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北原夏美 四十路 初裏無修正

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−−−②後書きに代えて【完】

ビギニングⅡ最終章でも触れましたが、我が家は昨年、引越しを行いました。
その際、私が過去に出逢った女性達の想い出の品々がいくつか出てきたのです。
それらは写真や手紙であったり、当時良く聞いていたレコードであったり、と。

レコード以外は妻には見せる必要などまったく無い物ばかりです。
妻がそれを見たり読んだりすれば、あの時「ひとみ」が言ったように、妻は傷つくかも知れない。
そう思ったのです。

私はレコード類のみを残し、それらの一切を処分することにしました。
そしてその代わりに、私は彼女達との間に生まれたエピソードの一つ一つを書き留め、ネット上に保管しておこうと考えました。
そうしておけば、いつでも、どこからでも、そして好きな時に、また彼女達に会うことが出来ます。
私は妻の目を盗んでは彼女達のことを書き綴りました。

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当時の事を振り返る時、彼女達との間に生まれた小さなエピソードの一つ一つを鮮明に覚えているのなら、それはそのまま私の心の宝物なんだろうと思いました。
それが喜怒哀楽のどれに繋がる記憶であっても、やはり宝物であることには変わりはありません。
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ビギニングⅠの冒頭で書いた言葉です。

作品と言っても、私には小説としての体裁を整えることなどできません。
私が書き起こしたものは、彼女達の事を忘れないための単なる覚書きになってしまいました。

彼女達との出会いや別れのシーンばかりが思い起こされ、結果として、自分が想い出しては切なくなるエピソードばかりを羅列することになってしまいました。


たまに、ネットなどで彼女達と同名の名前の方を見かけると、その方の顔や声、性格まで手に取るように解るような気がします。
もちろん、錯覚に決まっていますが。

そんな私にとって一番辛かったのは彼女達の名前を仮名にすることでした。
音感が変わると、まったく別な人のように思えてくるからです。

私は音は変えずに文字だけを置き替えることにしました。

やがてそこに、彼女達が姿を現しました。


「なぁ、覚えてるか? これ… 君のことを書いてみたんだ」


その言葉を伝えたい人が、私には居ます。
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最終章①そして真由美へ

現在の妻、真由美も、私に二人の子供が居ることは知っています。
そのことを知っているのは、私と真理子、そして真由美とその両親、おそらくその五人だけでしょう。

真由美とは見合い結婚ですが(厳密に言うと少し違うかも知れませんが)、彼女には最初にその事実を話しておきました。

「子供達のこと、気にならない?」
「あぁ…もう忘れる事にしたんだ」
「子供達のこと考えると、少し可哀そう…」
「俺は鈍感で冷たい人間なんだ。
 こんなのがあの子達の父親でいいはずがない。
 あの子達だけじゃない。
 俺はきっと何人も哀しませる事を繰り返して来た…。
 君の事も幸せにしてあげられないかも知れない…」

この言葉を彼女がどう受け留めたのか、それは今でも判りません。
彼女はその日のうちに私に子供が居ることを御両親に伝えたのだと思います。
見合いの結果は破談でした。
バツイチなのはともかく、籍に入っていないとは言え二人の子供が居ると判れば…。
真由美の両親の判断は当然だったと思います。

ただ、真由美本人の判断は違いました。
彼女はその後も何度か連絡をくれるようになりました。
共に食事をしては他愛のない会話を繰り返し、やがて私と彼女は結ばれました。
彼女は私のマンションを度々訪れては私の生活を何かと支えてくれるようになりました。
週末などに彼女が泊まる機会が増え、やがてある日を境に彼女は家に帰らなくなりました。
彼女を抱いた後、その日も帰るそぶりを見せないので聞いてみたのです。

「今夜も帰らなくていいのか?」
「帰った方がいいの?」
「いや。 君を帰したいと思ったことなど一度も無い」
「でしょ? 親にはもう貴方と暮らすと言ってあるの」
「許してくれた?」
「ううん聞いてない。 手紙を置いてきただけだから」
「それって…家出って言うんじゃないのか(汗)」
「略奪? 強いて言うなら、誘拐監禁?(笑)」

笑い事では有りませんでした。
彼女は全てを捨てて家を飛び出してしまっていたのです。

私は翌日、彼女には黙って彼女の実家を訪ねました。
玄関先に立ったまま、ただもう頭を下げるしかありませんでした。
応対に出た彼女の母親に続いて、彼女の父親も玄関先に現われました。

「この度は誠に申し訳ありません」
「君一人か? 真由美はどうした」
「来てはいません。私一人です」
「とにかく娘を連れて来なさい」
「それは…、できません」
「何を言ってる。 悪いと思っているなら、とにかく一度娘を帰しなさい。 話はそれからだ」
「いえ、帰せません。 今日は許して貰うことだけをお願いに来ました」
「あの子は大事な一人娘だ。 君なんぞにやるわけにはいかん」
「私のことを許して貰おうとは思っていません。 今日は真由美さんのしたことを許して貰いに来ました」
「何? 君は自分の事は棚に上げて真由美のために来たとでも言うつもりか。 そんなもの順序が逆だろう」
「私のせいで彼女はお二人にご心配をお掛けしました。 彼女がしたことを許して貰えないと私は彼女に合わせる顔がありません」
「私達の気持ちなど二の次かっ! 娘を許そうが許すまいが君には関係無いことだ」
「私が彼女にそうしろと言いました。彼女は…」
「もう、いいっ! 君の話など聞きたくも無いっ! 帰ってくれ!」
「はい。 でも…また来ます」
「ふざけるなっ!」

『美由さん!』

立ち去る時、彼女の母親に呼び止められました。

「ね、あの子元気?」
「はい」
「貴方もバカね、わざわざ主人を怒らせに来るなんて(笑)」
「すみません」
「一人で来たこと、あの子には内緒なんでしょ?」
「はい」
「貴方…私達のことが気になるの? 真由美と二人で楽しく暮らせばいいのに」
「彼女には、お二人に心配をお掛けするような真似はして欲しく無いと思いました」
「嬉しいことを言ってくれるのね(笑)」
「彼女がお二人と仲たがいすることになれば辛くなります」
「あの子が知ったら喜ぶわ。 私もね(笑)」

彼女の母親は、そのまま私と並んで歩き始めました。

「でも、いいの?」
「はい?」
「わかるでしょ? あの子は言い出したら聞かない子。 貴方もきっと苦労するわ(笑)」
「そうでしょうか。 自分は彼女と居るとホッとします」
「そう?(笑) 幸せにしてあげてね」
「大切にします」

「ね、あの子…、貴方に父親のこと何か言ってた?」
「いえ、別に…」
「そう…。 あの子がうちを飛び出したのは、たぶん私のせいだと思うの」
「え?」
「あの子、本当の父親の顔を知らないの。 貴方がその父親に良く似ているって最初会った時、私が言ったから…たぶんそれで…」

「あの子の本当の父親は、あの子が小さい頃に死んだわ。
 それからは女手一つで育てて…。
 今の主人とは、あの子が大人になってから再婚したの。

 あの子が主人のことをお父さんと呼んだ事など一度も無いわ。
 いつも他人行儀。

 主人にも…あの子にも…可愛そうなことをしたわ…』
「そう…だったんですか…」

「貴方…顔立ちとか、物腰とか…あの子の実の父親にとても良く似ているわ…。
 今日みたいに後先考え無いところも(笑)」
「すみません」
「謝ることじゃ無いわ(笑)」

「あの子ね。
 置き手紙に貴方のことばかり書いて行った…。

 貴方、あの子に車道側を歩かせたこと無いんですって?(笑)
 最初は何で時々体の位置を入れ替えるのか判らなかったらしいわ(笑)
 お年寄りに席を譲るのも自然に出来る人だって。
 電車の中でいきなり腕を取られて一緒に立たされたって(笑)

 貴方とテーマパークに遊びに行った時のことも書いてあった。
 入り口であの子が見知らぬ奥さんから二人分の優待券を貰ったことがあったでしょ?
 あの子がその奥さんに何か買ってお礼をしようとしたら貴方に止められたって。
 自分がされて嬉しいと思った事は別な人に違う形で返していけばいいって言われたって。

 あの子、貴方のそんなところが、とても好きになったみたい。
 貴方が何があっても自分を守ってくれる人だと思ったんですって(笑)

 今日…私もそう思ったわ…」

彼女は立ち止まり、そして私の顔を見つめました。

「あの子ね…貴方に父親の姿を探しているんだと思うの」

そして帯止めから何かを外しました。

「これ…あの子の父親の形見の品。 貴方から渡してあげて…」

それは小さな、犬を模した象牙の根付でした。
彼女は私の手を取るとそれを私に委ねました。

私の手はすべてを許してくれるような暖かい手に包まれました。

「ね、あの子の為に長生きできる? それだけは約束して」

答えようのない答えを求められ、私はただ黙って頷くしかありませんでした。

「あの子に、たまには顔を出しなさいと伝えてね。 主人のことは私が何とかしてあげるから(笑)」
「はい(笑)」

後日、彼女を伴い再び訪問することになりました。
彼女と二人、心配を掛けたことだけは御両親には謝っておくべきだと思ったのです。

彼女は、何時まで経っても顔を出さない継父の部屋に、私を制すと一人で入って行きました。
しばらくして出てくると自分の部屋から当面必要な小物類を私の車に運び込みました。
彼女は母親を抱擁し「心配しないで」と言うと、私に「さ、帰ろ」と言いました。
母親も私に頷きました。
私は一礼すると彼女の家を後にしました。

「もっとゆっくりしてこなくて良かったのか?」
「うん。 お父さんにお母さんのこと頼んでおいたから。 二人には私の方がお邪魔虫なの(笑)」
「そっか。 君はご両親にとってお邪魔虫か(笑) それなら遠慮なく貰っておこう(笑)」
「そうよ? 遠慮なく貰って(笑)」

その夜遅く、私は彼女の継父から電話を受けました。
その電話は、真由美の父だと名乗ったきり無言の電話になりました。

やがて重い口を開くと、

『真由美が…今日…』

そう言ったきり、また長い長い沈黙に戻りました。
やがて再び言葉は繋がっていきました。

「真由美が私のことを…初めて…お父さん…と…呼ん…で………れた。…私に、お母さんを宜しく……と…」

もうその声は言葉にはなってはいませんでした。

(グッ…ウウッ…)

受話器から父親の嗚咽と共にその心情が溢れ出してきました。

私はただ受話器を強く握り締め、ええ、ええ、と相づちを打つことしかできませんでした。

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彼女が両親との関係を修復できたとはいえ、一度は私の為にすべてを捨てた事実は私の心に強く残りました。
その時から私の新たな【ビギニング】という物語が始まりました。
彼女のとった行動が、それまでの私の価値観を根底から覆してしまったからです。

私の為に全てを捨てた彼女に、私は、私の持つ全てのものを委ねることを決めました。
私の生命保険の受取人を全て彼女の名前に書き換えました。
そして、マンションを売り払い、戸建住宅を購入することを決めました。
家も土地も全て彼女の名義にして、可能ならいずれはそこに彼女のご両親を呼び寄せようと思ったのです。
彼女の持ち家なら両親も気兼ねをしないで済むはずです。
結果として彼女の両親は、まだまだ二人だけで暮らしなさいと言いながらも私のそんな判断をとても喜んでくれました。

信じられないでしょうが、未だに彼女とは式どころか婚姻届すら出していません。
私は、結婚とは心と体が重なり合い、喜怒哀楽のすべてを共感するところから始まるものだと信じています。
私は過去の結婚の失敗から、式だとか届出だとかの形式に囚われる無意味さを痛感していました。
もちろん、彼女が望むなら印鑑などいくらでも突くつもりでいましたが、不思議なことに彼女自身も彼女の両親も、それについては何も求めることはありませんでした。

彼女は言いました。

「ウチの親、この家の名義の一件以来、貴方のすることを無条件に信じてるみたい。婚姻届け出さないのも何か理由があるんだろって(笑)」

その通りでした。
私は、現在の会社を退職したその時には、一人娘である彼女の戸籍に入ろうと考えていたのです。
一人娘を私に嫁がせた彼女の両親を安心させるためにも、是非そうしたいと考えていたからです。
それなりの役職に着いてしまった現在、今の制度が変わり夫婦別姓でも認められれば話は別ですが、それまでは今の名前のままで働きたいと思っていました。

昨年、私達二人は家の買い替えを行いました。
いわゆる二世帯住宅というやつです。
どうせ彼女の両親を迎えるなら、より暮らしやすい環境を整えてあげたい。そう思ったからです。

二人の関係に何かあれば、私が体一つで出て行けば済む。
そんな私のスタンスは相変わらずです。
もちろん、そんなことに成らないよう気を付けたいと思っていますが、とにかく彼女には、これ以上何も失わせたくはないのです。

現在の妻、真由美との生活は13年にも及び、過去に出逢った他のどの女性よりも長い付き合いになりました。
婚姻届も出していないため、彼女は法的に見ても、とても近くて遠い存在です。
彼女のことは全て判っているようで、実のところ全然掴めていません。
とにかく世間から見れば不思議な関係が続いています。
解かっているのは私が彼女を深く愛している。 ただそのことだけです。

気付かれた方も多いと思いますが、私のペンネーム【美由 真】は、そんな愛する妻の名前【真由美】をもじったものです。
彼女は、私にいつも新鮮な驚きを提供してくれています。
良い意味で、私を打ちのめしてくれます。
そんな彼女とのことは、また別の機会にお話することになると思いますが、彼女は私の過去の全てを包み込むようにして、私を支え続けてくれました。

「パパ(最近、妻は私をそう呼びます。 そのあたりの経緯はまた別の機会に)と一緒じゃなきゃやだ」

いつも彼女が口癖のように言う言葉は、本当は私から彼女に一番伝えたい言葉でもあるのです。

(君と共にでなければ、これから先の人生など何の意味も無い…)

私のこんな想いは、これから先も彼女は耳にすることも無ければ、目にすることも無いと思います。
彼女にとっては、そんなことは当たり前の話で、何を今さらと笑われるだけだと思うからです。
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−−−④真理子の選んだ道

彼女はすでに自身のマンションを引き払い、帰国のたびに私のマンションで過ごすようになりました。

一年間の研修期間が終了すると同時に、彼女は再び海外へと旅立つ事になってしまいました。
語学力と管理能力を買われ、本社と海外支社との連絡調整部門に配属されてしまったのです。

二人の関係に何も変化はありませんでしたが、彼女は仕事に忙殺され1年に一度くらいしか帰国しなくなりました。
たまに交わす国際電話での会話でも、結婚については何も口にしなくなりました。
今の二人の情況では、それが無理だと判っていたからだと思います。

そんな関係が、さらに三年くらい続いた頃、彼女から現地に恋人が出来たとメールが届きました。
彼女は国際結婚をし現地に永住する道を選んだのです。

彼女を失うことに一抹の寂しさはありましたが、彼女が会社を辞めない限り、同居を前提とした結婚など望むべくも無いと半ば諦めてもいたのです。
私はそれも彼女にふさわしい生き方だと思いました。

後日、彼女から手紙が届きました。
中から彼女の子供達の写真が出てきました。
彼女に似て可愛らしい子供達だなと、その時は単純にそう思いました。

-------------------------------------------------------------------
真さんへ。

貴方のことだから私に恋人ができたと言っても、引き止めもしなければ怒る事もないと思いました。
だから安心してこちらで結婚する事を決める事ができました。
彼は私の二人の子供達を自分の子のように可愛がり、そして愛してくれています。

来年になったら二人の子供を連れて一度帰国するつもり。
その時は子供達に逢ってくれるかな。

ね、写真を見て!
お兄ちゃんの方が真太郎、妹の方は真美という名前にしたの。

真太郎はやんちゃばかりして私を困らせるのよ?
でもね、真美は私に似て、おしとやかでとても美人なの!
そうそう、真太郎ったらね、真美が虐められたり泣かされたりすると
飛んで行って助けてあげているわ。まだちっちゃいくせにね。
そんな所は真さんそっくり。わかるかなぁ。

私ね、真太郎に恋しちゃってるかも知れない。二度目の恋。
真太郎がする事や考えている事、手に取るように解かるでしょ?
だから、そんなところに貴方の面影を見つけるのがとても楽しいの。

真美は、んー、きっと貴方が惚れるような女になると思う。
甘えん坊で泣き虫さんだからきっと貴方はほっとけないと思うわ。
いつもそばに居て守って上げたくなる。そんな子。

本当にごめんね。貴方の子供が欲しいと思ったの。
私が貴方に黙って子供達を産み、育てた事は許してくれないかも知れない。
だけど、この子達には何の罪も無いの。
今度逢う時は私の代りに、力いっぱいこの子達を抱き締めてあげてね。
そして、どうか許してあげてね。

子供達のこと黙っていて本当にごめんなさい。

追伸
貴方の部屋の鍵、同封しておきます。
もしも私を許してくれるなら、その時は扉を開け子供達に逢ってください。

                        貴方の妻 真理子
-------------------------------------------------------------------

私は写真に写る二人の子供達の顔すら滲んで見えなくなっていました。
鍵なんていくらでも作ってやるさ。
今すぐ飛んでいって抱き締めてあげたい。

そうだ…今ならまだ…起きているかも知れない!

