐伯の妻のようです。

私の顔が余りにも深刻だったのでしょう。

「宮下さん、お気の毒です。女は皆、こんな顔をします。喜びをく
れた男には、夫にでもそうではなくても。ただ他の写真も見て下さ
い。奥さんを観察していても、沈んでいた時の方が多い気がしました」
「・・・・・」
「今日帰りに一杯どうですか?」

私に否やはありません。このまま家には帰れません。
CR 11/6(火) 15:49:17 No.20071106154917 削除
居酒屋の暖簾をくぐります。

「宮下さん、今日帰って報告書を奥さんに見せますか?」
「勿論です」
「少し待ってもらえませんか?」
「出来ません。しかしどうして?」
「今まで話せなかったが、実は以前から佐伯の身辺調査をしていま
す」
「・・・・・」
「身辺調査は水曜日の午前中に一件終わり、それで完了です」
「それが私に何の関係が?」
「佐伯の全貌が解ります。宮下さんにとっても重要な事です」
「しかし・・・」
「経済問題も含め全て宮下さんにお見せします。これは依頼元から
も了承を得てあります」
「経済問題?依頼元?」
「今は詳しく言えませんが他から依頼が先発していました」
「そうすると身辺調査もそこからですね」
「そうです」
「何処の依頼ですか?」
「今は話せません」
「そうですか。水曜日まで待たなくてはいけない訳ですね」
「申し訳ないが、そうしてくれれば助かります」
「仕方無いですね、そうします」

今日は妻に言えない。後2日我慢しなければいけない、その思いと
は別にまだ言わなくてもいいと、ほっとしたのも事実です。

後2日待てば、より強力な武器が手に入るのです。我慢する事にし
ます。 

「その代わりと言っては何だが、佐伯の別れた奥さんに君の事を話
した。何時でも会ってくれるそうです」

普通の興信所の親父では無いとは思っていましたが、どうしてそこ
まで手が届くのか不思議です。

「何を怪訝な顔してる。人生相談所にもなり得ると言ったがな」

私も別れた奥さんに会いたい、会って離婚の原因を知りたい、そう
は思っていました。

帰りがけ、別れた奥さん旧姓中条佳子さんの住所と電話のメモを渡
されます。

「宮下さん、余り考えないほうがいい。体に毒だ」

家に帰ります。

「お帰りなさい。食事は?」
「済ませた」

仕事部屋に入り、報告書を見ます。殆どの事は先程、所長から聞い
たものです。写真を眺めています。一つの事に気が付きます。ホテ
ルに入る時と出る時の妻の表情の違いです。入る時のそれは曇って
いるように見えます。出る時は佐伯に任せきった顔です。違和感が
あります。 

思い出しました。妻が出張するようになり、暫くしてから時折見せ
る顔です。ソファーに座っている時、あるいは台所仕事をしている
時手を休め物思いに沈んでいる時があります。そんな時、私がが声
を掛けても ”疲れているの、何でもないわ。”と返ってくるだけ
だったのです。あの時もっと突っ込んで聞けば良かった、そうすれ
ば此処までにはなっていなかった。しかし、もう遅いのです。
CR 11/6(火) 15:56:44 No.20071106155644 削除
火曜日の夜、明日大阪へ一泊の出張である事を知らされます。これ
以上もう耐えられそうもありません。翌朝一番で興信所に行きま
す。

「山岡さん、もう無理です」
「どうしました」
「今日、妻が又大阪に出張です。明日まで耐えられない」
「佐伯の別件は午前中に片がつく、それ以降なら大丈夫だ」

一旦、事務所に戻ります。

「松下さん、今日は休む。携帯にも電話しないで欲しい」
「何かあったのですか?」
「いや、私用だ」

大阪に向かいます。新幹線の車中、どうしたものか考えます。泊ま
るホテルは解っています。ホテルに聞いても妻のルームナンバーを
教えてくれる訳はありません。佐伯が妻の部屋に居るとも限りませ
ん。妻に携帯で聞けば教えてくれるでしょう。しかしそれでは、妻
は警戒し事を起こさないでしょう。

『浮気の現場を押さえる為に来たわけじゃないよな。洋子の部屋へ
行けばいい』

妻の携帯にコールします。妻の出張中に電話した事はありません、
心臓の鼓動が早くなるのが解ります。数回のコールの後、”電源が
切られているか、電波の届かない所に居ます”の案内が空しく響き
ます。思い切ってかけただけに、怒りが湧いてきます。ホテルの交
換経由の電話案内でも、部屋に居ないと返ってきます。時間をおき
数回繰り返しますが同じ事です。

『洋子はそういう女だったのか。出張中は俺の電話には出たくない
と言う訳だ』

打つ手がありません。考えあぐねます。新幹線を降りてもどうした
ものか迷います。まだ4時、取りあえずホテルに向かいます。ホテ
ルのエントランスの場所を確認します。一箇所だけです。報告書の
写真にあるのと同じである事も確認します。夜二人が何処かへ出る
とすれば此処からでしょう。車を使われれば諦める他ありません。
今日二人が外出するとは限りません。しかし私にはする事がありま
せん、エントランスを見つめる以外ないのです。

回りを見渡します。エントランスの道路を挟んだ向かいのビルの2
階に喫茶店があります。東京にもある喫茶店のチェーン店のようで
す。此処なら粘ってもおかしくありません。窓側の席に陣取りま
す。5時半、出てくるには未だ早いでしょう。6時半店は込んできま
す。一杯のコーヒーでは居た溜まれません、お替りをします。又1
時間が過ぎます。

『出てこないか。駄目だったな』

諦めかけたその時です。二人は出てきました、腕を絡めて。

「釣りは要らない」

私は喫茶店を駆け降ります。
CR 11/7(水) 19:06:36 No.20071107190636 削除
道路を渡る信号は丁度青です。急いで渡り、二人の前に仁王立ちに
なります。走ったせいか息が切れています。妻は私を見ても、一瞬
誰だか解らないような顔をしています。私は妻を見てはいません。
佐伯を睨み付けています。妻は私が解ったのでしょう。

「貴方、どうして此処に?」

私は妻を無視します。

「佐伯、まだ俺が誰だか解らないようだな」
「あっ、宮下さんのご主人」
「やっと、解ったな」
「これから奥さんと業者の打ち合わせに」
「聞きもしない事を言わなくていい。こんな遅い時間に、腕を組ん
で打ち合わせに行くのか。行く所はラブホテルだろ」

とっさの事に二人は腕を組んだままです。あわてて腕を解きます。

「貴方、これは違うの」
「うるさい。何とどう違うんだ。お前は喋らなくていい」

「貴様っ!」

佐伯の顔面にパンチを2発、そして股間を強かに蹴り上げます。

「ギェッ」

佐伯はもんどりうって倒れます。背広のポケットから財布と何がし
かの物が零れ落ちます。

妻は茫然として立ちすくんでいます。

私はピンク色した、形状の違う2つの小さな箱をそっと拾い上げ、
自分のポケットに仕舞います。

「貴方、聞いて」
「聞く事は何もない」
「・・・・・」
「俺は帰る。お前はもう帰ってくるな、佐伯と乳繰り合ってろ」

妻を見ると涙を流しているようです。それが又気に入りません。

「俺に佐伯が殴られてそんなに悲しいか」
「違います」

佐伯がのろのろと起き上がってきます。

「佐伯、精々可愛がってやれ」

私は踵を返してその場から立ち去ります。
CR 11/7(水) 19:22:51 No.20071107192251 削除
帰りの新幹線の車中、佐伯を殴った感触が手に、蹴り上げた感触が
足に残っています。人を殴るのは気持ちの良いものではありませ
ん。後悔している自分がいます。後悔している事はそれだけではあ
りません。どうして妻を連れて帰らなかったのかと悔やんでいま
す。今頃二人は慰めあって抱き合っているかと思うと居た溜まれま
せん。ウィスキーを注文します。酒で紛らわすしかないのです。

ウィスキーの支払いで小銭を出すのにポケットを探ります。佐伯の
ポケットから零れた小箱が指先に引っかかります。

『そうか、こんな物があったんだな』

見覚えがあります。中国のメーカーに行った時、女が燃えない時使
えば良いと見せられたものです。一つは経口催淫剤、一つは塗布媚
薬。非合法の物です。普通は手に入りません。それだけに効き目も
大きいのです。

『佐伯。こんな物を使いやがって』

飛んで引き返したい衝動に駆られます 車中、酔うどころではあり
ません、怒りが酔いを打ち消します。

家に帰ったのは0時半。今夜も眠れそうにありません。ソファーで
酒を飲み酔いつぶれ、そのまま寝てしまったようです。

女の声で起こされます。

「貴方、御免なさい。こんなにさせてしまって」

酷い二日酔いで頭がはっきりしません。今の状況が飲み込めないの
です。妻だと解るのに数10秒掛かります。時計と妻の顔を見比べて
います。まだ6時半です。

「どうしたんだ、こんな時間に」

場違いな事を聞いています。妻は説明します。新幹線の最終は名古
屋停まり、そこでムーンライト”ながら”に乗り換えて帰ってきた
のです。

『そうか、俺は昨日大阪へ行ったんだ』

妻の説明を聞いている内に徐々に頭が回復します。怒りが込み上げ
てきます。

「帰ってくるなと言っただろ」
「誤解です。あれは違います。お仕事です」
「何がお仕事だぁ。お前たちは腕を組んで仕事に行くのか」

私も何を細かい事を言っているのでしょうか。報告書を見せれば済
む事です。

「あれは、回りの人がみんな腕を組んでいて、じゃあ僕たちもって
部長が」
「回りがキスをしたら、お前たちもするのか。馬鹿か、お前らは。
お前は人妻だぞ、しかも40過ぎのな」
「そんな事しません」
「俺はお前の携帯に電話した。お前が出れば、あんなところを見ら
れずに済んだのにな」
「・・・・・」
「佐伯と居る時、お前はいつも電源を切っているようだな」
「あっ、あれは部長がお客と話している時は電源を切っておくよう
にと」

とっさにうまい嘘を思いついたものです。

「腕を組むのも佐伯、電源を切るのも佐伯。あいつの言う事はなん
でも聞けるんだな、俺の言う事は何も聞けなくてもな」
「そんな事ありません」
「俺が死んでも、明子が死んでもお前には連絡が出来ない。佐伯に
抱かれる方がお前には大事なんだ」
「抱かれてなんかいません」

明子の名前が効いたのでしょうか、妻は涙ぐみます。

「貴方、昨日はどうして大阪へ?」
「解りきった事だ、お前たちが乳繰り合っているところを見たくっ
てな」
「そんな事はしていません」

その時、家の電話が鳴ります。まだ7時前です、余程緊急でない限
りこんな時間に家の電話は鳴りません。
CR 11/8(木) 20:14:24 No.20071108201424 削除
「お前が出てくれ」

妻が電話に出ます。佐伯からです。

「貴方に替わって欲しいって」
「どうして俺が出なけりゃならない」
「お願いします」

仕方なく出る事にします。

「宮下だが」
「ご主人、昨日は申し訳ない。大人気なかった。つい奥さんに無理
言ってしまった」
「そうか」

それだけ言って電話を切ります。二人で打ち合わせたのが見え見え
です。

「貴方、済みませんでした」
「まぁそう言う事なら仕方がないか」

妻は一応安心したようです。茶番は此処までです。そろそろ本題に
入らなければいけません。

「ところで、お前に見せたい物がある」

2階の仕事場から報告書を持ってきます。

「これだ」

報告書を妻の目の前のテーブルに置きます。

「・・・・・」

表紙の興信所の名前が目に入ったのでしょうか、妻の顔は青ざめて
います。中身を見ようともしません。全てを悟ったのでしょう。

「これは違います」
「何が違う。まだ中身を見ていない。見たらどうだ」

報告書のページをめくっています。先週の月曜日から土曜日までの
妻と佐伯の記録が写真と共にあります。妻は読んではいません、そ
の目は空ろです。

「これは先週一週間だけのものだ。お前たちは相当前から続いてい
たな」

妻は返事が出来ません。バッグを探り2枚のコピーされた写真を差
し出します。

「何だ、これは」
「その写真が私を、私を」

その後は言葉になりません。

私はその写真を見つめます。

「僕と松下さんがホテルに食事に行った時の写真だな。これがどう
した」
「時間が」
「時間が?」

写真に印字された時間を見ます。入って行く時間は11:32.出てく
る時間が14:23。松下さんとは何度かホテルで昼食を取っていま
す。勿論、3時間も掛かる訳はありません。記憶を辿ります。直ぐ
には思い出せません。

「3時間の間、何をされていたのですか」
「3時間も居る訳がない」
「松下さんがあんな嬉しそうな顔をして」

ホテルを出る時の写真、確かに松下さんは嬉しそうな顔をしていま
す。妻が何を思っているのか、この時解りました。
CR 11/8(木) 20:23:23 No.20071108202323 削除
仕事部屋に行きノートパソコンを開けます。会社を始めてからのス
ケジュールは全て記録してあります。 写真の日付は7月11日 7月
10日から7月13日まで台湾、10日、11日12日は台湾で泊まっていま
す。7月10日を見ます。松下さんとホテルで昼飯を取っています。
松下さんが来てくれたのがその前の週、来てくれた御礼にと昼食に
誘ったのです。7月10日は台湾に発つ日、乗ったフライトはEG205、
成田16:30発です。市内を13時には出なければいけません。ホテル
からは、遅くとも13時前には出ている筈です。

ノートパソコンを持ってリビングに降ります。

「洋子、いいか。よく見ろ。11日は僕は台湾に居た」

えっと言う表情で私を見つめ返します。

「確かに松下さんとは食事をしている。但し7月10日だ。7月10日は
台湾に発つ日だ。フライトは16:30、1時前にはホテルを出てい
る」
「・・・・・」
「しかも、11日に君は台湾のホテルに電話をくれている。忘れた
か?めったに電話をくれない君が」

佐伯は時刻を改竄する時、日付けを11日にしてしまったのです。妻
は思い出します。声を聞きたくなったからと、電話をしたのです。
佐伯に写真を見せられた時、時刻だけを見ていました。どうして日
付を確認しなかったのか。しかし妻はまだ理解していません、何故
こんな写真があるのかを。

「つまり佐伯が偽造したと言う事だ。ばれたら今度は泣き落とし
か。佐伯には余程可愛がってもらっているんだな、自分が電話した
事さえ忘れているんだ」

暫く妻を眺めています。泣き伏している背中が震えています。

『どうしてこんな事になったんだ。洋子はどうしたんだ。俺たちの
20年間がたったの3、4ヶ月の事で終わってしまうのか』

しかし、感傷に浸っている暇はありません。更に追い討ちをかけま
す。

「この写真は預かっておく、証拠品だからな。誰から渡された?」
「・・・・・」
「馬鹿な質問だったな。佐伯しか居ないからな」

「それから携帯も預かっておく」

妻は自分の携帯を差し出します。

「違う、これではない。佐伯から渡された方だ」
「そんなものもらっていません」
「いつも10時頃佐伯と連絡していた携帯だ。それと・・」

さすがに先々週の金曜日の事は言えません。 

妻は頑なになっています。とうとう携帯を出しません。

「まあいい、お前たちももう使うことも無いだろう」

「それから、これは佐伯のポケットから落ちたものだ」

ピンク色の小さな2つの箱をテーブルに置きます。

「これが何だか解るよな」
「解りません」
「お前たちが何時も使っていた物だろうが、飲む媚薬と塗る媚薬、
しかも非合法。全くお前たちは変態か?」
「知りません、私そんな物知りません」
「知らないだと。塗られても気がつかないのか、お前は」