私は差出人の国際電話ダイアルナンバーを押し始めました。

-------------------------------------------------------------------

私の子供達とは、彼女が日本に里帰りした時に逢う事ができました。
5歳と4歳の可愛い盛りでした。
抱き上げ、抱き締め、頬擦りし…そして男泣きに泣きました。
自分と血が繋がっている者が居る…そう考えただけで訳も無く涙が溢れてきたのです。

そしてもう…、いつ死んでも悔いは無いと思いました。

子供達は私に抱かれキョトンとしていましたが、人見知りしない子達で、すぐに私と仲良くしてくれました。

彼女はとても幸せだと言っていました。
彼女は、夫には『本当の父親は死んでしまった』と伝え、子供達にそれを聞かれれば同様に答えるつもりだと。
妊娠できるうちに子供が欲しかったのだと言っていました。

そんな彼女ほどの勇気も無く、私がしたことと言えば、いくつかのおもちゃを買い与え、二十歳になったら好きに遣って貰いたいと子供達名義の郵便貯金の口座を開き積み立てを始めただけです。
彼女は、それを快く受け取ってくれました。
ほんの少しですが肩の荷が下りた気がしました。

これまでを読まれた方は、私がいつも垂れ流しのように思われるでしょうが、登場する女性達とのセックスは本人から求められたり安全日だと言われない限り、膣外射精ばかりです。
コンドームは殆ど遣いませんでしたが、妊娠させてしまったのは後にも先にも真理子一人です。
彼女から安全日だからと言われ、結局は妊娠させてしまったのです。
今はそれを感謝していますが。

彼女が初回の妊娠をし、その後一年と数ヶ月ほどして再び逢った時、お恥ずかしい話ですが彼女が妊娠、出産を経た後だとはまったく気付きませんでした。
今にして思えば、少しふっくらとした印象があったかも知れません。
俗に言う、ゆるくなるとか体型が崩れるとかいう所もありませんでした。
というか、久しぶりに会えた嬉しさで、そんなことを疑問に思う事ことすらありませんでした。

そして、彼女は二人目を身篭りました。彼女を抱いたのもその時が最後になりました。

子供達とは、その後二回ほど遠くから見つめるだけで直接会う事はしませんでした。
物心付く前に会う事を止めなければいけないと思ったからです。

彼等は継父の元で幸せそうでした。
それでいい。
それで充分だと思いました。

何かあればきっと真理子の方から何か言ってきてくれる。
自分が何かできることがあるとしたら、きっとその時だろう…。

そう思って自分の気持ちに整理を付けました。
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−−−③転機

そんな私達の間にも転機が訪れました。
真理子が女子総合職一期生として抜擢されたのです。
彼女には一年間の海外研修が課せられました。

「引き止めてはくれないの? 貴方が会社を辞めろと言うなら…私…そうする」
「君はもっと高いところを目指すべきだ。 能力もある。 きっといい管理職になれる」
「私、そんなもの望んでいない。 ただ貴方と一年も離れて暮らすのが嫌なだけなの」
「君の為だけじゃない。 君の後に続く女子社員の為にも頑張って欲しいと思っているんだ」
「貴方はそう言うと思った。 いつも仕事をする上では男も女も関係ないって言ってたものね」
「君は女子社員の希望の星になるかも知れない。
 仮に俺を飛び越し上司に納まったとしても、君が上司なら俺は喜んで最良の部下になる道を選ぶ。
 嘘じゃ無い」

本音でした。
資質さえあれば学歴、性別を問わずどんどん登用すべきだというのが私の持論だったからです。
常日頃から、柔軟な発想も出来ないボンクラ男性社員など何人居ても何の足しにもならない事を嫌と言うほど見てきました。
これからの社会には彼女のような有能な女性の力が欠かせなくなる。
そう信じていたからです。

「俺とのことなど後回しでいいんだ…。 君にこのチャンスを潰して欲しくない」

彼女は深い溜め息つくと私の体の上に乗ってきました。

「ねぇ…今夜はもっとしてくれる?
 真理子の唇も…あそこも…お尻も全部壊れちゃうくらい…愛して欲しいの…」


彼女は研修の準備に忙殺されたのか、その日を境に私のマンションを訪れる事も無くなりました。
数日後には海外研修に旅立つ彼女の為に、同僚、友人、後輩達がささやかな壮行会を行ってくれる事になりました。

「え? 俺も?」
「真理ちゃんが是非にって。 いいじゃないですか、私達ともまんざら知らない仲じゃないし」
「いや、でも…」
「はい、美由さん参加っと。 じゃ場所と時間、決まったら連絡しまーす」

女性ばかりの壮行会に何故か私も招待されることになりました。
私は幹事の子に彼女への花束を預けると一番隅の席で会の進行の邪魔にならないことだけを心がけ座っていました。

会は和やかに進みました。
彼女は一人一人にお酌しながらお礼を述べて回っていました。
ただ、私の所のテーブルだけはお酌をしに来る事はありませんでした。
私を明らかに避けているのがわかります。
最初から最後まで、彼女には無視されっぱなしでした。

最後に彼女はたくさんの花束を後輩達から受け取り涙ぐんでいました。
彼女がスピーチを求められました。

彼女は少し酔ってるようでした。

「最後になりましたが私が上級職を目指す事を一番に賛成し、私の背中を押してくれた美由さん」
「わぁー、美由さん、立って! 立って!」

どこからかヤジが飛びました。
私は雰囲気に飲まれ立ち上がりました。

「私は貴方を恨んでいます」

てっきりお礼の言葉が続くと思っていた周囲は爆笑に包まれました。

「貴方が引き止めてくれれば私がこの研修に参加する事はありませんでした。
 まだ、間に合います。 引き止めてはくれませんか?
 私を今すぐお嫁さんに欲しいと言ってはくれませんか?」

皆が一斉に私を見ました。
私と彼女の関係を、その時始めて知った子ばかりのようでした。

「真理子…さん。
 俺は君が女性初の管理職になることを心から望んでいる。
 君にはその能力が充分ある。 そして君ならきっと乗り切れる。
 怪我や病気に気を付けて…研修が終わったらまた元気な姿を見せて欲しい」

「そう言うと思ったっ! 美由真のバカっ!」

彼女が子供のように泣きじゃくり始めました。

「さ、最後まで聞いてくれっ!
 どうしても無理だったり…嫌だと思ったら…その時は俺の所に帰って来てくれ。
 いつまでも待ってる。
 会社が必要とする以上に…俺には君が必要なんだっ!」

誰かが私の背中を押しました。
私はイスを避けながら彼女のそばまで進みました。

「何で今すぐと言ってくれないの?(泣) 貴方なんて最っ低…」

そう言うと私に倒れ掛かってきました。

遅かれ早かれ同じことでした。
彼女との関係が皆に知れるのは構わないと思っていましたが、まさかこんな時に、こんな所でとは思っても見なかった私は、ただただ狼狽していました。

ありがたい事に同席した子達は、私と真理子の関係を好意的に受け止めてくれたようでした。
ささやかな壮行会は泣き上戸の真理子を私が抱いて受け留めた所でお開きにしてくれました。

「それじゃ美由さん、真理ちゃんを宜しくね?」
「気を遣わせてすまん。 彼女は送って行く」

私はタクシーを停め彼女を乗せました。

「あなたがお嫁さんにしてくれるって言った事、私、信じてるから。 浮気なんかしたら承知しないから…」
「君がマンションの合鍵を持っているうちは浮気などしない(笑)」
「ん、わかった…。 それじゃ…貴方のマンションに…連れ…てって…」

タクシーの中で彼女はそう言うと、私の膝を枕に眠ってしまいました。

出発までの三日間を私のマンションで過ごし、彼女は異国へと旅立ちました。

私には絶対に見送って欲しくないと、そう言い残して。
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−−−②Mの素質

当初は週末の土日休みだけを利用して私の元へ通っていた真理子も、私がマンションの合鍵を渡した以降は毎晩のように部屋を訪れるようになっていました。
やがて彼女が自分のマンションに帰る回数が減り、半分同棲のような生活が始まりました。

当時は現在のように携帯電話や社内LAN、インターネットも有りませんでした。
私はワークステーション間の簡単なメッセージ交換機能を真理子に教え、社内の誰一人にも気付かれる事の無い交際を続けました。

会社での清楚でつつましいイメージとは裏腹に、彼女はベッドでは一変し淫靡で激しいセックスを求めてきました。
私から由香里とのセックスについてあれこれ聞いては、それに対抗するようにして私を喜ばせようとするのです。
私との肉体関係が深まるにつれ、その瞳にも淫靡な光が宿り、いつのまにか大人の色気を漂わせるようになっていました。

「最近、色っぽくなったね。 誰かいい人いるんじゃない?」

今ならセクハラで訴えられるような言葉も、ちょくちょく掛けられるようになったと彼女は照れていました。

彼女は私が望む事は何でもしてくれる女性でした。
確か、社内で私が由香里とセックスしていたことを告白した翌日のことだったかと思います。
場所と時間を指定したメッセージが届きました。

『Message(XX)ヨサンハ¥3,021,500ニナリマシタ』
『Message(XX)リョウカイデス』

暗号といっても単純なもので、メッセージに含まれる数字の先頭から何桁かが場所、最後の4桁は時間を表します。
私は15:00ちょうどの休憩時間に三階の302会議室に向かいました。

『使用中』

私は構わず扉を開け中に入りました。
会議卓の向こう側に彼女は何かの資料を持ち立っていました。
テーブルの上にはコーヒーが用意されていました。

私は部屋に入ると後ろ手にドアをロックしました。

「いいのか? こんなトコ使って」
「大丈夫。 今日は予約が入っていないこと確認してあるから…。 ね…見て…」

彼女はタイトスカートの裾を持ち上げました。
黒いガーターベルトが覗きました。さらに裾を持ち上げると綺麗に剃られた割れ目が露出しました。
タイトスカートを完全に捲り上げイスに腰掛けると両足を肘掛の上に乗せました。
そして両手を使い、その花びらを押し広げました。

「舐めて…」

私は真理子の前に跪くと花びらを頬張りました。
そこはすでにヌルヌルと濡れています。
私は舌を陰唇の中央部に差し入れました。

「あぁ…いい…。 あ、そんなに奥まで…あ…ん…」

彼女はベストとブラウスのボタンを外し乳房を露出しました。

「ね… こっちも食べて…」

私は硬く尖った先端を甘噛みしながら舌の先で転がし、やがてそれを頬張りました。

「あ…嫌…そんなに強く…
 ね… 貴方のも…食べたい…」

彼女は私が立ち上がるとベルトを緩めトランクスとともにズボンを降ろしました。
そして私の屹立したペニスを根元から先端へと舐め上げました。
濡れた瞳は私の目から視線を外さないよう見上げています。
やがて先端部を唇で捉えると喉奥深くまで飲み込んでいきました。

(んっ…んっ…んっ…)
「もう…我慢できない…入れる…」

彼女はテーブルの上に浅く腰を掛けると、テーブルに後ろ手を突き、両ひざを高く持ち上げました。

「真理子を…いやらしく犯して…」

私は彼女の膣口にペニスの先端を押し当て、ゆっくりと埋没させていきました。
彼女は私の肩に両手を回し抱きつくようにして囁きました。

(今日は…真理子の○○○○に好きなだけ出して…)
(いいのか?)
(安全日…だから…)

彼女は手を口に当て声を漏らさないようにしています。
背徳感がさらに快感を呼んでいるようでした。
彼女は強く、弱く、深く、浅く、何度も逝き続けました。
私が射精感と共に思いっきり彼女の子宮を突き上げた時、彼女のそれが始まりました。

(あっ来るっ! 出ちゃうっ! 逝くっ! 来てっ! 逝くっ! 逝っ…くっ!)

『あっ! あぁぁぁっっっ!!!』

彼女は私の脈動を膣奥で捉えると、一際強く私の体を抱き締めながら絶叫しました。

私は慌てて彼女の口を塞ぎました。
私のペニスが激しく噴出している生暖かい液体を捉えています。
やがてそれは、私の下半身をも濡らしていきました。
太腿からズボンまでがおびただしい噴出物で濡れています。
彼女はやがて落ち着きを取り戻すと私の体を離しました。

「あっ大変っ! ごめんなさいっ! 何か拭く物…(汗)」

彼女は何処からかペーパータオルを一掴み持ってくると私のズボンを拭き始めました。

「ごめんなさい…(照)」
「今日はまた、一段と激しかったな(笑)」
「嫌っ! そんなこと言わないで(笑)」
「君のガーターベルト姿…。 凄い興奮した」
「貴方を喜ばせたくて…恥ずかしいけど買ってみたの。 気に入ってくれた?(照)」
「ああ、素敵だ。 これからはいつでもノーパンで居て欲しいな(笑)」
「貴方がそうしろと言うなら…」
「もう一度、剃っちゃった所を見せて。 このイスに片足を上げて…そう…指で開いて…」
「嫌…恥ずかしい…」
「綺麗だ、とても。 ホントに全部剃っちゃったのか(笑)」
「貴方はそれが好きだって…」
「じゃあ、今度はアナルで楽しませて貰おうかな。 君をもっと苛めてみたくなった(笑)」
「嫌… あんまり真理子を苛めないで…」

彼女のベストの襟元からノーブラの乳房を掴むと乳首を強めに摘みました。

「痛い?」
「ああ、嫌…。 でも… ジンジンきちゃう…」

真理子にはMの気がある…。
そしてそれは、私しか知らない彼女の秘密の部分、でした。

そう確信した時、私の性癖にも変化が現われました。
いわゆる衆人環視の中での露出などの恥辱行為は彼女と出逢って初めて体験できたことでした。
真理子を満員電車で痴漢達の『囲み』の中に放置したり、映画館の痴漢の餌食にしたこともあります。
彼女はその一つ一つに股間から愛液を滴らせながら応えていきました。
普段の彼女の持つ雰囲気と、痴態を演じる時のギャップが大きければ大きい程、私をよりいっそう興奮させてくれました。

私はただ、彼女の妊娠と性病への感染だけを心配していれば良かったのです。
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第四章①暴力の衝動

女性が結婚もせず7年も会社に居れば、いわゆる『お局さま』として扱われ、周りの女子社員からは浮いた存在になってしまうのが普通かも知れません。
ですが、私の部屋を訪れるようになった真理子の場合は少々違いました。

彼女は持ち前の聡明さで総務全般の業務に精通していました。
後輩の子達にも慕われ、彼女は常にその中心に居ました。
総務部全体を見回しても彼女無しには業務が立ち行かなくなるほど彼女は重用され、女子としてはめずらしく責任ある役職を与えられていたのです。
今で言う総合職の先駆け的存在でした。