知っていたと言えば、それを材料にまた私は責めるでしょう。知ら
ないと聞けば、解らない程お前は気をやっていたのかと、また責め
るでしょう。
CR 11/9(金) 22:50:03 No.20071109225003 削除
妻の泣き声は更に大きくなります。しゃくりあげるように泣いてい
ます。その背中を見ていると怒りとは別の感情が出てきます。この
4ヶ月以上、妻の裸を見ていません。むらむらと欲情が湧いてきま
す。

「洋子、そこで裸になってみろ。服を脱げ」
「出来ません、許してください」
「夫の俺には出来ないのか」
「違います。こんな朝から出来ません」

出来ないのは解っています。朝でなくとも、こんな状況で出来る訳
はありません。しかし、私は止める事が出来ません。

「朝だから出来ない?馬鹿かお前は。佐伯とは昼日中ラブホテルに
しけこんでるだろ」

妻は脱ぎません。無理矢理脱がせにかかります。先ずスーツの上着
を取るとその下は薄いピンクのブラウスです。ブラウスを剥がしま
す。妻は両手で胸を隠します。

「腕をどかせるんだ」

力ずくで腕を抉じ開けます。妻は抵抗を止め両手で顔を覆います。
ブラが現れます。乳房の下を申し訳なさそうに細い帯状の物で支え
ているだけのブラ、乳首部分にカバーはありません。

「お前は、佐伯に弄ってもらい易いようにこんな物着けてるのか」

妻の乳首は以前より若干黒ずんでいるようです。 

スカートを脱がせます。妻は足をばたつかせ激しく抵抗しますが男
の力には敵いません。スカートを脱がせると、ガーターとストッキ
ングその下にはT-バックが現れます。

「なんと言うものを履いているだ、お前は」

この変わり様に私の言葉はありません。

「立ってみろ」
「立てません」

妻は赤子のように丸まって、横になっています。貴方には何も見せ
たくないと体で言っているようです。その態度が気に入りません。
妻の頬にビンタをはります。妻に手をあげたのは結婚以来始めての
事です。

「いいから立て。立てって言ってるんだ」

妻はよろよろと立ち上がります。 両手は顔を覆ったままです。

正面から妻を見ます。均整のとれた体に薄紫色のブラとT-バック、
その上には黒のガーターとストッキング。ブラから飛び出た乳首、
申し訳程度の布切れで覆われた女陰、その布切れは女陰の割れ目を
浮かべています。

「後を向け」

背中に張りついたブラの細い紐、T-バックは尻の割れ目に食い込み
見えません。

「もう一度前を向くんだ」
CR 11/9(金) 23:17:25 No.20071109231725 削除
私の物がその鎌首をもたげます、こんな状況でなければ飛びついて
いるでしょう。しかし、今はそんな場合ではないのです。眺めてい
る内、新たな怒りが湧いてきます。

「お前はこんな物履いているのか?佐伯に見て貰いたくって、脱が
せて貰いたくって、こんな物を。会う前から濡らしているんだろ?
俺にはオバサンパンツか」

言えば言う程、感情が激してきます。今まで押さえていた物が全て
出てきます。

「お前は佐伯に何回抱かれた?4ヶ月で50回か?俺たちの5年分だ
な?佐伯のチンポとお前のマンコは余程相性がいいんだな」

妻は俯いたまま聞いています。いや、聞いていないのかも知れません。

「佐伯のチンポは涎を垂らして咥えられるんだ。奴のザーメンは飲
めるんだ。奴の指ならクリは気持ちいいんだ。奴の舌ならお前のマ
ンコは喜ぶんだ」

本当のところは知りません。携帯で佐伯の指示で妻が善がってい
た、その場面が頭から離れないのです。

ガーターごと一気にT-バックを脱がします。足を開きます。そこに
現れたのは私の知っていた物ではありません。小陰唇はその窪みか
ら醜くはみ出ています、クリトリスの包皮も捲れています。しかも
色も赤黒く爛れたようになっています。こんな時でも膣口からは涎
を流しています。あの可愛そうなくらい小さくて可憐な物はもうあ
りません。今しがた、妻を責める為に言った私の言葉が事実となっ
て帰ってくるのです。 

私を打ちのめします。私にはもう妻を責める気力がありません。

「こんなにしやがって」

その言葉は妻に向けたものか、佐伯へのものか私にも解りません。

私はバスルームの整理ロッカーから妻の下着も持ってきます。私の
知っているいつもの下着です。それを妻に投げつけます。

「もういい。服を着ろ。俺は出かける。自分のした事を良く考えて
おけ」

本当は出て行けと言いたかったのです。しかし言えません。佐伯は
独身です。出て行けと言えば佐伯のマンションしか行くところはあ
りません。耐えられません。佐伯のところだけには妻を殺してでも
行かせたくありません。一度や二度の浮気では無いのです。これだ
け長期に渡り、密度濃く、妻は完璧に佐伯に変えられてしまったの
です。本来、妻が持っていた物かも知れません。そうであっても佐
伯にそれを引き出されてしまったのです。普通なら、”離婚だ、出
て行け”の一言なのでしょう。私には頭の整理がつきません、いい
え、心の行き先が見えません。

もう9時になります。2時間も妻を責め続けていたのです。仕事をす
る気になれません。事務所に電話をいれます。

「松下さん、悪いが今日も休む」
「どうされたのですか?」
「いや、私用が片付かなくって」
「お急ぎでなければ、事務所に寄りませんか?味噌汁があります」
「そうか、有難う」
CR 11/11(日) 10:01:46 No.20071111100146 削除
松下さんの作ってくれたお握りをほうばり、味噌汁を飲みます。そ
の美味さ、暖かさに思わす涙が零れます。

『社長、余程酷い事があったんですね』

「ご馳走様。美味しかった」

事務所を出ます。行き先は所長さんの所です。

「宮下さん、報告書は今日奥さんに見せたんだね」
「どうしてそれを?」
「言ったように、昨日の午前中が調査の最終日だ。私も大阪に行っ
た。昨日の君の口振りでは、君も大阪に行くに違いないと思った。
君の活躍を見たかった」
「それでは全て?」
「そう、見ていた。君は気がつかなかったようだが、同じ喫茶店に
いた。ま、気づかれるようなら、私もこんな商売はしていないがね」

私が立ち去った後、妻は私のキックで歩けなくなった佐伯を部屋ま
で連れて帰り、自分の荷物を纏めてホテルを出たのです。一部始終
を所長は見ていました。その時間には東京行きの新幹線はもうあり
ません。名古屋で乗り換え ”ながら”で帰ってきたのです。

「奥さんは、君を追って駆け出した。暫く追ったが追いつかない」
「私を追ってきたのですか」
「そうだ。名前を叫んでいたが、君は聞こえなかったようだな」
「そうですか」
「その内、歩けない佐伯が気になったんだろう、佐伯に肩を貸して
ホテルに戻った」

妻がホテルから出てくるであろうとそのまま待っていてくれたのです。

「同じ車両に乗った。あの調子では奥さんは一睡もしていない。私
は寝たがね」

所長の目は赤く腫れぼったいのです。妻の様子を見ていてくれたの
です。

「有難う御座います」
「何のお礼だね」
「いや、つまり妻を見ていてくれた」
「それより、話があって来たのでは」

写真、媚薬2個を出し所長に出します。所長が先ず手に取ったのは
写真。

「これは君と松下さんだね」
「えっ、松下さんとは会っていない筈では」
「己を知れば百戦危うからずだ」

私は日付日時の事を説明します。所長は日付の部分をじっと見てい
ます。

「此処を見なさい、この部分が他とは色合いが違う」

確かに違います。

「多分、いや間違いなく佐伯が自分のPCで時刻部分を切り取り、嘘
の時刻を貼り付けたのだろう。なんと稚拙な事を」
「その稚拙な事に妻は騙された」
「普通はそこまで見ない。まして奥さんは動転していた。気がつく
訳がない」

媚薬に目を移します。

「これは裏では有名な媚薬だよ。どんな女でもいちころだ」
「これを妻は使われていた」
「しかし、酷い奴だ、佐伯は。写真と言い、媚薬と言い手段を選ば
ない。卑劣な奴だ」
CR 11/11(日) 10:12:36 No.20071111101236 削除
佐伯が卑劣であろうとなかろうと、騙されたのは妻です。いや騙さ
れたのではなく、妻はそれにのっただけかも知れません。

「宮下さん、君は佐伯をどうしたいんだね」
「頭の整理がついていません。出来れば殺してやりたい」
「そうだろうな、しかしそれは出来ない。奥さんの方は?別れますか?」
「余計な事だ」
「失礼した。人生相談ではなかったな」

”別れますか?”この言葉に困惑します。別れなど考えたこともな
かったのです。真相を知り男を叩きのめす、これしかありません。
妻と別れられるのか、それとも一緒に暮らせるのか、今の私には考
えがつきません。

「佐伯の身上調査は火曜日には纏まる。取りに来るといい。ところ
で中条さんとは会ったかね?」
「中条さん?」
「佐伯の別れた奥さんだ」
「あ、今日お会いしようかと」

中条さんと会った後、佐伯の所へ乗り込む積りです。

「直ぐ会った方がいい」
「そうします。では失礼」

興信所を出る私の背中に声が掛かります。

「困った事があったらいつでも来てくれ。人生相談の窓口は開いてる」

中条さんのお宅へは車で40分程度の距離です。椿の垣根で囲まれた
質素なお宅です。呼び鈴を押します。

「はーい」
「宮下と申します。山岡さんに言われて伺いました」

客間でしょうか、8畳の和室に通されます。

物静かな女性です。女の一人暮らしのせいでしょうか、凛とした表
情が漂っています。

「どうぞ、お座りになって下さい」
「はい、今日は失礼を省みずお伺いしました」
「どうぞ、気楽になさって下さい」
「あのー」

聞こうとしている事が事だけに中々口火が開けません。

「ご主人の、いえ失礼、佐伯の、いえ佐伯さんの・・」
「佐伯でいいんではないですか。もう私はあの人の妻ではありません」
「無礼を承知でお聞きします。佐伯とはどうして、そのう、離婚を」
「短兵急な方ね。お茶も未だですのよ。それにご自分の事は何もお
喋りになってないわ」
「失礼しました」

妻と佐伯の事の大筋を話します。

「御免なさい。本当は山岡さんから聞いていたの。貴方が死にそう
な顔をしてるから、ちょっと言ってみたの」
「そうですか」
「佐伯も昔はいい人だったわ、私にも優しくしてくれた。8年前に
変わったわ。手術をしたんです」
「手術?何処か悪かったのですか?」
「いえ、そうじゃ無いんです。男の手術です」
「男の手術?」
CR  11/11(日) 10:25:21 No.20071111102521 削除
男の手術つまり佐伯は男根の増大手術をしたのです。話によります
と、佐伯のそれは勃起時で大人の男性の中指を少し太くした程度だ
ったそうです。佳子さんはそれで感じ満足もしていたのです。しか
し、コンプレックスを持っている佐伯は悩んだ末、佳子さんに無断
で手術を受けてしまうのです。

「手術から回復して、どうだと言わんばかりに私に見せるのです」

それは正視に耐えるものでは無かったそうです。大きくはなりまし
た、しかし出来の悪い大人のオモチャのようにゴツゴツしたグロテ
スクな物だったそうです。

「こんな恐ろしい物、おぞましい物、見る事も出来なかったわ」

それ以後、佳子さんはセックス拒否症になり、夫婦はセックスレス
になったのです。

「佐伯の性欲は強い方だったと思います。我慢出来なくなったので
しょうね、それと新しい物を試したかったのでしょう。浮気を繰り
返すようになったの」
「それで離婚を?」
「いいえ、違います」

佳子さんは佐伯の浮気は自分のせいだと言います、自分が拒否した
せいだと。だから我慢できたと。

「何人目かの相手が妊娠したの。人妻だったわ。ご主人に知られて
離婚、貧しい生活のようでした」

その人妻は、認知は出来ないまでも、我が子だと認めて欲しい、若
干の養育費を貰えないでしょうかと佐伯にお願いしたのです。その
事は佳子さんの知る所となりました。

「私は了承したの。もし彼女が望むなら子供を養子として引き取っ
てもいいと」

佐伯夫婦には子供が居なかったのです。佐伯の相手の人妻が妊娠し
た事実だけでも、佳子さんには相当ショックだったでしょう。にも
関わらず彼女は養育費、更には相手が望めば子供を養子にして引き
取るまでの決意をしたのです。彼女が3度目に家に来た時の事です。

「佐伯は彼女に言ったの。”この子は本当におれの子供か?俺以外
にも男は居たんだろう?”って」

彼女は ”酷い”の一言を残して、泣きながら帰ったそうです。 

「気になって住所を頼りに彼女を訪ねたわ。だけど彼女は居なかっ
た。その後も随分探したけど、見つからなかった」

佳子さんは溜息をつきます。その当時を思い出しているのでしょう。 

「佐伯の人格を見たような気がしたわ。それからはもう駄目、佐伯
のする事、何を見ても、何を聞いても、もうこの人とは一緒に暮ら
せないと思ったの」
「そうですか。そんな事まで話して頂いて。でも私の妻はそんな佐
伯に溺れてしまった」
「宮下さん、佐伯は女を玩具としか見ていない、そんな男なの。も
う一度奥さんをしっかり見てあげて」

佳子さんは強い人でした。夫の裏切りを何度も許し、相手の女性に
も労りを示すのです。しかし夫の人間性を知った時、決別を告げま
す。会って直ぐに感じた凛とした表情はその生き方を映しているの
でしょう。お礼を述べ中条家を後にします。
CR 11/13(火) 14:48:34 No.20071113144834 削除
佐伯の会社に向かう途中考えます。所長が早く中条さんに会えと言
った訳を。佐伯の人間性を私に解らせたかったからでしょうか?そ
れもあるでしょう。それよりも佳子さんさんの強さと優しさを見せ
たかったのでしょう。しかし私はあんなに強くはなれません、優し
くもなれません。今の私には如何に佐伯と妻に復讐してやるか、思
い知らせてやるか、それしか頭の中にはありません。

それにしても、佳子さんと妻は違いすぎます。その当時、夫であっ
た佐伯のものをグロテスクだと受け入れられなかった佳子さん、喜
んで縋りついてしまった私の妻。妻の中の女が解りません。

佐伯の会社の前に着きます。この時間には佐伯が社内に居る事は確
認してあります。受付で佐伯を呼出、応接に案内されます。思いに
任せてここまで着ましたが、話すべき事を何も用意していない事に
気がつきます、いや考えても自分でもどうして良いか解らないのです。