私自身も社内行事であるスキーやキャンプの日程、予算の関係で彼女と二人で打合せをする機会は多かったのです。
当然のことながら彼女自身もそれらイベントには必ず参加し私をサポートしてくれました。
夜遅くまで打合せをした時などの帰りがけには共に食事をしたり自宅まで送り届けたことも何度かありました。
他の男性社員に比べれば、私は彼女とは一番親しい存在だったのかも知れません。

社内での言動を見る限りでは彼女の性格は由香里とはまったく正反対のものだったと言えます。
聡明でありながら奥ゆかしく、つつましい。
女房にするならおそらく一番と呼べるタイプでしょう。
ただ、女は少々足りないくらいでちょうどいいと思っている男達にとっては彼女の聡明さは男に引け目を感じさせ、近寄りがたい印象を与えてしまうようでした。

実際に話をすれば、冗談にも機知に富んだ受け答えをし、とても気さくな一面があるにも関わらず、女性ばかりの職場という環境のせいもあったかも知れません。
彼女に特定の相手が居るという噂は聞いたことがありませんでした。

由香里と婚約した数日後…だったかと思います。
彼女に因むちょっとした事件、というか出来事がありました。

その日も、彼女と秋季キャンプの日程について打合せを済ませた後、いつものように駅前の繁華街で食事を済ませ、私の車に向かいながら歩いてしました。
彼女はいつも半歩後ろをついて来る。
そんな子でした。

「あ、そうそう。 由香里と婚約したんですってね。 おめでとうございます(ペコリ)」
「あ、うん。 ありがと(照)」
「幸せにしてあげてくださいね? 彼女、同期で一番早く婚約したから、みんなも注目してるの(笑)」
「そ、そか。 責任重大か、俺」
「そうですよ、責任重大(笑) でも…ショックだったぁ」
「何が?」
「だって美由さん、女の子に興味無いって態度してたし、まさか会社の子と一緒になるなんて思っていなかったから」
「自分でもそう思ってる。 なんでこんなことになっちゃったのか不思議だ」
「私が一番チャンスが多かったのにな…。 ね、私にも美由さんみたいな人、現れるかな?」
「ぉぃぉぃ。 由香里といい、君といい…。 君ら、何か変だぞ。 何でそんなに俺のことが…」
「だって、元ファンクラブの一員だもん(笑) 恵美ちゃん入れてたった三人のファンクラブだったんだけど(笑)」
「何だそりゃ…しかも「元」かよ(苦笑) 君らの考えてるこた、良く解からん」
「悔しいけど相手が由香里じゃ仕方無いかなって。 で、ファンクラブも解散(笑)」
「君には俺なんかより、もっといい人が見つかるって」
「そうかなぁ…。 あ、嫌っ!」
「ど、どした?」
「お尻…掴まれた…」
「え? 触られたんじゃなくって、掴まれたぁ???」

私は、今にして思えば、どっちでも良いようなトンチンカンな質問をしていました。
見ると酔っ払い達が通り過ぎざまに彼女のお尻を握ったようです。

「いい女連れてるからって、道の真ん中でカッコつけて歩いてんじゃねえぞ、おい。 姉ちゃん、俺とオメコしよー。」

酔っ払い達は上機嫌のようです。 私は彼女の肩を抱えその場を立ち去ろうとしました。

「黙ってないで何とか言え、コラ」

そのうちの一人が私の腕を掴んできました。
私の腕を掴むその手を見つめながら、暴力の血が静かに沸騰するのが判りました。

(抑えろ…。 相手はたかが酔っ払いだ…)

「だいぶ酔っちゃってるようだし、それくらいにして勘弁してくれませんか」
「キャッ! やめてっ!」

別の男が酔いに任せ彼女の胸を揉みながら口を尖らせキスを迫っていました。
他の二人がそれを見て、はやし立てています。

(四人…か。 まったくサラリーマンっていう奴ぁ…)

『痛てっ!』

男のアゴを掌で押し上げ腕を払うと彼女にまとわり付く男の襟首を持ち、そのまま後へ引き倒しました。

『走れっ!』

私は彼女の腕を掴み引き寄せ、その体を抱えるようにして走り出しました。
近くの駐車場に停めてあった車に辿り着くと彼女を乗せエンジンをかけました。
男達に取り囲まれ余程怖い思いをしたのでしょう。
彼女は青ざめた顔をして涙ぐんでいました。

「大丈夫? ケガは無い?」
「怖かった!」

彼女が私に抱きついてきました。
体が小刻みに震えています。
私は彼女の背に手を添えました。

「ごめん。 怖い思いをさせてしまった。 俺がもっと気をつけていれば…」
「あ、ごめんなさい。 いえ、もう大丈夫です。 でも、驚いたぁ。 一時はどうなることかと思った」

彼女にやっと笑顔が戻りました。

(彼女を先に庇うべきだった…)

自分の状況判断の甘さを悔やみました。

(それにしても…)

私の怒りは収まりそうもありませんでした。
嫌がる真理子の尻や乳房を掴んだ事が許せなかった。
酒の勢いを借りて人の嫌がることを平気でする奴らが許せなかった。

「ごめん…ちょっと待ってて。 さっきの店に忘れ物をしたらしい。 取ってくる」
「あ、はい」

私は彼女の好きそうなジャンルのカセットをかけると上着を脱ぎ、先程の酔っ払い達が居た場所に戻りました。

酔っ払い達は相変わらず道行くアベックやら女性にちょっかいをかけては気勢を上げていました。
私は一番後ろを歩いている、先ほど彼女に抱きついていた男の後襟を掴むと、吊り上げるようにして横の路地に押し込みました。
そして、その男の首を掴むと腕を伸ばしたままコンクリートの壁に押し付けました。

「いい加減にしとけ。 お前らもどっかのサラリーマンだろう。 もうこれ以上他人に迷惑を掛けるな。 俺はお前らのように酒を飲むと気が大きくなるような奴らが一番嫌いなんだ」

男は首を掴んだ手を振り解こうと必死で私の腕を掴みもがいています。
私は腕を取ろうとした男の手首を掴むとそのまま外側に捻り上げました。

「ったたた!」
「わかったか? これに懲りたら今日は大人しく帰れ。 いいか」

男は一転して怯えた目で私を見つめるとコクコクッと頷きました。

「おーぃ、小便かぁ…? あ、コイツ!」

他の三人に見つかってしまいました。
私は掴んでいる男の首をさらに強く壁に押し付けました。

「奴等に俺に手を出すなと言え。 これ以上俺を怒らすなと」

男は爪先立ったまま首を縦に振りました。 
私は男を解放すると三人に向かってその男を突き飛ばしました。

「コイツは今日はもう帰ると言ってる。 お前らもそうしろ」
「ふ、ふざけるなっ!」
「お前か…。 酔っているから大目に見てやってるんだ。 粋がるのはやめとけ」
「何ぃっ!」

私に殴りかかろうと男が踏み出した足を、地に付く前に体の内側に払うと男はその場で一回転して転がりました。

地面に肘を打ち付けてしまったようでした。
うずくまったまま肘をさすり唸っています。
残る男達は何が起きたのか解からずに、ただ口をパクパクさせているだけでした。

「いい歳しやがって…。 悪いがお前らの相手をしてる時間が無い。
 タクシーを呼んでやる。 今日はもう帰れ」

片手に一人ずつ後襟を掴み引っ張るようにして路地から出ると、通りかかったタクシーを拾いました。

「お前もそいつを連れてサッサとコッチに来い!」

男達はすっかり酔いも覚めてしまったようです。
スゴスゴとタクシーに乗り込みました。

「運転手さん、コイツらを天国まで」

どこかに『天国』という店が本当にあったのかも知れません。運転手は頷くとドアを閉めました。
私はタクシーが走り出すのを見届けると、彼女の元へと歩き出しました。

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いったい、いつからだ、時折暴力の衝動に自分が抑え切れなくなってしまうようになったのは…。

学生時代、自分達から喧嘩を仕掛ける事は無かったが、売られた喧嘩は皆喜んで買っていた。
当時は喧嘩もスポーツ感覚で、実戦の練習代わりとばかり、皆思う存分投げ飛ばしていたのだ。
弱い者、足手まといになる者を先に逃がしておいてから喧嘩に戻る。
そんな事、基本中の基本だぞと先輩達にはそんなことまで嫌と言うほど叩き込まれた。

その頃付き合っていた「ひとみ」がチンピラに絡まれているのを見た瞬間、私の体が勝手に動いていたことがあった。
気がつけばそのチンピラは私の足元に転がっていた。
「ひとみ」にその時、怪我は無いか、もう喧嘩なんかしないでと、散々泣かれた。
私は愛する人に二度と心配させるようなことはしないと、そう誓ったはずだった。
だが、時としてその抑制が効かなくなる。
相変わらず、自分の身近な人間が酔っ払いやチンピラに絡まれ侮辱された時など、二度とそんな真似が出来ぬよう完膚なきまでに叩きのめしたくなる…。

いつからか私は、せめて自分の体の中に暴力の血が逆流するところは、私を知る者達の前では決して見せまいと思うようになっていました。

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車に戻ると彼女は私の上着を掛け、音楽を聴きながら眠ってしまったようでした。

(この子も「ひとみ」と同じように泣くのだろうか)

静かに寝息を立てる真理子の横顔を眺め、そんなことを思いながら私は彼女を起こさぬよう静かに車を出すと、彼女の住むマンションの方角へと車を向けました。
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−−−③台風一過

その日は昨日までの暴風雨が嘘のように治まり、青い空が一面に広がる爽やかな朝で始まりました。
住み替えたばかりのマンションにはカーテンも無く、その日も日差しに目を焼かれるようにして起きることになりました。

気が付けばネクタイも取らず、ズボンを脱ぎ散らかしたままで寝てしまったようでした。

(昨日は打ち上げだって言って台風が来てるのも構わずしこたま飲んだんだっけ…。
 ん?
 あっちゃあ、買ったばかりのシルクのスーツも濡れて皺くちゃのままかよ…(泣))


(ピン、ポーン♪)

時計を見ると朝7時前。
今日はまた随分早いなと思いながら、ノロノロと立ち上がるとドアを開けました

(ふぁい…おは…よ…)
『あー! また、そんな格好してるっ! どうせ洗濯物も溜まってるんでしょ? それも脱いでっ! 一緒に洗濯しちゃうから』
「これ脱いだら、他に着る物無い…よ?」
「ちゃんと買ってきました! はい。 これに着替えて」

私に両手いっぱいの紙袋を渡すと彼女は持参したエプロンを締め、テキパキと掃除、洗濯をし始めました。
やがてそれが済むと買ってきた食材を食卓の上に広げ始めました。

「待たせてごめんね? 今すぐ作るから待っててね」

どこか遠くで聞き覚えのあるフレーズ…。
それが何故か耳に残りました。

「あ、そう言えばあの人ねー。
 由香里との事とが噂になって女子社員から総スカン喰らって居辛くなったみたい。
 昨日、総務の私の所にも辞表が回って来た」
「ふーん」
「ふーんって…。 由香里に関わることよ? 気にならないの? アイツに腹が立たないの?」

彼女は料理を盛った皿をテーブルに置くと私の目を覗き込むようにして聞いてきました。

「由香里のことは…もう忘れた」
「そう…。 あっ! 今日は買い物に付き合ってね。 色々と買い揃えないと…この部屋、何も無いんだもの」
「別に何も要らないよ。 一人暮らしには、これ…」

彼女は私の唇を指で塞ぐと、

「それって、私が居るから他に何も要らないって…。 そういう意味だよね? ね?」
「あ、あぁ。 たぶんそう…だと思う。 いえ、おっしゃる通り…かと…(汗)」

彼女が私に飛びついてきて唇を重ねてきました。
優しい…私の身も心も包み込むような甘い口付けでした。

彼女と初めて口付けをしたあのスキーツアーの時、彼女はまだ『女の子』という感じでした。
あれから7年近くの間に彼女は『女』を感じさせるまでに変貌を遂げていました。

彼女はある日突然、不自由してませんかと食材を抱え、私のマンションを訪れました。
そんな彼女を、どうして素直に受け入れることができたのだろう。
そしていつの間にか私の心の中に住み着いた彼女に、私はすっかり頭が上がらなくなっている…。

(あっ!)

そうかも知れない…。
長年使っていたメガネからコンタクトに代え、髪もショートカットにした真理子は…どことなく別れた時のひとみに似ている。
私の事しか考えていないような言動もまた…。
あれから10年。
私だけが歳を重ねた。
でも、私の心の中のひとみは別れた時の29歳のままだった。
ひとみは私の心の中で時間を止めて存在していたのだ。
そして目の前の真理子もまた、それくらいの年頃に。

良く見れば確かに似ている。
でも真理子はひとみなんかじゃない。
そう。
二度と手放したりしないのだから。

「ねぇ聞いてる? 私、今日は泊まっていくね? だって…こっちにも溜まったものがいっぱいあるんでしょ?(笑)」

彼女はそう言ってクスッと笑うと私の股間に手を添えました。
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−−−②制裁

翌日私は、総務課に由香里を配偶者から外すよう届出を済ませました。
総務課を出た時、私を追いかけてきた声に呼び止められました。

『美由さんっ!』
「え? ああ、君か…」

声の主は真理子でした。

「由香里と離婚したんですか?」
「うん…まあ…」
「幸せそうだったのに…」
「由香里にはそうでもなかったみたいだ」
「これからどうするんですか?」
「どうするって、どうもしないさ…。また一人に戻っただけだ」
「そう…。 ごめんなさい、立ち入ったことを聞いて」
「いや、いいんだ。 それじゃ手続きの方宜しくな」
「あっ、今はこの住所に?」
「あ、ああ。 次にマンションでも買うまでの仮住まいさ。 その時はまた総務課に住所変更の手続きに来るよ」
「はい。 お待ちしています。 気を落とさないでくださいね」
「ありがと。 そんなことを言ってくれたのは君だけだ(笑)」

3週間の休暇の間にバタバタと離婚の手続きを済ませ、私はプロジェクトに戻りました。

プロジェクトは何とか軌道に乗り、私は延べ1年間の出張を終え会社に戻ることになりました。
会社に戻ると早速後輩から由香里の相手は例のアメフト部の男だと聞かされました。
でももう…、そんなことはどうでも良いことでした。

相変わらず猛暑は続き、それからしばらくは身も心も抜け殻のようになった日々が続きました。


そんな夏の土砂降りの雨の晩、インターホンが鳴りました。
由香里がずぶ濡れでそこに立っていました。

「ど、どうした…? 良くここが判ったな。 さぁ入れ」

彼女はコクッと頷くと部屋に入りました。
青白い顔をして体を震わせている彼女にバスタオルを掛けると、彼女の為に風呂を沸かし始めました。

「入るといい。 着替えも用意しておくから」

私は彼女にバスタオルとスエットの上下を用意するとミルクを温め始めました。
風呂から上がっても彼女はバスタオルを頭から被ったまま、押し黙ったままでした。

「由香里の好きな甘いホットミルクだ。 きっと体が温まる。 飲むといい」
「私…」
「何も言わなくていい(笑) 今は俺が悪かったと思っている。
 もう心の整理は付けたんだ。 君は君の選んだ人と幸せになるといい(笑)」

彼女がそれを聞いて堰を切ったように泣き出しました。

「私…私…遊ばれただけなのっ!」
「え?」
「あなたと別れたら結婚しようって…そう言ってたのにっ!」

泣きながら途切れ途切れに語る由香里の話ではありましたが、おおよその見当は付きました。
アメフトの男は由香里に振られた腹いせに、私の留守中、由香里にトラップを仕掛けたのだと。

そして…由香里の体だけでなく心まで弄んだ…。

「そっか、わかった。 今日は遅いから泊まっていくといい。 明日の朝、君を送っていく」

泣きじゃくる由香里をベッドルームに案内すると、由香里は私の体にしがみ付いてきました。
でも…、私にはそれに応える術がありませんでした。

私はソファに横になると隣の部屋で一晩中繰り返す由香里の嗚咽を聞いていました。

翌朝、少し早めに身支度を整えると、私のベッドから出ようとしない由香里をなだめ自宅へと送り届けました。
そしていつも通り会社に出勤しました。
そして不在の部長の席に辞表を置くとアメフトの男の所へ行きました。

「話がある」

男は私を見て全てを悟ったようでした。
人気の無い階段の踊り場で、私はその男に対峙しました。

「俺の言いたいことが解るか?」

男が首を振りました。

「無口なのか…。 そうか、そりゃ良かった!」

ニヤニヤと笑うその男の口元を見て、一気に怒りが全身を突き抜けました。
私はその男のネクタイを腕に巻きつけるようにして引き付けると足を払い階段下へと投げ飛ばしました。
男は一回転して1、2メートル下の踊り場の床に叩きつけられました。

「実は俺も口下手なんだ」

私は階段を降り、男の顔を見下ろしました。

「今のは由香里の体の痛みの分、そしてこれが…」

アメフト男の腹を蹴り上げました。

「由香里の心の痛みの分だっ! 取っとくといい」

私はしゃがみ込むと苦痛と恐怖にゆがむ男の太い首を掴みました。

「安心しろ、俺の分は今回は無しだ。 俺にも悪い所があったからな。
 怪我は…してなさそうだな…。
 アンタが頑丈な体で良かった。 それだけは礼を言う」

男の頚動脈を親指と人差し指で軽く押さえると男は簡単に気を失ってしまいました。

(貴様は男のクズだ…)

完全に頭に血がのぼっていたのです。
生まれて初めて私の方から喧嘩を売った上に、相手も体育会系で体も一回り以上大きい相手でした。
スキだらけの相手ならともかく、そうなればお互い手加減もへったくれも無いだろうと会社を辞める覚悟が先に立っていました。

本当にバカだったのです。

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由香里はあの日以降、何度か私の留守にアパートを訪れたようでした。
手紙や食べ物などが時折届けられていました。
そしてそれらに私が応えることはありませんでした。

(もうあの頃には戻れないんだ…。 俺のことなど忘れてくれ…)

やがて私は、由香里には何も告げぬまま新しいマンションへと引越しを済ませました。

アメフト男はあの後、誰かに助け起こされたようでしたが、階段から落ちて気を失ってしまったと私との一件は伏せたようでした。
さしたる理由も無い私の辞表も、結局は受理されることはありませんでした。

(俺は運が良かっただけだ…)

私は今更ながらにアメフト男に怪我をさせずに済み、新しいプロジェクトに没頭する毎日を取り戻せたことに感謝していました。
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第三章①離婚

由香里に私と言う婚約者ができたと言っても所詮は18歳の女の子でした。
料理学校へ通ったり花嫁修業をしながら、一方では父親の影響を受け幼い頃から時から出入りしていたライブハウスやディスコに私を頻繁に誘うようになりました。

そんな時の彼女は会社に居る時の雰囲気とは打って変わって服装もド派手で化粧もケバい。ノーブラなんて当たり前という感じ。
ライブで歌ってる時のアン・ルイス(古い?)のようだと言えば想像が付くでしょうか。

そんな世界に足を踏み入れたことなど無かった一介のサラリーマンの私にとって正直ビビりの入る世界です。
彼女の父親の存在が大きいのか、彼女は何処に行っても『顔パス』でした。そのせいで彼女に手を出す男も居なかったようでした。

由香里は本当に自由奔放な子でした。
セックスを知ってからというもの貪欲にそれを求めてきました。
そしてそれは会社でもお構い無しに。

欲しくなれば私の席に時間と場所を指定した暗号文で書いたメモを置いていきました。
昼休み、休憩時間と、時間はいくらでもありました。
場所も、屋上、図書室、非常階段と、人気のない場所はすべて利用しました。

彼女のお気に入りは、エレベーターの機械室。
機械の音で人目を気にせず声を上げることができるからです。
セックスのパターンは、最初に彼女がしゃがみ込み私をフェラで立たせた後、パンティを膝まで下げた彼女を私が背後から犯すというスタイル。
10時、12時、15時と一日に三回したことも何度かあったのです。

結婚式まではそんな生活が続きました。

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やがて由香里は退職し、私達はありきたりの結婚式を挙げ、ありきたりの新婚生活を始めました。

年齢的にもそんな時期だったのかも知れません。
私の職務上の責任も増え、仕事に忙殺される日々が続きました。

結婚して6年ほど経った頃、私は新しいプロジェクト立ち上げの為、単身で1年ほど旅立つことになりました。
由香里の相手もままならないまま数ヶ月が流れました。
私の留守中、後輩達が何かと気遣い由香里の相手をしてくれてるようでした。
由香里からも後輩達から海に山にと誘われたことの連絡が入りました。
その都度私は、行って楽しんで来ればいいと返事をしました。

その後も何度か飲み会やら何やらと呼び出しを受けては出掛けたようでした。
後発で出張先に来た後輩から、由香里さん寂しいみたいだよ、と言われました。
その時、その本当の意味が、私にはまだ判っていなかったのです。
海水浴だのキャンプだのと由香里が参加して来た事を聞かされてはいましたが、由香里本人からはその事を話さなくなりました。

半年ほどして現地の準備作業も一段落し、久しぶりに家に帰れるだけの休暇が取れました。
私は由香里に電話を掛けました。

「あ、俺。 今度の週末に帰れると思う」
(うん…。 わかった…)
「何だ。 嬉しくないのか?」
(あのね…)
「ん?」
(別れて欲しいの…)
「はぁーぁ? 誰とぉ?」
(私…と…)

タチの悪いジョークかと思いました。

「何バカな事言ってんだよ」
(もう決めたの…)
「決めたって…。 別れてどうするつもりだ?」
(どうもしない。 ウチに帰ってしばらく暮らす…)
「もー、電話じゃ話しにならない。 いいか? 帰ったら話しよう。 いいねっ?」
(うん…。 でも… 私の気持ちは変わらないと思…)

私は突然別れを言い出した由香里に腹を立て、ガチャンと思いっきり受話器を叩きつけました。
日本に向かう飛行機の中、私の頭の中は混乱するばかりでした。
プロジェクトもまだ中盤、これからますます時間がとれなくなるというのに…。

私と対峙した由香里は、ただただ、私を非難し続けました。

『寂しかったのっ! でも…あなたは仕事のことばかりで何も構ってくれなかったっ! 私、寂しいのは嫌なのっ!』

取り付く島がありませんでした。

人は誰でもそうかも知れない。
会社を辞めると決めた人間は、辞める理由だけを探し始める。
できないと言い出した人間は、できない理由だけを上げ連ねる。
そして別れると決めた由香里は、些細な事も別れる理由に上げ始めた。
どいつもこいつも、どうして継続するためにはどうあれば良いかを考えようとはしないのか。

彼女は慰謝料も何も要らないから、とにかく別れての一点張りでした。
理由にならない理由を、どんなに上げ連ねられても、離婚の申し入れを受け入れる訳にはいきませんでした。

やがて彼女の口から決定的な一言を聞かされました。

「私…、他に好きな人ができたの」

私が悪いのなら改める。 それは何度も説得した。
でも…、私より好きな人が居ると言うなら話は別だ。
それはそのまま、私より幸せにしてくれる人が居ると由香里が判断した結果なのだから。
由香里にとって私は、その何処の誰とも判らない男に比べると存在感の無い格下の存在なのだ。

「わかった…。 君の思い通りにすればいい」

私はその日のうちに離婚届に判を押しました。
離婚届けを由香里に渡してから何日かして、私の元に彼女の父親から電話が入りました。

(君は由香里に一銭も慰謝料を払わないらしいな。 なんて情けない男だ)
「お義父さん。
 私は由香里から慰謝料も何も要らないから別れて、と、そう言われました。

 でも… 分かりました…。
 私から持っていけるものがあるなら何でも持っていってくださって結構です。
 マンションも売り払えば幾らかになるでしょう。
 全部由香里に渡します。

 彼女にそう伝えて下さい」

愛だとか恋だとか、人を信じる気持ちの拠り所を失って、ただもう何もかもが面倒臭くなっていました。
早く仕事に逃げ込みたい一心でした。
そうすれば…きっと何もかも忘れられる…。

(情けない男…)

そんな自分に追い討ちを掛ける様に、彼女の父親から言われた一言はショックでした。
自分に落ち度が有ったかどうかは別にして、確かにその通りじゃないか。
これ以上、何を失うことを恐れているのか。

欲しいと言うなら、すべて持っていくがいい。
元々大したものなど何も持っていなかったのだ。
そう。
愛さえも…。


私は一人暮らしするには充分な広さのアパートに移り住みました。
7年暮らしたマンションや車など、売れるものは全て売り、由香里に送金すると無一文になりました。
無一文になり心身共にどん底に落ちれば、あとは登るだけ。
世間では良く聞く話でしたが、それを身をもって体感しました。
それはもう、本当に身軽になった気がしました。

私には由香里と暮らした7年間という月日の重さだけが残りました。
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−−−③恵美

私達は民宿に戻りました。
風呂を済ませれば、すぐに食事を兼ねた宴会です。
そして、宴会が済めば三々五々、いくつかの部屋になだれ込み深夜までトランプその他のゲームが始まるでしょう。

私は先輩に合図され、食事をさっさと済ませると宴会場を抜け出しました。
スキーツァーの夜は先輩達と恒例の麻雀大会が始まるのです。

しばらくして宴会を終えた由香里と恵美がその麻雀部屋に顔を出しました。
麻雀を覚えたての由香里も先輩達に誘われるままコタツ麻雀に参加してきました。
恵美は私の横に座りコタツ布団の中で私の膝に手を乗せながら私の配牌を一緒に見ていました。

由香里が入ったことで打ちまわすペースも遅くなり賭け麻雀特有の緊張感も無くなりました。
半荘1回に一時間以上も掛かり数時間後には皆の睡魔もピークに達しました。

やがて誰が言うとも無くその場に寝転び眠りについてしまいました。
コタツ2卓を置いた麻雀会場は雑魚寝状態です。
もう男女の部屋に分けた意味などありませんでした。
由香里は私の左側の席のまま、恵美は私の直ぐ隣で、コタツに潜り込むようにして横になりました。

あちこちから寝息が聞こえる頃、由香里が私の方に体を摺り寄せてきました。
私にキスをすると私の手を胸に導きました。
私はセーターの下に手を差し入れるとブラを外し生の乳房を揉みました。
そして、セーターで隠すようにして由香里の乳房を吸いました。
やがて彼女は、私に背を向けるとヒップを私の股間に押し付けてきました。
私はコタツ布団の下で彼女のジーンズとパンティを降ろすと、その位置を確かめました。
そこは充分に濡れています。

私はファスナーを降ろしペニスだけを出すと彼女の背後から挿入しました。
ゆっくりとした動きで彼女の膣奥まで味わいました。
きつめの膣壁にこすられ、あっと言う間に射精感に襲われました。
彼女は手の甲を口に当て声を押し殺しています。

私の射精に合わせるように彼女の膣も収縮を繰り返しました。
私も彼女も声を殺したまま逝ってしまったのです。
二人して余韻を楽しんだ後、服装を正すと、由香里はこちらに向き直り私の胸に顔を埋めるようにして眠ってしまいました。

どれくらい経った頃でしょうか。

(ん?)

いつの間にか仰向けに寝ていた私は、下腹部に違和感を感じ目を覚ましました。
なんと恵美が私の股間に手を当てていたのです。
そして私が目を覚ましたのを確認すると耳元で囁きました。

(私にもして…)

またあの濡れた瞳で私を見つめながら…私のジーンズのファスナーを下ろしていきました。
そして私のペニスを取り出すと布団の中に潜り込むようにしてそれを唇に含みました。
私は慌てて由香里の方を見ました。
スースーと寝息を立てて寝ています。

スキー疲れと夜遅くまでのゲーム疲れが重なり、皆、熟睡しているようでした。
そう。 私と恵美の二人以外は。

私はその刺激に耐えられなくなりました。
恵美の履いていたスエットとパンティを降ろしました。
そこはもう充分に潤っています。

(いいのか?)

彼女はコクッと頷きました。
コタツ布団を胸まで掛けたまま私と恵美は繋がりました。
彼女は尻を強く押し付け私を膣奥深く迎え入れようとしています。
ヌルヌルとした触感がペニスを包み込みます。
私はゆっくりと大きなストロークで子宮口まで分身を送り込みました。
やがて彼女の体内の奥深い所がペニスを締め付けるのを感じました。

(やばい! 俺も逝っちまう!)

私は慌ててそばにあったタオルを掴むと股間に押し当てました。
間一髪、恵美の膣外で射精を受けることができました。
恵美は背を向けたまま肩で息をしています。
やがて落ち着きを取り戻すと辺りを見回しながら立ち上がり、私の手を引き部屋の外に連れ出しました。

廊下に出ると恵美は私を振り返りざまに抱き付き、そしてその唇を重ねてきました。

(ごめんなさい…。 私…)

彼女がポロポロと涙を零し始めました。
私はどうして良いか判らずに、ただオロオロとその肩を抱いていました。

(お願い…。 もう一度…抱いて…)

その民宿の廊下の突き当たりには布団部屋がありました。
引き戸を開けるとシンとした冷気に包まれました。
私は恵美をその部屋に導くと後ろ手に引き戸を閉めました。
恵美が抱き付いてきました。
まだ涙ぐんでいます。

(ごめんなさい…。 二度と…。 もう忘れるから…)

私は積み上げた布団の上に恵美を横たわらせると、そばにあった何枚かの毛布を掛けました。
そして恵美のスエットとパンティを脱がせました。
そして大きく股間を開かせるとその花芯に顔を埋めていきました。
由香里とのサラッとした粘液とは違うヌルッとした濃い味がしました。
恵美はスエットの襟を噛み締めて声を殺しています。
私はジーンズを降ろし怒張を恵美の中心部に当てがい一気に貫きました。

(あっ! そんな、いきなり! んっ…んっ…んっ…あっ…)

恵美のまとわり付くような感触を味わいながら激しい突き上げを繰り返しました。
恵美が私の背に手を回したまま強く抱きしめてきました。

(お願い…。 私の中に出して…)

しばらくして射精感が押し寄せてきました。

(あぁ、もう我慢できない…逝くっ!)
(中にっ! 中に出して! お願いだから中に…あぁ…)

私は恵美の中に激しい放出を繰り返しました。
恵美がビクンビクンと間欠的な痙攣を繰り返しています。
私は挿入したまま恵美の乳房を揉みその頂点にある乳首を唇に含みました。
恵美は仰け反りながらそれに応え続けました。

全てを放ち終わり、恵美の収縮も収まった頃、恵美がポツリと言いました。

(良かった…これで…)
(ん?)
(思い出ができちゃった(笑))

先ほどまでの妖艶な瞳が一変してあどけない笑顔に変わっています。

(二人だけの秘密だね。)
(そうしてくれると助かる…。 由香里が…怖い…)
(由香里には悪い事しちゃった…。 でも…私の方が最初に好きになったんだよ? でも…盗られた…)
(恵美は…)
(ん?)
(滝口と結婚するんだろ?)
(うん…。 彼もそのつもり…。 でも…彼は美由さんの代わり…)
(そっか…知らなかった…。 さ、皆に見つからないうちに戻ろ)
(うんっ!)