『まあいい。今日は事実を突きつけるだけだ』

暫く待つと佐伯が応接に現れます。

「宮下さん、申し訳ない。昨晩は見苦しい所をお見せしました」

当然、妻から興信所の件は佐伯に連絡があったものと思っていまし
た。妻が連絡していないのか、それとも佐伯が惚けているのか。

「別に見苦しくは無い。あんた達二人にとっては当然の事だろう」
「は、仰ている意味が良く解りませんが」
「腕を組むぐらいは、愛し合ってる二人にとって当たり前の行為だ
と言っているんだ」
「益々、解りません」
「惚けるんじゃない。随分前からのようだな」

報告書を佐伯の前に放り投げます。

「これは?」
「表紙に書いてあるだろう。興信所のレポートだ」

佐伯はどうしてこんな物が此処にあるのか不思議そうに眺めています。

「中を見たらどうなんだ。先週一週間の物だが、3回も会っている
んだな。随分、洋子にご執心のようだな」

此処まできても、私はまだ数に拘っています。佐伯の膝と手が小さ
く震え出します。

「こんな物嘘だ。でっち上げだ」
「洋子を呼んで3人で話し合ってみるか」
「いや、それは」
「まあいい、兎に角今日はこれを届けに来ただけだ。俺もあんた達
をどうしようかまだ考えていない。勿論それ相応の事はして貰うつ
もりだ。あんたも良く考えておくんだな」

言う事だけ言って佐伯の会社を出ましたが、私はこれからどうすれ
ば良いのか全く見当がつきません。佐伯には慰謝料で済ませる積も
りはありません、徹底的に社会的に葬ってやる。その場合、私の事
も妻の事も社会に晒されるでしょう。私は一人で仕事をしてる身で
す。仕事に影響が出るとは思えません。妻が社会に晒されようと自
業自得です。私が気にしているのは妻と別れられるかどうかその一
点です。

『出て行けと言えば、間違いなく妻は佐伯のマンションに行く。そ
れは耐えられない』

妻がどうなろうと自業自得と思っている私、妻と別れたくない私、
私の思いは矛盾だらけです。 
CR 11/13(火) 15:00:53 No.20071113150053 削除
『妻の顔を見れば自然と言葉が出るだろう』

そう言う思いで玄関に入ります。もう4時です。家を出てから7時間
経ちます。テーブルを見ますと、白く小さい物が置いております。
その脇にメモがあります。

”貴方御免なさい。部長から渡された携帯です”

とだけ書かれています。携帯はハンマーのような硬いもので打ち壊
されています。佐伯との決別の印のように見えるのです。

妻が居ません。玄関を入る時、鍵が掛かっていたのかどうか覚えて
いません。一階のバス、トイレを見ますが居ません。出て行ったの
でしょうか。居てくれと言う思いで二階に上がります。寝室のドア
を開けます。ベッドに妻が寝ています。洋子と声を掛けても返事が
ありません。軽く頬を叩きます。妻は起きません。布団の上掛けを
剥がします。下着、私が投げつけた下着だけの姿で横たわっていま
す。何度が揺すり、頬を叩くと妻は目を覚まします。

「あっ、貴方、御免なさい」

白い唇、白い頬、空ろな目、妻の表情が尋常で無い事に気がつきま
す。あり合わせのの服を着せ病院へ連れて行きます。車の中でも妻
は眠ったままです。病院に着き、妻が大量に睡眠誘導剤を飲んでい
る事を知らされます。入院加療が必要との事、手続きを済ませ家に
帰ります。

何の話もしないまま、妻は入院してしまいました。まさか入院中の
妻と話をする訳には行きません。入院した妻が哀れと思うより、い
らいら感が募ります。明日は金曜日、2日も休み会社の仕事も溜ま
っています。妻と佐伯の事は休みにじっくり考える事にします。

金曜日、3日ぶりの出社です。松下さんがお握りと味噌汁を出して
くれます。

「社長、お帰りなさい」
「只今、只今と言うのも可笑しいな」
「お帰りなさいも可笑しいですね」

『お帰りなさいか?』

松下さんにそう言われると何かほっとします。ここが我が家のよう
な気がします。妻からその言葉を暫く聞いていない気がします。妻
は多分言っていたのでしょう、私の耳に入らなかっただけなのでし
ょう。

私の留守中の案件を整理しくれてあります。処理は午前中で片付き
ます。

「昼飯に行こうか」

松下さんをUホテルに連れて行きます。ここから始まったのです。
私と松下さんの昼食から。

「社長、顔色が悪いですね。女の勘で言ってもいいですか」
「あ、いいよ」
「奥さんと何かあったのですね」

私を優しく見つめます。女を感じさせる瞳です。松下さんには隠せ
ません、妻の浮気の事を話してしまいます。松下さんの気を引く魂
胆もあったのです。
CR 11/14(水) 22:45:01 No.20071114224501 削除
「所長の所に寄ってくる」

報告の必要は無いのでしょうが、不思議です、全てを話したくなっ
てきます。携帯を妻が差し出した事、佐伯と昨日会った事、妻が入
院した事を話します。

「そうか、佐伯と会ったか。それで佐伯の事はどうするんだね」
「慰謝料で済ませる積もりはありません。社会的立場をなくしてや
りたい」
「君が手を下すまでも無く、佐伯の立場はなくなる」
「どう言う事ですか?」
「君には全て話そうと思っていた。もうその時期だな。前にも言っ
た通り佐伯の身辺調査をしている。その結果は火曜日に依頼人に渡
す。その後君にもな」

調査の依頼人は未だ明かせないと言う前提がありますが、調査の内
容を大筋で話してくれます。

「君も知っての通り、佐伯は社長の甥だ。専務の妹、出戻りだが
ね、その妹と佐伯の結婚話が持ち上がっていた。専務は次期社長。
筋から言ってその次は佐伯になる。将来の社長の身辺がきな臭いも
のであればしょうがない」

所長は淡々と語ります。

「佐伯は大阪センターの建設担当役員も兼任している。佐伯と大阪
の建設業者の間で前々からきな臭い噂があった。女の方も相当ある」
「・・・・・」
「業者からの金銭授受も多少のものなら目を瞑れる。女の方は金で
整理がつくかも知れない」

出来るだけ詳細な報告をと依頼されたのです。ここまで聞けば依頼
主が誰なのか私にも大凡の見当はつきます。 

「その程度の物であれば、佐伯には訓告で済ませたと思う」
「その程度では無かった?」
「その通りだ。女はともかく金が程度を超えていた」
「そうですか」
「言うまでも無いが、この事は奥さんにも佐伯にも時期がくるまで
話さないでほしい」
「勿論です。私は私の材料で戦います。でもその時期とは?」
「来週一杯と言っておこう」

佐伯の人間性が解ります、妻をこいつだけには何があっても渡せま
せん。

「妻が昨日入院しました」
「どうしてそれを早く話さない。早く病院に行ってあげるんだ」
「今は会えません。妻の顔を見れば出てくる言葉は一つです」
「そうか。どうして入院したんだね」
「大量の睡眠薬を飲んだと」

私の携帯に着信があります。 病院からです。

「奥さんの担当医です。ご主人、今日病院に寄ってもらえますか」
「直ぐ伺います」

松下さんに直帰する旨伝え、病院に向かいます。
CR 11/15(木) 16:57:27 No.20071115165727 削除
担当医と話します。

「ご主人、奥さんは相当弱られています。断り無く血液検査をしま
した。ご主人、少しは控えて頂かないと」
「は?どう言う事ですか」

私には言われている意味が解りません。

「つまりですね、薬を使うのを程々にして欲しいと。求めるのは解
りますが」

血液検査の結果、ピルの常用、経口催淫剤の大量常用が残留成分と
して検出されたのです。特に経口催淫剤の量は限界を遥かに超えた
量だそうです。その影響は長く持続する可能性があるそうです。し
かたありません、事実を話すしかありません。第三者に話したくは
なかったのですが妻の不倫の事を話します。勿論相手の名前は伏せ
たままです。 