彼女はもう一度私にキスをすると、先程の部屋には戻らずに女子の為に用意した部屋に戻っていきました。
私は新しい毛布を手に取ると、由香里の眠る部屋に戻りました。
由香里の体に毛布を掛け、小さな寝息を立てる由香里の髪を撫でました。

(ごめん…。 俺は君を裏切ってしまった…)

自分はいずれこの罰を受けることになるだろう。

由香里が目を覚ましました。
私が見つめている事に気付くとクスッと笑い私に囁きました。

(も一回…する?(笑))
(いいよ?(笑) どこで?)
(ど・こ・で・も!(笑))

そう言って私を引き寄せると私の耳を噛みました。
そんなことで自分がしたことの罪が許されるなら何度でも抱くさ。

私は彼女の体を抱き寄せていました。

-------------------------------------------------------------------

恵美はその後二ヶ月ほどして、結婚のため入社1年を待たずして早々と退職していきました。
退職の挨拶に私を訪れた時、すでに妊娠している事実を知らされました。

(まさか…(汗))
(違う…と思う)
(そんな曖昧な…)
(嘘よ、嘘(笑) 心配しないで…。 それじゃ…)

『色々とお世話になりました!』

恵美は私にウィンクすると回りに聞こえる声で挨拶をすませ部屋を出ていきました。
翌年、彼女から親子三人の写真入りの年賀状が届きました。

『スキーツアーではお世話になりました。 親子三人幸せに暮らしています、どうか「安心」してください。』

その安心の部分を強調したハガキの意味は、おそらく私と彼女しか解らない…。
私はほっと胸を撫で下ろしました。

自分のした事を棚に上げ、女が怖い生き物だと思ったのはこれが最初の出来事でした。
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②【リップクリーム】

 早朝、民宿に着くとそれぞれの部屋割りに従い荷物を降ろし、民宿で用意したおにぎりと味噌汁という簡単な朝食を済ませると、再びバスに乗り込みスキー場へと向かいました。

 私は、先輩達を含む馬鹿仲間と共にスキーを楽しみたかったのですが、スキー初心者の由香里と恵美、そして総務課の真理子の面倒を見るはめになりました。
 真理子も恵美同様、由香里とは同期入社でしたが、四年制大卒ということもあり由香里達は年上の彼女を姉のように慕っていました。

 残念なことに真理子だけはスキーが2回目と言うことで、やっとボーゲンができる程度でした。
 私達はファミリーゲレンデで特訓をすることにしました。
 多少は滑れる由香里も恵美も、チマチマとした基本から練習する真理子に付き合うのに飽きたのだと思います。
 一時間もすると『真理ちゃんを宜しく』と言い残すと、さっさとリフトに乗り山頂へと向かってしまいました。

 ファミリーゲレンデには私と真理子だけが取り残されました。

『ごめんなさい。美由さんも皆と一緒に上に行きたいでしょ?』
『いや、気にしなくていい。こうなったらアイツ等より上手くさせてやる(笑)』

 私は自分のストックを雪に刺すと彼女の腰を持ち、彼女のスキー板を挟み込むようにして、パラレルターンの練習を繰り返しました。以前、彼女に教えた者の教え方が悪かっただけなのかも知れません。あるいは、彼女のカンの良さに救われたのか…。
 体重移動と踏み込みのタイミング、それを体に覚え込ませると彼女は面白いほど上達の度合いを早めていきました。

『スピードが乗りすぎたと思ったらボーゲンにして! 怖がらないでっ! 腰を引かないっ!』
『自分の行きたい方向だけを見てっ! 体より気持ちの方を先に行かせる感じでっ!』
『上手な人の姿勢を真似してごらん。スキー板が勝手に体を運んでくれるから。』

 こんな指導方法でも充分でした。
 午後になる頃には、彼女はコブさえ無ければ中級コースの斜面でも充分一人で滑り降りることができるようになっていました。
 何より、彼女自身がそのことに一番驚いていました。

『すっごく楽しい!』
『そうか。 じゃ上級コース行ってみるか? 度胸さえありゃなんとかなる(笑)』
『はいっ! 先生が一緒なら(笑)』

 私達はリフトで他愛の無い会話を交わしながら、山頂へと向かいました。
 さすがに上級コースを上から見下ろした時、真理子は少し怯えたようでした。
 スキーはある意味、恐怖心との戦いなのかもしれません。
 彼女にとって唯一の救いは、ここの上級コースは他のスキー場に比べると比較的斜度が緩いということでしょうか。

『斜滑降でゲレンデを斜めに横切る。ゲレンデの端に付いたらキックターン。それの繰り返しで下まで行くから。大丈夫、君なら出来る。じゃ、あそこで待っているから真っ直ぐ向かって来て。エッジを効かせていれば滑り落ちることも無いからね。』

 私が先に滑り出しました。そして、ゲレンデの反対側の端に着くと彼女に向かいストックで合図をしました。
 彼女は度胸もある子でした。大きく深呼吸をすると、躊躇うことなく私に向かって滑り出しました。

『同じ事を何回か繰り返せばこの斜面を抜けられる。ここより急な斜面なんかこのスキー場には無いんだから、きっと自信が付くと思う。』

 私達はタラタラとした滑りではあるけれども、とりあえず上級コースを制覇することができました。

『私、こんな急な斜面を一度も転ばずに降りてこれたんだ…。』

 彼女は上級コースを下から見上げ、狙い通り多少の自信をつけてくれたようでした。

『どうする? もう、由香里達と合流しても大丈夫だと思うんだけど。 君がここを滑って降りたって知ったら驚くぜぇ(笑)』
『う…ん。でも、先生さえ良かったら、もう少しだけ教えて欲しいな。』
『そっか…、じゃ、中級コースに抜けてみようか。 きっと、ここを滑り降りた今なら、何てこと無い斜面だと感じるはずだ。』
『うんっ!』

 私達は普通なら30分くらいで滑り降りることができる麓のセンターハウスまでの道のりを、真理子のペースに合わせ二時間くらい掛けて降りてきました。
 スキーに自信を付けた子が皆そうであるように、センターハウスでコーヒーを飲みながら休憩している間も、真理子はまだ滑り足りないようでした。
 私は彼女を連れ、集合時間までの時間に戻るにはちょうど良い所要時間の、緩斜面が続く林間コースへと向かいました。
 林間コースはダラダラとした緩い斜度が続く道幅の狭いコースで、それが不評なのか、私達以外その前後には誰も滑っていませんでした。
 彼女は私の後に続き、私がペースを上げてもそれについて来られるだけの上達振りを示してくれました。
 途中途中ゆっくり滑りながら、お互いの股間をすり抜けて滑ったり、ストックを繋いで引っ張って滑ったりと、一通りのスキーでの遊び方も教えて上げることができました。

 そして、あともう少しで林間コースを抜けようとした時です。

『先生、待って!』

 真理子が私を呼び止めました。彼女はスキー板のビンディングを外すと、私の元に走って来ました。

『今のうちに今日のお礼しておかなくちゃ(笑)』

 あっという間もなく、私の唇に彼女のつけていたリップクリームが残りました。

『もっとお礼したいけど由香里に悪いから。それじゃ後もう少しだけ、私にお付き合いください。』

 彼女はクスッと笑いながら、わざとらしくお辞儀をしました。そして自分の板のところに戻ると、また私を呼びました。

『先生! ビンディング留めて!』

(あのな) 私は苦笑しながら自分のビンディングを外すと彼女の所まで戻りました。

『もうっ! ワガママばかり言うと置いて行くからなっ!』
『大丈夫。 先生だけは私を見捨てたりしないから(笑)』
『ばか。 さ、ここにブーツを乗せて。 靴底の雪を落とさないと。』

 私は彼女の足元に跪くと、その片足を自分の太腿の上に乗せ、ブーツの靴底に噛み込んだ雪をこそぎ落とし始めました。

『もう、大好きっ!』

 突然、彼女が無理な姿勢で抱き付いてきました。その弾みで、二人とも山側の新雪の中に倒れ込むことになりました。
 そして、気が付けば再び彼女に唇を奪われていました。
 私は反射的に唇の中に彼女が差し入れてきたものを舌で受け留めてしまいました。

 その時は、由香里のことも思い起こすこともありませんでした。
 男の性からか、ただ目の前の真理子が愛しい、そう思っていました。

 彼女の普段の姿からは想像は付かない激しさで口付けは繰り返されました。
 私の手は、当然のように彼女の胸を、そのスキーウェアの上から確かめていました。

『あ、駄目…欲しくなっちゃう…』

 彼女のその言葉で我に返りました。彼女の体を最後にぎゅっと抱き締めると言いました。

(ごめん、帰ろ。 きっとみんなも戻り始める…。)

 彼女はコクッと頷き、私の体の上から体を起こしました。
 私は起き上がると、まず、彼女の体に着いた雪を払い始めました。

『ね、いつか…』
『ん?』
『ううん…。 あっ! 先生の背中、ど下手なスキーヤーみたいに雪だらけだよ(笑)』
『あのな、それに気付いたら払えっつの。てゆか、その先生っての、やめてくれ(苦笑)』
『やだ。ずっと言う(笑)』

 私達がセンターハウスに戻った時、集合時間までは、まだ小一時間ありました。
 大半のメンバーもまだ戻って来てはいないようです。
 由香里と恵美も居ませんでした。どうやら皆、リフトが止まるまで滑り続ける気のようです。

『それじゃ先生を開放して上げよっかな。滑って来たいんでしょ?』
『んー、どうしようかと思ってさ。』
『行って来て。 私、寂しいけど待ってる(笑)』
『俺が行きにくくなる事言うなよ(笑) んー…悪いっ! ちょっくらテッペンまで行って戻ってくる。』
『はいはい、気をつけて。 私、センターハウスから見てるから。』

 私は待ち行列も殆ど無くなったリフトを乗り継ぎ、ひたすら頂上を目指しました。

 日が暮れ始めようとしていました。
 灰色の空を見つめながら、真理子のことを考えていました。そして恵美のことも。
 みな、由香里繋がりの子達ばかりでした。

 入社してから今まで、私が会社の女の子達に近付く事などまったく無かったのです。
 きっかけはおそらく、彼女達が入社した直後に開催された組合主催の新入社員歓迎パーティーの夜の事だと思いました。
 彼女達三人が悪酔いした上司にセクハラされていたのを助けてあげた、ただそれだけのことです。

 最初、パーティー会場の片隅で、由香里がスカートを捲くり上げられ小さな悲鳴を上げました。
 真理子は胸を鷲掴みにされました。やがて恵美に抱きついたりと…。
 そんな酔っ払いは、どこにでも居るものです。普段お人好しに見える人ほど豹変するものなのかも知れません。

 私は彼女達を見知った振りで声を掛け、その上司らしき男から遠ざけました。
 そして、人目に付かぬ様、無言でその上司の腕を取ると有無を言わさずロビーへと連れ出しました。
 辺りに誰も居ないのを確認すると襟首を掴み直し、吊るし上げるようにして玄関に、そしてそのまま外へと放り出しました。

『いいか、お前のような奴は酔いが覚めるまで二度と入って来るな。』

 誰の上司だろうと私には関係ありませんでした。
 私はそのことで会社をクビになるなら、所詮その程度の会社なんだと簡単に諦めていたと思います。

 何か喚いているその男を無視してドアに施錠するとロビーを振り返りました。
 彼女達は恐る恐るといった感じでロビーに出て来てしまっていました。

『ごめん。あの人も普段は好い人なんだけどな。』

 はっきり言って他部署の奴の事など知りはしませんでしたが、そうフォローするしかありませんでした。

『君ら、お腹空いてない? それとも何か飲む? タダなんだからさ、遠慮しないで飲み食いしないと損だよ?(笑)』
『私、お腹ペコペコ(笑)』 確か由香里がそう言いました。
『それじゃ、誰かに持って来させよう。』

 彼女達を促し会場に戻りました。
 そして、職場の後輩の何人かに頼み彼女達にオードブルと水割りを届けさせました。
 後輩達はそのまま彼女達の相手をしてくれました。

 その日を境に、彼女達は廊下ですれ違う時、私に挨拶をしてくれるようになりました。
 私と同期入社の女の子以外でそんなことしてくれるのは彼女達が初めての事でした。
 彼女達と私を結ぶ線といっても、ただそれだけのことだったのです。

 リフトが頂上に着きました。

(急がないと集合時間に間に合わない…)

 恵美の乳房と真理子の唇の感触を振り払うように、私はコースに飛び出していました。
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第二章【初めての浮気】

①【汗ばむ手のひら】

 会社の中で彼女との関係が知れ渡るのにそう時間は掛かりませんでした。
 私達は婚約し、彼女のたっての希望で翌年の初夏の頃、彼女が20歳になる前に挙式することになりました。

 その年の冬、組合主催のスキーバスツアーに彼女は一番仲の良い同僚の恵美を伴い参加してきました。
 恵美は短大卒新入社員でバーベキューにも来てた子です。由香里とは2つ違いでしたが職場が同じということもあり親しくしてたようです。
 スキー場行きの夜行バスに彼女は窓側の席を恵美に譲ると二人並んで座りました。
 私は由香里の真後ろの席に座りました。
 私の隣の窓側には、私の先輩が居ましたが出発する頃にはビールで出来上がってしまい、イビキを掻いて寝てしまっていました。
 車内は補助シートまで使用する程の盛況です。あちらこちらから笑い声が絶え間なく聞こえてきます。
 私は彼女のシートの背もたれに腕を組むとアゴを乗せ、恵美を交え三人で話し込んでいました。
 スキー場へは明朝着く予定です。
 午前零時を回りバスのルームランプが消されました。
 しばらくして、何処からとも無く寝息が聞こえてきます。
 彼女の隣の恵美も寝てしまったようです。

 しばらくして由香里は私の手を取ると、スキーウェアの中に導きました。
 そしてセーターの胸の上に私の掌を乗せました。そしてスキーウェアの上から私の手を押さえました。
 セーターとブラの下で乳首が硬くなっているのが判りました。私は乳首の辺りを摘み指でなぞりました。
 そんなことを繰り返しているうちに彼女は『ん…』と言って背を反らせました。吐息を漏らしています。
 感じやすい彼女は、それだけで軽く逝ってしまったようでした。
 私は彼女の髪を撫でながら、やがてそのままの格好で眠ってしまいました。

(ん…?)

 私がいつの間にか背もたれの前に垂らしていてた手に何かが触れたような気がしました。
 私の手を暖かい手が包み、やがてスキーウェアの中へとそれを導きました。
 なんとそれは恵美の手でした。
 彼女は横向きになり私の目から視線を逸らすことなく見つめています。
 ビールを飲んでいたせいでしょうか。歳に似合わぬ妖艶な眼差しをしていました。

 やがて、体に掛けていたスキーウェアの中、ゆったりとしたセーターの襟元に私の手を導くと乳房に直に触れさせました。
 彼女はノーブラでした。
 私の掌がしっとりと汗ばむ硬く尖った突起を受け止めました。
 私の心臓と同じく恵美の鼓動もドクンドクンと脈打っているのがわかります。
 恵美はウェアの上から私の手をそっと押さえて握りました。

 恵美に私と由香里の先ほどの行為を見られていたのです。
 その手の動きは(私にもして)と言っているようでした。
 今更手を引っこめることもできず、掌で恵美の豊かな胸の隆起の先端を転がすように揉んでしまいました。

(んっ…)

 しばらくすると、私の手を強く掴み小さな吐息を漏らしました。彼女も軽く逝ってしまったようです。
 恵美は私の手を抜き取ると由香里の方にそっと戻しました。
 そして何事も無かったかのように私に背を向けると窓の方を向いてしまいました。

 私はしばし呆然としていましたが、やがてシートに深く腰掛けると自分の掌を眺めました。
 私の掌は、まだ汗ばんでいました。

(大変なことをしてしまったかも知れない…)

 私は掌で浮気をしてしまったのです。
 このスキーツアーはただで終わりそうも無い。そんな予感がしました。
 そして、その予感は的中することになるのです。

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−−−②処女の代償

その日の夕方、彼女を自宅まで送り届けると、ご両親が私の分の食事を用意して待っていました。

バーベキューでの事や私が独身寮に住んでいる事、会社での仕事の内容、立場など、それはもう事細かに彼女は調べ上げ、ご両親に話していたようです。
社内の女性達の情報ネットワークは侮れません。 その情報量の多さには恐怖すら覚えたものです。

食事が済むと明日もお休みだし寮に特に帰る用事が無いなら今夜は泊まっていきなさいと再三勧められました。
彼女もそうしてと引き止めます。
結局、断る理由も見つけられず彼女の家に泊めて貰うことになりました。

風呂を借りて出てくると真新しいパジャマが用意されていました。
居間のコタツテーブルの上には麻雀牌が並べられています。
確かに親子三人に私が入れば麻雀ができます。
そうか、それが目的だったのかと思わず苦笑してしまいました。
何でも近所の主婦達の間で麻雀がはやっているんだとか。 母親がそれにハマってしまっていたようです。

ルールも覚えたての文字通りファミリー麻雀で、何の心配も無く彼等に合わせて打ち回すことができました。
ルールを教えながら、勝ち過ぎず負け過ぎず、適当に気持ちよく勝たせてあげることができます。
麻雀には性格が出るというのが彼女の父親の持論のようです。 父親は私を気に入ってくれたようでした。

深夜まで麻雀で遊び、寝る段になると、てっきり居間に用意されてると思っていた私の寝る布団は彼女の部屋に運ばれていました。
私は彼女の部屋に泊まる事になったのです。
それにしても、初めて一人娘が連れてきた男をそこまで信用して良いものでしょうか。
というか、たった一日の間に自分は何処までいくのだろう。
まだ結婚する気など無かった私には多少の不安がありました。

彼女の部屋は、ぬいぐるみやらタレントの写真が飾られた女の子らしい部屋で、彼女のベッドの横に私のために敷かれた布団だけが違和感を生じさせていました。

彼女が部屋の灯りを一つ消しました。
私はおやすみと言って彼女に背を向けると本当にそのまま眠ってしまったのです。

何時頃でしょうか。
夜中にふと目を覚ますと、ベッドから私の方をじっと見ている彼女と目と目が合ってしまいました。

(もしかして、ずっと起きてたの?)
(うん。 ずーっと寝顔見てた)
(そっか…。 眠れない?)
(うん…。)
(こっちに…来る?)
(うんっ!)