「そうですか、失礼な事を言いました」

もう一つ気になる事があります、妻の女陰の事です。

「先生、実は妻のあの部分に媚薬を塗られていた可能性があります」
「その部分を見て欲しいと」
「お願いします」
「解りました。今直ぐには手配出来ません、明日朝見る事にします」

「ご主人、お名前は圭一さんですね」
「そうですが、それが何か」
「奥さんが何度も何度も ”圭一さん、御免なさい”とうわ言で繰
り返しています」
「・・・・・」
「話掛けてあげればと思いまして」
「いや、余計なお世話だ」

結果は明日聞きに来る旨言って病院を辞します。

『圭一さん御免なさいか』

余計な事だ。妻がうわ言で何を言おうが、夢で何を見ようが関係あ
りません。してしまった事は戻らないのです。許す気持ちはありま
せん。

家に戻ります。憂鬱な夜が始まります。酒を煽ります。妻の事、佐
伯の事、松下さんの事が頭でぐるぐる回ります。酔う程に松下さん
の比重が大きくなってきます。携帯を手に取っています。松下さん
をコールします。

「松下さん、今から行っていいかな?」
「散らかってますけど、いらして下さい」

松下さんのアパートに始めて訪れます。8階建ての立派なマンショ
ンです。2階に彼女の部屋があります。

「こんな時間にお邪魔して申し訳ない」
「いいえ、お上がり下さい」
「君には全て知られている。今日病院へ行ってきた。夜一人じゃ居
られない」
「病院では何と」
「今は言えない」

松下さんがウィスキーを用意してくれます。ちびりちびりと飲んで
いますが、話す事がありません。私はリビングをあちこち眺めてい
るだけです。
CR 11/16(金) 18:05:07 No.20071116180507 削除
「身分不相応な所に住んでいると思っているんでしょう?」
「いや、そんな事は無い」
「私、両親を早く亡くしたの」

ご両親が早く亡くなり、結構な財産を一人娘の松下さんに遺したの
です。松下さんが成人するまで親戚の方が預かり、成人するの待っ
て、その一部でマンションを買ったのです。

「そうなのか。苦労したんだ。それでそんなに強いんだ」
「強くありません。強いなんて言わないで下さい。それを聞いて女
は喜びません」
「ご免、そんな積もりで言ったんじゃない」
「こんな歳まで女一人で不思議だと思っているんでしょう」
「うーん、まあ君のような綺麗な人がとは思う」
「私も色々ありました。結婚を考えた人も居ました。でも一人暮ら
しが長いとついつい慎重になっちゃって。この部屋に入った男の人
は社長が始めて。もう結婚は考えない事にしました」
「君がその気になりさえすれば、相応しい相手はいくらでもいるさ」

取り止めの無い世間話をしています 妻の話題は松下さんも避けて
いるのが解ります。話題があって来たのではありません、話が途切
れます。松下さんは酒の世話をやいてくれます。摘みを取りに、チ
ェイサーを取替えにキッチンに何度もリビングと行き交います。私
の目は自然と尻を追っています。歩を進めるたびにそれは上に、下
に、右に、左に揺れ動くのです。スカートの上からショーツの線が
見えています。チェイサーを取替える時、私の肩越しに腕が伸びま
す。薄いセーターのV-ネックから胸の谷間が覗けます。うなじが
目の前に現れ、女の匂いが鼻腔を擽ります。4ヶ月以上も妻を抱い
ていないのです、

『松下さんを抱きたい』

衝動が突き抜けます。と同時に別の思いが掠めます。佐伯、妻との
決着はついていません。しかも妻は入院中です。ここで松下さんを
抱くわけにはいきません。松下さんをも汚してしまう事になります。

「松下さん、急に思い出した事がある。病院に妻のものを届けなけ
ればいけない。ご免、これで帰る」

勝手な男です。突然来て、突然帰ります。松下さんがその気になっ
ていたのかは解りませんが、傷をつけてしまった事は確かです。

松下さんは私の嘘を見抜いていたのでしょう。

「奥さんをお大事に」

これで考えなければならない事が3つに増えました。妻の事、佐伯
の事そして松下さんの事。しかし私の生き方は ”すべて水のよう
に”です。酒を煽って酔いつぶれて寝る事にします。酒を飲みだす
と松下さんの姿態が目に浮かびます。打ち消すように酒を煽ります。

酔いつぶれて寝て翌朝起きたのが11時です。シャワーを浴びてがん
がんする頭を押さえて病院へ急ぎます。 

「事後ですが、ご主人この書類にサインを頂けますか?」

担当医が書類を出します。今朝、私と連絡が取れなかったので、事
後になって申し訳ないと一言添えます。私が酔いつぶれて家の電話
にも、携帯の着信にも気がつかなかったのです。妻に麻酔を施した
と、その了解が欲しいと書かれています。

「奥さんに了解を求めてもそれは無理でしょう。私の判断で麻酔を
する事にしました」
「結構です。問題ありません」

サインを済ませ、担当医の説明を聞きます。
CR  11/17(土) 21:06:33 No.20071117210633 削除
その報告は衝撃的な物です。

「失礼だとは思いましたが、奥さんの陰部、肛門とそれから乳房を
検査しました」

女陰には、クリトリス、陰唇、膣口と膣のの中に至るまで、そして
乳首に大量で強力な媚薬を塗布された形跡があると言うのです。皮
膚から相当量の残留成分が検出されたのです。しかも皮膚から血液
の中に溶け出しているだろうと。普通の性交では皮膚まで破ける筈
はありません。肛門からは何も検出されません。

「聞きたく無い事を言わなければいけません。皮膚にこれだけの成
分を残すには、相当長期間に渡り、大量に常用する事が必要です。
皮膚の糜爛、傷もしかりです。奥さんの皮膚は普通の成人女性に比
べ相当薄いようです。玩具を使っていないとすれば、相手の男根は
普通では無いと考えられます」
「普通では無い?」
「そうです。真珠を埋め込んでいるとか、シリコンで成形している
とかです」

中条さんの言葉を思い出します。 ”大人のオモチャのようにゴツ
ゴツしたグロテスクな物だった。こんな恐ろしい物、おぞましい
物”

「相手の男は増大手術をしています」
「やはりそうですか」

「奥さんは精神的にも相当弱られています。ご主人のご了解を頂け
れば心療内科の方でケアをしたいと思っています」
「心療内科?それで妻は今?」
「麻酔でまだ眠られています。あと3時間位は目が覚めないと思い
ます」
「心療内科の件は考えておきます。先生一つ教えて下さい。薬の影
響が無くなるにはどれ位の期間が必要ですか?」
「これ程の例は見た事がありません。正直なところ解りません。一
週間なのか、一ヶ月なのか。目が覚めればお話になってあげませんか?」
「いや、今私から出る言葉は矢のような事しかありません。会うつ
もりはありません」
「そうですか。その方がいいかも知れませんね」

本当は妻には言いたい事、聞きたい事、一杯あります。妻がこんな
状態では言う事が出来ません。ジレンマに陥ります。

それにしても憎いのは佐伯です。私の手で社会的に葬ってやりた
い。しかし所長の話では私が手を下さずとも、もう一人の依頼の結
果で社会的立場が無くなってしまうのです。それが悔しいのです。
私は私の材料で佐伯を潰したいのです。私の足は自然と所長の所に
向かいます。