彼女は嬉しそうにベッドから降りると自分の枕を持って私の布団に入って来ました。

(へへー♪(笑))

本当に嬉しそうにしています。
その顔がとても可愛らしくて思わず額にキスをしてしまいました。

(おデコなんかじゃ嫌…)
(でも…それじゃ俺が止まらなくなる…)
(嫌っ! ちゃんと唇にして!)

彼女が瞳を閉じ唇を捧げています。
もう歯止めが利きませんでした。 どうにでもなれ。 そう思いました。

私はキスをしながら彼女のパジャマの胸のボタンを一つずつ外しました。
そしてパジャマをそろそろと開きました。
ブラはしていませんでした。
昼間スタジアムで確かめた通り、張りのある形の良い乳房が現われました。
淡い色の乳輪の上に小さな乳首が顔を覗かせています。
私はそれをそっと唇で摘むと舌で味わいました。

(あ…嫌…)

Dカップはある彼女の乳房の弾力を確かめました。
片手はパジャマの下のパンティを潜り抜け、割れ目に指を這わせています。
そこはもう洪水のように溢れかえっていました。
でも彼女の体は震えています。

(怖い…の?)

彼女は硬く目を閉じたまま、コクッと頷きました。

(もしかして…初めて?)

再びコクッと頷きました。
バージンは貰えない…。 何故かその時はそう思いました。

(止めようか?)

今度は首を横に振りました。

私は彼女に対する気持ちを切り替えました。
この娘に最後までしてあげよう…。 そう思い始めていました。

私は彼女の股間まで布団の中に潜り込むと、パジャマのズボンとパンティを脱がせました。
そして大きく太腿を開かせます。

(嫌…恥ずかしい…)

身を捩り股間を隠そうとします。

(綺麗だ…とても…)

ぷっくりと膨らんだ割れ目の周りの恥毛と割れ目の中の綺麗なピンクが対照的でした。

割れ目に舌を這わせました。
彼女の体がビクンッビクンッと反応します。
彼女は手の甲で口を押さえ声を出さないようにしています。

私の舌が花びらに閉ざされた小さな蕾を捉えました。
舌でその周りをなぞるように嘗め回しました。

(あ、嫌ぁ…あっ…あっ…あっ…そこ駄目ぇ…もう…もう…)

彼女は私の頭を掴み、腰を跳ね上げました。
軽く逝ってしまったようです。 ビクッビクッと体全体が脈打っています。

彼女は感じやすく濡れやすい体質なのか、あとからあとから蜜が溢れてきます。
そのサラッとした液体はお尻の方まで流れ落ちています。
私はお風呂で拝借したバスタオルを彼女のお尻の下に敷きました。

彼女の膣に指を入れてみました。
そこは何物の侵入をも拒絶するかのように硬く閉じていました。
何とか指一本は入るが二本は無理…。 そんな感じです。
私は充分な固さに達した怒張を彼女の膣口に当てがいました。

(あ…怖い…)

彼女の手が私の腕を強く握り締めています。

(大丈夫…力を抜いて…。 そう…足をもっと開いて…。 そう…もう少し入れるよ?)
(痛っ! あ、駄目っ止めてっ! お願っ…いっ…あっ…あっ…あっ…あっ…くぅぅぅ…。 あーーー!!!)
(ほら、もう全部入ったよ? 大丈夫? まだ痛い?)
(う…ん…。 少し…痛…い…。 あ、抜かないで! このままで大丈夫…このままで…)
(じゃあ、痛くなったら言って…。 少し動かすから…)

私は充分に濡れた蜜壷からゆっくりと抜け落ちる寸前までペニスを引き抜くと、また膣奥深く挿入しました。
最初引きつるような感触があった膣の中が、まとわり付くような感触に変わり、やがて緊張が解けていくのが判りました。

初めての彼女に激しいことは出来ないと、私は膣奥深く挿入したままにして今夜は道を付けるだけにしようと思いました。
そして再び彼女の小さな乳首を唇に含みました。

経験のない彼女は乳首を舐めるだけでも逝ってしまいます。 膣の痙攣がそれを伝えます。
彼女が強くしがみ付いてきました。

私は自分の欲望を満たすのは諦め彼女の額にキスをしました。
彼女は硬く閉じていた瞳を私に向けました。

(美由さんは…まだ…なんでしょ? 私…我慢できるから…)
(でも…)
(私…ちゃんとひとつになりたい…)
(わかった…。 それじゃまた動くからね。)
(あっ! んっ…んっ…んっ…。 あ、嫌っ! 変…変になっちゃう!)
(そろそろ…逝く…)
(来て! あっ! あぁぁぁっっっ!!!)

彼女は必死に口を押さえて声を漏らさないように我慢していましたが、私にドクドクと放たれた瞬間を膣奥で感じ取って思わず声を出し逝ってしまったようでした。
その声は…ご両親にも届いたかも知れません。

二人は息を切らせながら抱き締め合い、しばらくじっとしていました。
やがて私はペニスをゆっくりと抜くと彼女の横に寝転がりました。
彼女を征服した満足感が心を満たしていました。

(まだ、入ってるみたい…。 何か棒が挟まってるような…変な感じ…)

彼女が笑います。

(そう? でも良かった、とっても。 充分大人の体だった)
(子供扱いしないでっ! もう…。 あ、血が付いてるっ! ほらっ!)

彼女が股間を拭ったティッシュには確かに少し血がついていました。
私は慌てて自分のペニスを拭きました。
やはり血が…。
敷いていたバスタオルにも…。

(はっ! もしかして布団に…も?(汗))

付いています…。

(ど、どうしよう…(滝汗))
(畳んじゃえば判んないよ。 何か言われたら生理の血が付いたって言っておくから)
(んな安直な…。 ま、付いてしまったものはしょうがないか。 でも…本当にバージンだったんだな…)
(ホントにホント、バージンだったの! 学校には男の子居なかったし…。
 でも、良かった、好きな人に上げられて(笑)
 ちょっぴり痛かったけど感じちゃった…(照)
 それじゃ…今度は美由さんの番っ!(笑))

驚いたことに彼女は女子高の女友達や雑誌から得た知識を生かし抜群のフェラを私に披露しました。
初めてだというのに最初からジュポジュポと音を立てるようなしゃぶり方をします。
そして私が逝くと口に咥えたまま射精が終わるまで待ちゴクンッと喉を鳴らして飲み込んでしまいました。

(エヘッ飲んじゃった。 こんな味だったんだね(笑))

私達はその日、夜が明けるまでセックスに耽りました。

(由香里をずーっと抱きしめて離さないでいてね?)

彼女は私の腕の中に潜り込むとしがみ付くようにして、やがて深い眠りについていきました。

私は天井の灯りを見つめながら、この娘との今日一日、明日、またこれから先の事を考えていました。
妊娠の心配も有りました。
でも、その時はその時。 もう責任は取る覚悟はできていました。

(この子の事を…俺はまだ何も知らない…。
 でも、こんな結ばれ方もありなのかも知れない。
 この子が俺を選んだのなら…それに応えてみよう…。
 ただ…俺はこの子を幸せにしてあげられるだろうか…)

そんなことばかりを繰り返し考え始めていました。

彼女の思惑通りに私は掴まってしまったのです。
そういう意味では彼女の計画はパーフェクトでした。

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翌朝、内心ビクビクして朝食をごちそうになっていると彼女の父親が顔を出しました。

「おはよーさんっ! 良く眠れたか? そっか、そりゃ良かった。
 娘の事は君に任せたからな好きにしてくれ。
 おぃっ! 彼氏と同じように俺にも納豆くれ、納豆!」

彼女が父親の分の食事を受け取りにキッチンに向かいました。

父親は私に顔を寄せると囁きました。

(由香里はな。 あー見えてもまだ処女だ、処女。 俺が保障する(笑))

そう言いながら私の肩を叩きウィンクしました。
まさか、もう娘さんのバージンは昨晩貰いましたとは言えません。
曖昧に笑うしかありませんでした。


驚いた事に彼女の父親はジャズ界では名の知れたバンドマンでした。
名家の出で、若い頃に家を飛び出し米軍基地で腕を磨いたと。
フランクな性格で一人娘にも友達感覚で付き合っているのが判ります。
母親の方はと言うと、元クラブのママ。
まさに、この親にしてこの子あり。 そんな感じです。

そんな彼女の父親から、いっそ寮を出て明日からウチに住んだらどうだと言われました。

「そうしなさいよ。 パパ以外に男手が有ると私も助かるし」

母親までがそう言います。
両親揃って自由奔放というか、なんというか…。

もはや逃げ道は無い…。

私は先程からテーブルの下で私の股間を握っている彼女との結婚を覚悟せざるを得なくなりました。
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第一章①由香里

私は、入社と同時に独身寮に移り住み、社会人として新たな一歩を踏み出しました。
仕事に忙殺されながらも、いくつかの出会いや別れを繰り返しました。
やがて「ひとみ」との別れ以上に辛い別離もあることを思い知ります。
それは、私を恋愛に対し臆病な男にするのに充分な体験でした。

(あんな辛い別れはもう二度としたくない…。 俺には結婚など、まだまだ先の話だ…)

別れを恐れるあまり「友達以上恋人未満」、そんな関係こそが理想だと思い込み始めるのです。

そんな、入社から三年を経た年の春。
私は、所属部署の新入社員歓迎バーベキューパーティーの幹事を任されることになりました。
私の部署は設計と言う事もあり、当時は庶務の既婚女性が一人居る以外、まったく女っ気の無い職場でもありました。

その頃すでにスキーやキャンプの幹事も任され、それなりの人脈もあった私は、他部署の新入女性社員を動員する事にしたのです。
その結果、新入社員その他の独身女性を15人名ほど確保することに成功します。
私の最初の妻、由香里との出逢いは、そのことがキッカケになりました。
由香里はその年の高卒新入社員の一人として、短大卒の新入社員である恵美を伴って参加してきたのです。

驚いた事に私と知り合った時、由香里は処女のままでした。
由香里は、二度目の今の妻、真由美同様、男好きのする顔立ちと肉感的なボディを持ちながら、カソリック系の女子高という環境がその機会を阻んできたようです。
由香里は社会人となり、縁あって私に処女を捧げた後、瞬く間にその性を開花させていくことになります。

彼女の人見知りしない性格と愛らしい笑顔、マイクロミニにタンクトップという健康的な色気は、たちまちバーベキューに参加した男達を虜にしていきました。彼女を中心に女の子達はゲームやイベントに引っ張りだこでした。
しばらくして、彼女は幹事である私が一人準備作業に追われているのを見て、自ら手伝いを申し出てくれました。
すっかり人気者に収まっている彼女を、裏方作業などで占有することなどできません。
私は君はお客さんなんだから皆と一緒に遊んでて欲しいと断りましたが、勝手に野菜や肉などを取り出すと準備を手伝い始めたのです。

余程親の育て方が良かったんだと思います。
テキパキと私の指示を受けながら、段取りその他を手伝ってくれました。
ただ、彼女が立ったり座ったりする度に白いパンティがチラつき、目のやり場が無いのには困りました。

材料の下ごしらえも終わり、今度は私が火起しのために地べたに這い蹲るようにして炭に息を吹きかけていると、私の向こう側に座り込み面白そうにそれを眺めています。
超ミニでしゃがむ彼女の股間をまともに覗き込む形になりました。
パンティを透かして陰毛の陰りまでも見て取れます。
確かにいい娘なんだけど、男の私からみるとスキだらけで無防備過ぎる。 それが由香里に対する私の第一印象でした。

「おいおい、見えちゃってるぞ」
「えー? あ、ホント! キャッ!」
「あ、ホントじゃねぇよ、まったく(笑) 手伝ってくれてありがとな。 それじゃ、皆に準備出来ましたって言って呼んで来て」
「ハーィ」

彼女は立ち上がり2、3歩走り出すと振り返りました。

「美由さんっ!」
「ん?」
「美由さんだけに… サービスっ!(笑)」

彼女はミニの裾をほんの少し持ち上げ、私にパンチラすると走り出しました。
パンツ見られるのなんて何でも無い。 そんな女子高時代のクセが抜けていないようでした。

そんな彼女は私以外の男達のほとんどから交際を求められたようです。
私はと言うと、確かに気になる存在ではありましたが、所詮まだ子供で大人の女の色気を感じさせない彼女には、正直あまり興味は無かったのです。
それが逆に彼女の関心を引く結果になったんだと思います。
帰り際、わざわざ20歳前後の男女が揃うようにと私が割り振った配車を断ると私の車に向かって走ってきました。

「美由さん、乗せてっ!」
「どした?」
「この後、皆でどっか寄るって言ってたから断って来ちゃった。 美由さんは帰るんでしょ?」
「ん? あぁ会社に戻って機材を返さないといけないから…。 でも、良かったのか? せっかくなんだから楽しんでくればいいのに」
「いいの! また今度にする」
「そっか…。 じゃ家まで送ろう」
「うんっ!」

彼女は嬉しそうに助手席に乗り込みました。

「さ、何処でも由香里を連れてって」
「何言ってやがる。 子供はトットと帰るんだよ(笑)」
「えー? つまんないのー」

そう言って彼女は不満そうに唇を尖らせました。

車の中で彼女は色んな事を話し続け、やがて話し疲れて眠ってしまいました。
私の車で無防備に眠る姿はミニから伸びた生足の間からパンティが丸見えです。

(しょうがない奴だな…)

私は苦笑いしながら彼女の体に、着ていたジャンパーを掛け彼女の住む街へ向って走り出しました。

家のそばまで来た時、彼女を起こしました。

「もう…着いちゃった…の…?」
「ああ。 この辺りだろ?」
「あっホントだ! もー、本当に寄り道しないなんて、女性に対して失礼だよ!」
「ごめん、ごめん(笑) また今度な」
「ホントっ!?」
「んー、他に誘う相手が居ない時は声掛けてくれればいい」
「じゃ約束して!」