「病院に行って来ました」
「奥さんの様子は?」
「眠っています」

病院での検査結果を話します。

「酷いもんだ。それでは未だ奥さんと話していないんだね?」
「ええ、未だです。暫くは話せません」
「そうだな」
「佐伯を潰す方法が見つからない。私でなくとも、もう一つの方で
勝手に潰れてしまう。自分の手で潰したかった」
「あんな男は誰が潰してもいい。君のその気持ちを佐伯にぶつけれ
ばいい。奴のダメージは倍増する」
CR 11/17(土) 21:10:37 No.20071117211037 削除
自分の思いを聞いてもらうとある程度気持ちが治まります。まだ3
時、決心がつかぬまま佐伯のマンションへと向かいます。途中電話
をします。

「宮下だ。居るようだな。今から行く」

豪華なマンションです。この近郊一番と言って良いでしょう。金回
りの良いのが解ります。玄関を開けた時から佐伯の態度は卑屈です。

「大会社の常務ともなると、さすがいい所に住んでるんだな」
「ご主人、本当に申し訳ない。ほんの出来心で、洋子と、いや奥さ
んと気が合ってしまって」
「何が出来心だ、何が気が合っただ。人の女房を名前で呼ぶな」
「すまん。しかしあれが初めてだったんだ。月曜日が初めてだったんだ」

佐伯は足掻きます。

「違うな。妻から聞いた。初めて大阪に出張した時から続いていたんだな」
「いや、違う」
「いい加減に認めたらどうなんだ」
「・・・・・」
「どうする。民事告訴してもいいぞ。弁護士を立てるか」
「慰謝料を払ってもいい」
「払ってもいいとはどう言う事なんだ。俺は慰謝料で済ませる積も
りは無い」

この時、佐伯は身辺調査の事は知りません。専務の妹との婚姻がそ
のまま進むものだと思っているのです。出来るだけ穏便に済ませた
い、慰謝料で済ませたいと思っているのです。

「妻は今入院している。お前のお陰でな。酷い体にしてくれたな。
頭も体もぼろぼろだ。今は眠りっぱなしだ。告訴する時は医者の診
断書も添える。覚悟しておくんだな」

こんな事で民事告訴出切るかどうかは知りません。出来たとしても
妻の診断書まで世間に晒す訳にはいきません、妻をそこまでは引き
ずり出せません。

私が強く出ると佐伯の態度が変わります。

「洋子は食事に誘っただけで、俺の唾を飲んだぞ。よほど飢えるて
いたんだな」
「うるさい。かたをつけてやる」

『佐伯には言いたい事と言った。何れ片がつくだろう。問題は妻だ』

妻の入院中には話せません。退院してからにしようと思います。妻
ももう目が覚めた頃でしょう。妻に会ってみる事にします。
CR 11/18(日) 09:32:14 No.20071118093214 削除
担当医に呼び止められます。

「宮下さん、心療内科はどうされますか?」
「入院の必要があるのですか?」
「今の状態を含めて後3日必要です。その後は通院になります」
「水曜日の退院と言う事ですね?」
「そうです」
「お願いします」
「奥さんは起きられています。会われますか?」
「会っていきます。何号室ですか」
「案内します」

随分妻を見ていない気がしますが、入院してからまだ2日しか経っ
ていません。顔が青白く、若干頬もこけたようです。上掛けに覆わ
れた体も細くなったようです。

「あ、貴方。御免なさい、許して下さい」

只、泣くばかりです。後は言葉になりません。

言いたい事、聞きたい事が山ほどあります。死ぬほど妻を言葉で責
めてやりたいのです。それが出来ないのです。じっと妻を見つめます。

「飯は食べられるのか?」
「はい、食べています」

相手が病人だと思うとこんな言葉しか出てきません。

『早く元気になれ。俺に何か反論しろ、言い訳しろ。佐伯の方が良
かったと言え』

心の中で毒づいています。妻が反論すれば私は言い返せるのです。
言いたい事が言えるのです。妻を眺めているだけではしょうがあり
ません。

「これで帰る。来れれば又来る」

背中に妻の痛いほどの視線を感じながら帰ります。

日曜日は何ほどの事もなく過ぎます。

月曜日、出社しますと松下さんが既にお茶の用意をしています。

「社長、お早う御座います。はい朝御飯」

私の目を真っ直ぐにみて言うのです。私の方が目を逸らしてしまい
ます。味噌汁とお握りを頂きます。

「ここに今日の予定があります。書類は纏めておきました」

小さな会社です。予定を作るほどの事もありません。書類も自分で
纏められます。

「僕の仕事を取らないで欲しい。する事がなくなる」
「社長は人と会うと言う大事な仕事があります。そっちにエネルギ
ーを使って下さい」

その通りです。特別な技術も無く会社を切り回すには人と人との繋
がりしかないのです。信頼関係を構築するには膨大な時間が必要で
す。しかし壊れるのは一瞬です。小さな隙間からあっと言う間に崩
れてしまいます。夫婦のそれもしかりです。
CR 11/19(月) 12:14:12 No.20071119121412 削除
火曜日の夕刻、所長から電話があります。

「今日午前中に報告書を依頼人に渡した。控えを君にも渡そう」

5時になり所長の所に伺います。

「取引関係の方はここで見るだけにして欲しい。君に了解を貰わな
いで悪かったが、奥さんの事も報告書に入っている。これだけを外
す訳にはいかなった」
「解っています。問題ありません」
「佐伯を会社としてどうするか正式処分がでるまで、まだ時間が掛
かるだろう。特に取引関係は会社としての裏付け調査も必要な事だ
しな。それまでは佐伯を今まで通り出社させるようだ」

私にも2冊の控えをくれます。身辺調査には興味はありません。も
う一冊の取引関係の報告書を見ます。表紙に何々殿と依頼人の名前
が書かれています。やはりそうです、佐伯の会社です。社長である
叔父が依頼したのです。佐伯は長く関西地区の購買総責任者を勤め
ています。業者から長年に渡り金銭の供与があったのです、それも
大阪センターの建設が決まってからその金額は飛躍的に伸びています。

「多少の金額なら会社も目を瞑ったのだろう。この金額は目を瞑れ
る金額では無い。あの社長は温情派だ。刑事告訴はしまい。またそ
れは影響が大きすぎる。最大で佐伯の馘首。しかしそれも無いだろ
う。どこか佐伯の息の掛かっていない関連会社に職を見つける事に
なるだろう。勿論、専務の妹との結婚話はなくなるな」
「しかし、そんな調査が民間で良く出来たものだ」
「私は検察上がりだ。悪事を叩く時にはコネが使える。彼らも自分
達の組織だけでは拾いきれない情報もある。民間に協力者を欲しが
っている。私がその一人と言うわけだ。彼らが刑事事件になると思
えば彼らがやるだろうし、そうでなければ情報だけくれる。今回は
情報だけくれたと言う訳だ。その後、刑事告訴するかどうかは会社
の判断だ」
「そうですか、それにしても会社内での佐伯の処遇をどうして山岡
さんはそんなに詳しく?」
「あそこの社長は大学の後輩だ。今も酒飲み友達だ」
「そうだったのですか」

これでは私の出る幕はありません。私だけの材料では精々慰謝料が
関の山でしょう 悔しいですが、反面胸のつかえも降りるのです。

「今度は君の番だ。奥さんとはどうするんだね?」
「妻は今入院中です。今は何も話せません」
「何も話していないのかね?」
「入院する前に報告書を見せただけです。入院してからは何も」
「優しいんだな君は」
「いや、そうじゃない。自分の気持ちがまだ決まっていない」
「退院したら早く話し合った方がいい。遅くなればそれだけ怒りが
増幅してしまう」

家に帰った私は女性関係を含めた身上調査を読みます。複数の女性
と関係を持っていたようです。専務の妹と結婚話が出てからは清算
され関係はありません。佐伯が警戒しての事でしょう。妻との事も
書かれています。妻との関係だけが続いています。妻に余程執着が
あったのか、それとも妻は佐伯にとって便利のいい女だったのか。