彼女が小指を立てました。

「あ、ああ。 約束…」

-------------------------------------------------------------------

それから何日かした梅雨のある日。 休憩時間を利用して彼女は私の部署を訪れました。

「美由ーさんっ!」
「ん? おー久しぶり! 今日はどした?」
「今度アメフト部で試合があるんだけど…。 美由さんに一緒に観に行って貰えないかなぁーと思って…」
「ん? あぁ、いいよ、何人くらい? 誰と誰を誘えばいい?」

その頃、彼女の職務の関係で会社の中を走り回る彼女は、いつも生足ミニスカートという姿で健康的な色気を振りまいて、千人近い人間が働くこの会社の中でもかなり目立つ存在になっていました。

上司や同僚達は、何でお前が他部署の彼女を知っているんだと不思議がっていましたが、彼女とはバーベキュー以来、食堂などで顔を合わすと言葉を交わすようになっていたのです。
何かイベントがあったら、また誘って欲しいと頼まれてもいました。
そんな彼女との会話の中で、バレーボール部とアメリカンフットボール部のマネージャーを兼任で任されていることを知っていたので、私はてっきりアメフト部の観客動員の依頼だと思ったのです。

「えっと…私と二人だけで…なんですけど…」
「えー? デートのお誘いかー?(笑) そっか、他にヒマな奴が居なかったんだな?(笑) いいよ? いつ? どこに行けばいい?」

こちらをチラチラ見ているアメフト部の連中の手前、すっかりアイドルに納まっている彼女と二人で観戦するのは気が引けましたが、耳まで真っ赤になって返事を待つ彼女の顔を見ると、断るのも可哀そうで結局アメフト観戦に付き合うことにしたのです。

-------------------------------------------------------------------

試合当日は朝からシトシトと雨が降っていました。
私が車で彼女の自宅まで迎えに行くと両親がわざわざ外まで見送りに出てきました。

「今日は娘が無理言ってすみません。 ご迷惑じゃなかったですか?」
「いえいえ。 どうせヒマでしたから」
「一人娘で育ったもんだから、もー、ワガママでワガママで…」
「もー! なに余計なこと言ってるのよママ! パパもウチに入って入って! もう子供じゃ無いんだから。 さ、行こっ!」
「あ、おい! えっと…それじゃ今日一日、娘さんをお預かりします。 遅くならないうちに返しますから」

彼女はさっさと私の車の助手席に乗り込んでいました。
彼女は相変わらずの生足、超ミニで、スポーツカータイプの私の車の低いシートに身を沈めるとパンティは丸見えになってしまいます。
これじゃあ両親もさぞかし心配なことでしょう。

スタジアムに到着すると私達は傘をさして観戦しました。 練習試合なのか観客は数えるほどしか居ませんでした。
アメフトのルールなど知らない私にはどこが面白いのかさっぱり判りませんでした。
そのうちに彼女が寒いと言い出したので私は自分の懐に彼女の背中を抱え込むようにして座らせました。

「あったかーぃ。 これなら傘も要らないね(笑)」

嬉しそうに自分の傘を畳みました。
私達は一本の傘の中にすっぽりと納まりました。

「なぁ。 今日はベンチに入らなくても良かったのか?」
「う…ん…。 他にもマネージャーの子、居るし…」
「そっか。 ならいいけど…」
「ね、あの○○番の人、居るでしょ? あの人に付き合って欲しいって言われてるの。 それで今日、試合見に来て欲しいって言われて…」
「おいおい、それじゃ俺が一緒じゃまずいだろ。 見られたら誤解されるぞ」
「いいの。 私には好きな人が居ますって言ってあるから。 そしたら、試合の日にそいつを連れて来いって…」
「もしかして…それで俺を?」
「うん…」

そう言われてみれば確かに○○番はこちらをチラチラ見ています。
私の知らない男ではありませんでした。 確か私より2、3歳くらい年上だったかと思います。

「だけど、なんでまた俺? そりゃあ嬉しいけど…」
「他の人みたいに女の子にガツガツした所が無いし、そばに居ると何となく安心できるの」
「ふーん、そんな風に見えるのか」
「バーベキューの時、女の子たくさん居たのに分け隔て無く接してくれたし、先輩、先輩って男の子達にも慕われてるのに、誰一人手伝わせようとしないで裏方に徹してたでしょ? あれ見てなんかいいな、って」
「そんなもんなのか(笑) まあ、幹事だったからな」
「先輩の女の子達も言ってた。 美由さんが居るならスキーもキャンプもまた行きたいって。 結構ファンが居るみたいだよ? でも気付いて無いでしょ?」
「マジかー? チッ、それを知ってりゃ何人か喰えたかもなー(笑)」
「嘘っ! 会社の子に手を出すような人じゃ無いもん。 噂も聞かないし。 それとも誰か会社以外の所に好きな人が居るの?」
「今は居ない。 俺は甘えさせてくれるような年上の人が好みだからな(苦笑)
 後輩や君ら見てても弟妹くらいにしか思えないし、恋愛の対象にはならないって」
「年上の人かぁ…。 じゃあー…妹でもいいや! それじゃ専属の妹にしてっ!」

彼女がそう言って私の顔を見上げるように振り返った時、一瞬、唇と唇が触れてしまいました。
彼女はその大きな瞳で私の目を見上げ…やがてその瞳を閉じました。

ドキッとしました。

(いいのか?)
(いいの…)

そんな会話が勝手に私の心の中で交わされてしまいました。

私は彼女の頬に指を添えると唇を重ねていきました。
驚いた事に子供だとばかり思っていた彼女の方から舌を入れてきました。
私の口の中に遠慮がちにほんの少し差し出されたそれを、私は慈しむように舌で絡め取りました。
片手は彼女の張りのある乳房の重みを感じ取っています。

長い時間だったかも知れません。
唇を離すと彼女は私の目を見つめながら言いました。

「エヘッ(笑) あっという間に妹じゃなくなっちゃったね(笑)」

私は久しぶりの口付けに興奮しながらも、とうとう会社の子に手を出してしまったと少し後悔し始めていました。
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「ビギニングⅡ」は、社会人となった後の最初の結婚から現在の妻、真由美との出逢いまでを書いたものです。

まさか自分が離婚経験者になるとは思いませんでしたが、仕事漬けの人生なんてロクな事にならないのだと痛感したものです。

「だって、仕事なんだからしょうがないじゃないか」

巷間よく聞く言葉ではありますが、自分に当て嵌めてみると果たして本当にそうだったのかな、と。

今にして思えば、ただ日常の煩わしさから逃げる為の口実に使っていたような気がします。

ともあれ、その経験から得たものは、男性であれ女性であれ、外に出て働く以上は「家庭」も「仕事」も全て背負ってナンボの人生だと思えるようになったことでしょうか。
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−−−④彼女からの手紙【完】

翌朝、私を起こす人は誰も居ませんでした。
私がゆっくりと目覚めた時には彼女の父親もお兄さんも家には居ませんでした。
私は遅い朝食を頂き、次の便のバスで帰ることになりました。
私達はバスに乗ってからずっとお互いの手を握り締めていました。

バスが駅に着くと列車の時刻までの間、彼女はその地方都市にある有名なお城を案内してくれました。
彼女は持参した小さなカメラをポケットから取り出すと、私だけの写真を何枚も撮り始めました。
私が彼女の写真を撮ろうとしても頑なに拒否されました。

「駄目。 貴方に彼女ができた時、私の写真を持っていれば、きっとその子が傷つく」

それが理由でした。
何度も頼み込み、やっと城主の銅像の前で彼女と二人の写真を取ることができました。
二人で取った写真は、後にも先にもこれ一枚きりとなりました。

そんなプチ観光を彼女と過ごした後、彼女は駅まで私を見送ってくれました。
彼女は蒲鉾やら燻製やら、食べ物ばかりのお土産を紙袋いっぱい買い込み私に持たせてくれました。

そして一人分の切符を買い求め、それを私に…。

私達はホームの隅で人目もはばからず抱き合い、そして唇を重ね合いました。

発車の時刻になりました。
私は列車のステップに乗り込み彼女を振り返りました。

「ね、最後にもう一度、顔を良く見せて」
「嫌だ」

今にも泣き出しそうな自分がそこに居ました。

「バカね…。 ほら…」

彼女はハンカチを私に渡しました。
それを受け取った途端、今度は私の方がみっともないほど泣けてくるばかりで、彼女が涙を見せることはありませんでした。

「いい? ちゃんとご飯、食べるのよ?(笑)」
「子供扱い…する…なよ」
「そう…だね。 ごめん…」

発車のベルが鳴りました。

彼女は私の頬を両手で引き寄せると最後の口付けをしてくれました。

ベルが鳴り終わりました。

「別れたこと、きっと後悔させてやる…んだ…」
「バカね、そんなこと…」


「もう、とっくの昔に後悔しているわ(笑)」


ドアが閉まりました。

彼女はドアの窓ガラス越しに私の掌に手を当てると微笑みました。
そして動き出した列車から二三歩下がると、笑顔で私に小さく投げキッスの仕草をして小さく手を振りました。

しばらく私の姿を追った後、やがて私に背を向けるとコートのポケットに手を入れて歩き出しました。


そしてもう二度と…

私の方を振り返ることはありませんでした。

-------------------------------------------------------------------

私は卒業と同時に下宿を引き払い、社会人としてのスタートを切りました。
会社勤めにも慣れ始めた初夏の頃、彼女からの分厚い封筒が下宿の住所から転送され実家に届いていました。

私がそれを受け取ったのは、さらに二ヶ月も経ったお盆を挟んだ数日間の夏休みに帰省した時でした。

その封筒には差出人の住所も名前も書いてはありませんでした。
中からはお城で撮った私だけが写った写真と、彼女と相手の方が二人並んだ結婚写真が出てきました。
あの城主の銅像の前で撮ったはずの彼女と二人の写真は…やはり入っていませんでした。

彼女が選んだ人は見るからに優しそうな人でした。
彼女を大事にしてくれそうな人でした。
彼女の手紙には、結婚した相手は問屋の三男坊だと書いてありました。

手紙には私と彼女が出逢った時から、彼女が別れを決めた時までの経緯が書かれていました。

彼女は元々はごく普通のOLでした。
勤めていた会社の人と不倫関係になり、いつまでも煮えきらない相手の態度に嫌気が差すと、家族にも内緒で会社を辞めてしまったのだそうです。
そして半ば自暴自棄になり、夜の仕事を転々としたあげく一年足らずの間に「あの仕事」に付いたのだそうです。

彼女のマンションにその不倫相手が尋ねて来たことは何度かあったそうです。
でも、彼女がドアを開けることはありませんでした。
そして、私と映画館で出遭ったあの日。
お店にその不倫相手が突然訪ねて来たんだそうです。
奥さんとお子さんと別れたから一緒に暮らして欲しい、と。
もう二度と会えないし…会いたくなかった人だった…。
ましてやその店の中では…。

彼女の出した結論は、店長に頼み、その不倫相手を店から追い返して貰う事でした。
その不倫相手が店から叩き出された後、彼女は店の制服のまま顔見知りのおじさんが窓口に居るあの映画館に飛び込み泣いていたのだそうです。

そこで私と出逢いました。

彼女は痴漢から助けた私を、最初はからかい半分、次に一人身の寂しさを紛らわす相手、やがて本当の弟のように思い、私と付き合っていたのだそうです。

そんな私からプロポーズされた時は本当に嬉しかった、一緒になれたらどんなに幸せだろうと思ったのだそうです。
でも…いつか歳の差の事や「あの仕事」をしていた事が…きっと二人の間の障害になるに決まっている…。

(貴方は…貴方の両親や友達に私の事を何と言って紹介するつもりだったの?)

彼女が手紙で問いかける一言に私は答えることができませんでした。

彼女の事が好きだ。

自分が判っているのはたったそれだけで、それ以外の事など何も考えていなかったからです。

(きっとそんなこと、貴方は考えた事も無いよね)

彼女の手紙は続きました。

それを考えると怖くて、とても結婚なんかできないと思った、と。
「あの仕事」をしていた事を本当に後悔したし、その事を知る私とは決して結婚できないと思った、と。
そして…もっと早く知り合いたかった、と。

(貴方が貴方のままでいて、私が私じゃなかったら、きっと貴方と一緒に暮らしていたと思う)

私と知り合わなくても、いずれは田舎に帰り、見合い結婚でもするつもりだったのだそうです。
私との事があり、ただそれが早まっただけだ、と。
自分の過去を知らない人なら誰でも良かった…。
相手がどんな人でも最初から結婚するつもりだった…。

私の前から姿を消した二ヶ月の間に実家に戻り、以前から紹介されてた知り合いのおばさんからのお見合いの話を受けたのだそうです。

彼女の手紙は続きました。

-------------------------------------------------------------------
 彼から結婚指輪をもらいました。
 大きな粒のダイヤモンドのリングで高かったんですって。
 だから、炊事や洗濯の時にはいちいち外さなくちゃいけないし…。
 失くすのが怖くて、結局はめていないの。 おかしいでしょ?

 でも、貴方からもらった指輪の方は、ちゃんとはめているの。
 私にだけ見えて、他の誰にも見えない指輪。
 そのことが私をとても幸せな気持ちにさせてくれる。

 指輪のこと本当にごめんね。
 薬指を見るたびに貴方のことを思い出します。

 ね、ちゃんとご飯、食べてる?
 食事の支度をしていても貴方のことを思い出します。

 星空を見上げては、あの時歓声を上げた貴方のことを思い出します。

 貴方からもらった物は他にもたくさんあるのに、私の方からは何一つ返せなかったよね。
 だから私、貴方にお守りを送ることにしたの。
 きっと、貴方のこと守ってくれると思うから。
-------------------------------------------------------------------

封筒から丁寧に折られた半紙が出てきました。
彼女は大事な所の縮れ毛を半紙に挿んで送ってきたのです。

-------------------------------------------------------------------
 私だと思って大事にしてね。
 そして、少しでいいから私のことを思い出して。

 私のこと、忘れてって言ったのは、ぜんぶ嘘。
 私、まことが好き。
 もう一度、まことに会いたい。
 もう一度、まことに抱かれたい。
 ねぇ、駄目なのかな。
-------------------------------------------------------------------

彼女の手紙は中途半端に、私が応えようが無い言葉で終わってしまっていました。

私はもう一度、彼女とそのご主人の写った写真を見つめました。

何度見返しても…写真の中の彼女の相手の人は見るからに優しそうな人でした。
何度見直しても…彼女を幸せにしてくれそうな人でした。

彼女は、彼女の事ならすべて知っていると思い込んでいた私ではなく、彼女の事など何も知らないその人を選んだのです。
私は彼女のそんな想いを、時間を置いてから受け取ったことで素直に受け止めることができるようになっていました。

人は時として…何も知らない方が…何も聞かない方が…良いのかも知れません。
大事なことは…すべて出逢った時から始まる二人で過ごす時間の方なのですから…。

彼女と私を運んでくれた、あの列車の始発駅と地方都市の駅は、彼女との別れの思い出の場所になりました。
どちらの駅も当時の面影などまったく残していませんが、今でも出張などで訪れると切なくなる場所には違いはありません。

その東北の地方都市を結ぶ時間は驚くほど短縮され、人も、風景も、慌しく過ぎ去るようになりました。

でも、彼女と過ごしたあの頃は、すべてがゆっくりと、たおやかに流れる時間の中に漂っていたような気がするのです。
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−−−③最後の夜

30分ほどして家に戻るとコタツの上にお茶とおはぎが用意されていました。
普通のおはぎより一周りも二周りも大きいおはぎです。

父親は相変わらずムスッと押し黙ったままテレビを見ていました。
彼女のお兄さんはすでに隣の部屋で大きなイビキを掻いて寝ています。

私は居間のコタツに入ると黙々とおはぎを口に運びました。

やっと食べ終わりお茶をすすっていると父親は私の顔を見る事も無く自分の分のおはぎの乗った皿を私の方に押しやりました。
私は父親の横顔とおはぎを交互に見つめ、その意味を理解すると『いただきます』と言って、またそのおはぎを黙々と食べ始めました。