水曜日、妻を迎えに病院に行きます。担当医と話します。

「ご主人、奥さんの心の中は後悔とご主人への懺悔の気持ちで一杯
です。それと・・・」

担当医は言いにくそうにしています。

「それと何ですか。言って下さい」
「相手の事がほんの少しですが、心の中に残っています。多分与え
られた快感のせいだと思います」
「余計な事は言わなくてもいい」

自分が聞いてその答えに怒っています。

「それともう一つ。奥さんは関連する言葉、態度一つで性衝動が起
きます。薬と行為の激しさの残影響だと思います。相当以前からこ
う言う状態だった筈です」

医者は事務的に言っているだけです。言葉を選んではいるのでしょ
うが、佐伯との行為の激しさが目に浮かび、私を叩きます。

「時間が解決してくれる筈です。それから当分の間は控えてください」
「何を?」
「つまり、あれです。性交です」
「そんなもの、するわけがない」

担当医にまで馬鹿にされているようです。怒りが湧いてきます。こ
の分なら妻に言いたい事も言えるかもしれません。
CR 11/20(火) 11:48:57 No.20071120114857 削除
病室に行きますと妻は退院の支度を済ませ椅子に腰を掛け窓から外
を眺めています。顔色はこの前見た時より少し赤味がさし、表情も
戻ってきているようです。

「迎えに来た」
「貴方、御免なさい」

妻は ”ご免なさい”以外の言葉を忘れてしまったように只一つこ
の言葉だけを何度も繰り返します。

『まあいい。話は家に落ち着いてからだ』

家に着きます。妻の入院中の荷物の整理も大したものではありませ
ん。ものの20分もあれば片付きます。妻がお茶を入れようとします。

「俺は要らない。ペットボトルが冷蔵庫にある。お前が飲みたきゃ
自分の分だけ入れろ」

妻の前ではどんどん嫌味な人間になってしまいます。

「聞きたい事が山ほどある。一つ一つ聞くから全て正直に答えてくれ」
「・・・・・」
「どうした。返事がないな。聞いているのか」
「聞いています」
「よし。佐伯とはいつからだ?初めて抱かれたのはいつだ?奴との
きっかけは何だ?」
「・・・・・」

暫く返事を待っていても妻は黙ったままです。答えられないのは解
っています。解っていても責めるのです。

「答えられないのか。お前の大好きな佐伯が初めて抱いてくれた日
を忘れたのか。大阪に初めて出張した日だろうが」
「・・・・・」
「違うのか。言ってみろ」

妻は黙っています。

「お前はこの4カ月で出張は30回以上してるな。その出張殆どに佐
伯が絡んでいる事は解っている。出張の他にもあるよな。お前たち
は新婚夫婦もびっくりする位愛し合ってるんだな」
「・・・・・」
「俺の事はすっかり忘れたか?佐伯にそんなに夢中か?」

「お前たちはどんな事をしていたんだ。俺には出来ない事もしてい
たんだろう。俺にはさせない事もさせていたんだろう」

答えられようも無い事ばかり聞いています。返事が無い事に腹を立
てています。返事があれば、あったで又腹が立つのでしょう。妻を
甚振る為だけに聞いているのです。黙って泣いているばかりの妻に
手を上げてします。頭を思いきり叩きます。妻はよろけて倒れま
す。倒れてうつ伏せになって泣き崩れています。一つの甚振りの
言葉か次の甚振りを呼びます。一度叩けばそれは二度、三度になっ
てしまいます。人は自分の言葉、行動に尚更激してしまうのです。

どんどん激していくのが解ります。話し合いの事はもう忘れていま
す。妻を責める、甚振る事が只一つの目的になってしまいます。
CR 11/20(火) 11:57:07 No.20071120115707 削除
「お前の会社には電話しておいた。お前が体調を崩して10日ほど休
むってな」
「どうしてそんな事を」
「お前は会社にまだ行くつもりなのか?どんな顔して行くんだ?こ
の事は一部の人しか知らないだろうが、社長以下トップの人は知っ
ている筈だ」
「何故そこまで」
「俺が言ったわけじゃない。佐伯は別件でも調べられていた。相当
数の女と関係していたようだし、取引関係とも色々あったそうだ。
あいつがどう処分されるのかは知らないがな」

女関係、取引関係の事をかいつまんで話してやります。妻は驚いて
います。落ちぶれるであろう佐伯の元に妻は二度とは行く事もない
だろうと、私の言葉はどんどん激してきます。

「お前の愛しい人を慰めに言ってやったらどうだ」
「愛しい人だなんて、そんな風には思っていません」
「よく言うな、お前は。愛しくなくて50回も60回もよく出きるな。
お前はただの淫乱女か」
「・・・・・」

「自分のオマンコを見た事があるのか」

私は手鏡を妻にぶつけるように放り投げます。

「それで眺めてみたらどうなんだ」

勿論、妻は見れる訳はありません。

「私、私知っていました。醜くなっているのを知っていました」
「知っていた?それでも止めなかったのか?そんなにあいつが良か
ったのか?」
「違います。好きではなかった。でも私の体が・・・」
「お前の体が求めたのか?同じ事だ」
「違います。でも寂しかった」
「何が寂しいだ。馬鹿かお前は。俺には出来なくっても、あいつに
は出来たんだろうが」
「貴方は私を抱いてくれない。いつも途中で止めてしまう」
「お前が許さなかったんじゃないか。触ってもだめ、舐めさせるの
は嫌、俺のを咥えるのはもっと嫌。全てお前が嫌がったんだ」
「私、貴方にそんな女だと思われるのが怖かったの。淫乱な女だと
思われるのが、怖かったの。もっと強引にして欲しかった」
「お前も勝手な事をよく言うな。好きな佐伯には出来たんだろうが」
「違います、好きではなかった」
「もういい。堂々巡りだ」

「結婚してからずっと思っていました。貴方はずっと遅かった。貴
方には外に女がいるって。それで私には冷たいんだって」
「外に女が居る?俺が冷たい?仕事で遅かったんだろうが。何処を
どう探せばそんな言葉が出てくるんだ。そりゃあ俺だって男だ。そ
れむきの女を抱いた事はある、台湾、中国で紹介された女を抱いた
事もある。それだけの事だ。お前みたいに不倫なんかした事はな
い。そう思ったんなら、どうして俺に聞かなかった」

”どうして俺に聞かなかった”

そう言った時、私自身も妻に聞けなかった事を思い出します。妻が
佐伯にA亭で食事を奢られ帰宅してバスルームで自慰をして、その
残り香を私が嗅いだ時。初めての大阪出張から帰った時。その後も
妻の異変に気づいてはいたのです。聞く機会はいくらでもあったの
です。私と妻は同じ種類の人間だったのです。

「佐伯から貴方と松下さんの写真を見せられた時、やっぱりと思っ
てしまったんです」
「それはお前の言い訳だ。佐伯に抱かれたいからそう思っただけだ」
「違います。以前から何度も何度も誘われました。ずっと断っていました」
「嘘をつけ。あいつは一度目からオッパイを触らせた、唾を飲ませ
たと言っていた」
「でも、でも最後までは」
「同じ事だ」
「御免なさい・・・、こんな私の体、壊してください」

妻は泣きじゃくりながら、走って体を壁にぶつけます。自分の拳
で、自分の顔を、乳房を、腰を打つのです。思わず妻を抱きとめます。

妻の言っている事が本当なのか言い訳なのか解りません。本当だと
すれば妻は20年間以上もそんな思いを抱いていたのです。

「こっちへ来い」

妻をバスルームに連れて行きます。

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