『ねー、おはぎのお代わりはー?』

彼女が台所からの声を掛けてきました。
私は慌てて口の中のおはぎを飲み込みました。
さすがにもうこれ以上は入りません。

「もぅ…」
「持って来てやれ(笑)」

私が断るより早く彼女の父親の言葉が重なりました。
振り返るとそこに、この家に来て初めて見た彼女の父親の笑顔がありました。

私はまた届いたおはぎを黙々と食べ始めました。
あんなに好きだったおはぎが…今は私を責め立てました。

(これはきっと…彼女を泣かせた罰だ…)

その時は本気でそう思いました。

でも、何だかとても暖かい罰だと思いました。

-------------------------------------------------------------------

私の布団は一番奥の彼女の部屋に敷かれていました。
彼女はお兄さんの部屋に寝ることにしたようです。
ふすまを隔ててお兄さんの大きなイビキが間断なく続いていました。
そしてひんやりと冷たく、重い布団。
この分では一晩中寝られないだろう。そう覚悟しました。

重い布団は潜り込めば息苦しく、私はお兄さんのイビキを聞きながら何度も寝返りを打ち続けました。


どれくらい経った頃でしょうか。
コトッと音がしてふすまが開き、浴衣を着た彼女が入って来ました。
唇に指を当てシッと私の言葉を制しました。

(お兄ちゃんのイビキがうるさくてゴメンね? 私も眠れないの(笑))

彼女は私の枕元に手を付くと私を見つめました。

(ね、しちゃおっか)
(え、でも…)
(大丈夫、誰も起きたりしないから)

私も彼女が欲しくて堪らなかったのです。
私がコクッと頷くと、彼女は立ち上がり浴衣の紐を解くと、浴衣で私の頭を隠すようにして跨りました。

(ね、舐めて…)

そこはすでに熱く濡れていました。 慣れ親しんだ彼女の味がしました。
私は彼女のすべてを吸い尽くすようにして嘗め回しました。
彼女の口から甘い吐息が、お兄さんのイビキと交差するようにこぼれました。

やがて立ち上がり浴衣の前を合わせると、私の布団の中に滑り込むように入って来ました。
そして腰の辺りに潜り込むと私の浴衣の裾を割り、手早くブリーフを脱がせました。
彼女の唇は私の先端部分を捉えたまま、時折舌が這い回りました。

最初それは、刺激するというよりもただ味わっている。 そんなしゃぶり方でした。

ずいぶん長いこと吸われ続けたと思います。
私の意識からお兄さんのイビキの音が消えました。
私の脈動が始まりました。
そんな風に二回、彼女の唇で吸い取られました。

三回目。
私の分身がもうこれ以上我慢できない状態にあることを知ると、彼女は私の腰に跨り、それに手を添え膣奥深く迎え入れました。

(あぁ…やっと彼女の中に…)

彼女の乳房を両手に掴みながら興奮がすでに頂点に達していた私は、根元まで飲み込んだ彼女が二三度腰を上下させただけで、あっけなく果ててしまいました。
彼女は膣奥深く迎え入れたまま、膣をぎゅっと締め付け私の脈動が収まるのを待ってくれました。

(ね、今度は私…)

彼女はペニスを飲み込んだまま、膣をぎゅっぎゅっと間歇的に締付け始めました。硬さはすぐに回復しました。
彼女は私と体を入れ替えると太腿を抱えるようにして私を迎え入れました。
私は彼女に体重を預けるようにして彼女の両足を抱え上げると奥深くまでゆっくりとした抽送を繰り返しました。
今度は彼女を満足させられるまで持つ…。
そう思いました。

(もう…もう…んっ…んっ…あっ…奥まで入るっ…入っちゃうっ!)

一瞬、彼女の子宮口に先端が潜り込んだような気がしました。
彼女は私の背中に絡めていた両手両足を更にペニスの根元まで迎え入れようと私の腰を強く引き付けました。
ビクンッビクンッと彼女の体が痙攣を繰り返しました。

ぎゅぅぅぅ。

それに合わせる様に一段と強い膣の収縮が始まりました。
私は搾り出されるようにして彼女の体の奥深く放出を繰り返しました。
彼女が長い吐息を漏らしました。

(お願い…。 もう少し…このままで…いさせて…)

しばらくじっとしていた彼女は、やがて私のそれが萎えていくのを感じ取ると股間に手拭いを当てながら私のそれを抜き取りました。
そして私の股間と自分の股間を丁寧に拭い始めました。

気が付けば隣の部屋からは相変わらず断続的なお兄さんのイビキが響いています。

(すっごく気持ち良かった…(笑) それじゃね。 お・や・す・み…)

私の顔に挨拶の文字の数だけ口付けをすると布団から出て立ち上がり浴衣を羽織りました。

(あ、こっちの子にも…)

彼女は悪戯っぽく笑うと、もう一度浴衣を大きく開き私の顔を跨ぎました。
そして私の顔を見下ろしながら花びらを指で開きました。

(見える? この子からの最後のキス…)

ブチュッと私の唇に彼女の花びらを押し当てました。
私がそれに舌を入れ、上端にある突起を吸おうとすると、

(あ、駄目っ! そんなことしたら、また…。 もう寝よ? お願い…)

彼女は私の唇から名残惜しそうにそれを離すと、再び腰を上げ、浴衣の紐を結び直しました。

そしてもう一度私に口付けをすると、後ろ手で手を振りながら、隣の部屋へと消えていきました。
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−−−②夜空

彼女の実家は東北の寂れた炭鉱町にありました。
その地方都市の中心部にある駅から1時間以上もバスに揺られて行った…。
そんな記憶があります。

その町がまだ往時のように石炭を産出していたのかは分かりません。
ただ、活気がある町とは言えませんでした。
真っ白い残雪と対照的な黒い板張りの住宅が規則正しく並ぶそんな風景が、ある目的を持って生まれた場所である事を物語っていました。

彼女は長屋の一画の家の引き戸を開けると途端に東北訛りになりました。
実際の会話はその地方独特の訛りで交わされていますが、私にもそのニュアンスは多少ですが伝わりました。

彼女は玄関に出迎えた母親に、私が会社のアルバイトの子で、こっちに旅行に来たついでに荷物を持って貰ったのだと紹介しました。
母親は重い荷物を持たされて大変だったでしょうと私を居間に上げてくれました。

座敷に上がると彼女の父親にジロッと睨まれました。

「この子、あんまりお金持ってないのよ。 今夜は泊めて上げていいでしょ?
 明日、お礼にお城を案内してあげるって約束しちゃったの」
「泊まるってドコにだ」
「私の部屋。 さ、こっち、こっち」

彼女の部屋は一番奥の部屋でした。
家の中をだるまストーブの煙突が横切り、どの部屋もとても暖かく感じました。
その家は玄関と台所、居間、お兄さんの部屋、彼女の部屋と、縦に走る廊下に沿って並んでいました。
彼女は部屋に入るなり私に抱きつき唇を重ねてきました。

「お父さん、怒ってるみたいだ」
「いつもあんな風だから気にしないで(笑)
 あ、お風呂行ってきなさいよ。 この町のお風呂は共同浴場でタダだから(笑)」

彼女に勧められるまま、ドテラと私には小さ過ぎてカカトの入り切らない長靴を借り、タオルをマフラー代わりにして風呂屋に向かいました。

シーンと静まり返る町に私の長靴のパコパコという音が響きました。

そこはごく普通の小さなお風呂屋さんという感じでした。
違いがあるとすれば番台に誰も座って居ない、ということでしょうか。
時間も午後3時頃と早かったせいか中は私一人でした。

私が大きな浴槽に浸かっていると片肌に刺青をした男の人が入って来ました。
そして体を流し風呂に入ってくると、一目見てこの町の人間じゃ無いと判る私に話し掛けてきました。

「あんちゃん、どこからだ?」
「……です」
「おー、うちのひとみと同じかい(笑)。 そーか、俺の妹もな、今日…」
「その、ひとみさんを送って来たんです。 旅行のついでに…」

刺青を見てスッカリその手の職業の人だと思った私は、もう怖くて怖くて彼女に口裏を合わせるしかありませんでした。

「はー? あっはっは。 そうかぁ、ひとみにこんな可愛い坊やがおったんかぁ(笑)』
「いえ、そんな間柄じゃあ…」
「ええよ何でも。 そうか、ひとみが…(笑)。 おい、あんちゃん! 背中流してやっからコッチ来なっ!」
「あ、いえ…」
「いいから、いいから。
 アイツはな。 今までウチに誰かを連れて来た事なんて一度も無いんだ。
 こんな汚ねぇトコまで連れて来たってことは…
 少なくとも、あんちゃんがひとみに嫌われてる奴じゃ無ぇってことだ。
 だろ?(笑)
 さ、座れ」

半ば強引に背中を流されました。 私もお返しせざるを得ませんでした。
私はその人の背中を流し始めました。

「知ってるよな?
 ひとみはな今度結婚するんだ…
 あんな男だか女だか判らん奴と…」
「は…はぁ…」
「あんちゃんはいい体してっけど、金は持ってなさそうだなぁ(笑)
 学生さんか? そっか。
 お、ありがとよ。 さ、帰るか」

風呂屋のまん前に、地べたに張付きそうなくらい無茶なシャコタンにした車が停まっていました。
チェーンは巻いてあるけど…、とても雪道を走れるとは思えませんでした。

「さ、乗んな」
「あ、はい」

それはもう、雪道にガタンガタンと突き上げられるように走り、彼女の家までほんの僅かの距離を走っただけで尻が痛くなるほどでした。

「ひとみー、坊やと風呂で会ったぞー」
「はーぃ…。 もう、お兄ちゃんと会っちゃったの? 驚いたでしょ(笑)」
「うん。 あ、いや…(汗)」
「なに言っとる。 この坊やに背中流してもらっただけだ。 なぁ?(笑)」

町を出て行く家族が多い中で、彼女のお兄さんは炭鉱で働く残り少ない人の一人でした。
彼女の父親は体を痛め炭鉱の仕事からは遠ざかっているんだそうです。
その父親は相変わらず民放の映らないテレビを見ていました。

夕食が用意され酒を勧められました。
彼女が母親とお兄さんと楽しそうに話を続けている間、私は時折り曖昧に笑うのが精一杯でした。
その地方の訛りの強い言葉を私が理解できる部分など殆ど無かったからです。

すでにかなり酔っていました。

食事が終わり、コタツの上の片づけが済むと、彼女は酔い醒ましに散歩に行こうと私を誘いました。
またドテラと、私には小さ過ぎてカカトの入り切らない長靴を借り、パコパコと音を立てながら彼女の後に続きました。

外は雪灯りで道が光っていました。
所々に在る小さな街灯と、残り少ない家族が住む家の窓から漏れる灯り以外何もありません。

「すぐそこに私の通った小学校があるの」

彼女は白い息を吐きながら指を指しました。
通りの外れに小っちゃな木造校舎の小学校がありました。
彼女は私の手を引くと除雪された道を辿り、広い校庭の真ん中まで私を連れて行きました。

両側に除雪した雪がうず高く積まれ周囲の灯りを閉ざしました。

「ね、見て」

彼女が空を見上げました。

『うっわぁー、すっげぇーっっっ!!!』

雪で切り取られた空。
そこには満天の星が広がっていました。

「ほらっあそこっ!」

こんなにも星というものは降るものなのでしょうか。
しばらく見上げている間にも星が一つ二つと蒼い空から剥がれ落ちてきます。

「ね? これならお願い事する時間、たっぷりあるでしょ?(笑)」

彼女が笑いました。

「ホントだ。 でも、もういいんだ。 叶わないこともあるって解ったから(笑)」

彼女の顔が少し曇りました。
私はそれを見て、しまった、と思いました。

『ごめん…』

二人の言葉が重なりました。

彼女は私の胸に顔を埋めると私の手を握り締めました。
彼女が顔を上げ、そして私がその瞳を見つめると自然に唇と唇が重なりました。

やがて私の手をぎゅぅっとさらに強く握ると肩を震わせ始めました。
彼女の涙が私の唇にも流れて落ちていきました。

私は残る手で彼女の背中を抱き、そしてまた空を見上げました。

星達はまだそこに…。

そして流れ星がまたひとつ…。

(代りに何か言ってくれ…)

私が何かを言葉にすれば…きっとまた…彼女を泣かせてしまう…。

その背中を強く抱き締めながら、私は彼女の嗚咽が収まるまでその場所に立ち尽くしていました。
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最終章①北へ

列車が走り出し、彼女が広げてくれた弁当を食べ終わった頃、車掌が検札にやってきました。
私は慌てて財布を取り出しました。
彼女はそれを制して私の分の切符を買い求めようとしました。

「勝手に付いて来たんだ! 自分の分くらい自分で払うよっ!」
「駄目。 私を無事に送り届けてくれるんでしょ? 守ってくれるんでしょ? これはその為のバイト代」
「また、そんなこと…」

彼女は私の言うことなど無視して車掌に目的地までの料金を支払ってしまいました。

「いい? 私の為にお金を使う気持ちがあるなら自分の為に使って。
 私、その方が嬉しい。 それに第一貴方…

 お金持ってるの?(笑)」

「うっ…そ、それは…(汗) ちょっと…足りない…だけ…だよ…」

私は彼女が支払った予想以上に高額な料金に正直驚いていました。
それを見て、覚悟は決めていたのです。
帰りは鈍行に乗って帰ればいい。 それでも足りなきゃヒッチハイクで、と。

「やっぱり…(笑)」


しばらくして車掌が再び現われると二人のベッドの準備を始めました。
私達はその間に洗面所に行き顔を洗うことにしました。

化粧をすっかり落とした彼女の笑顔はショートカットの髪と相まって、あどけない子供のように思えました。
彼女が歯ブラシを貸してくれました。
そして私が顔を洗い終えるのを待ち、今度は私の顔をタオルで拭き始めました。

(もー、そうやって、すぐ子ども扱いするっ!)
(いいから、ちゃんとこっちを向いて(笑))

(ね。 私達にはベッドなんて一人分でいいよね?(笑))
(うーん…。 それじゃあ寝台の分のお金、返して貰って来よっか(笑))
(うん。 頑張ってね(笑))

まだしばらくは、こうして二人だけの時間を過ごすことが出来る。
それが二人の気持ちを高ぶらせていたのかも知れません。
私達は些細な冗談にも顔を見合わせてはクスクスと笑い転げました。

車掌が立ち去るのを見計らい、私達は上段のベッドに二人並んで毛布に潜り込むとカーテンを引きました。

(やっぱり…ちょっと狭くない?)
(こうすればいいでしょ?)

彼女が私の体の上に乗りました。 そしてセーターをたくし上げました。

(ね、外して…)

私は彼女のブラを外しました。
彼女はポンポンと脱いだものを下のベッドに放り投げました。

(私だけ裸? まことは脱がないのかな?
 さ・せ・て・あ・げ・な・い・ぞ・?(笑))

彼女はそう囁くと、私の耳たぶを噛みました。
私は慌てて彼女と体を入れ替えるとすべてを脱ぎ去りました。

(これでいい?)
(うん。 それじゃ、バッグからティッシュ持って来て)
(何だよ! そんなの裸になる前に言ってよ!)
(文句言わないの(笑) さ、早くぅ…もぅ我慢できないんだけどなぁ…)

私はスッポンポンでベッドから降りると彼女のバッグからティッシュを探しました。
彼女はカーテンから顔だけ出すと、あっちだこっちだと笑いながら指図しました。

(あなたったら、丸見えざますわよ?(笑))
(覚えてろ!)

私はやっとのことでポケットティッシュとタオルを掴むとベッドに上がり彼女の毛布を捲り上げました。

(キャッ!) 彼女が体を隠しました。
(駄目。 見せて。 全部) 彼女の膝を開かせました。
(あ、いや…)
(見ちゃった(笑) これでおあいこだ) 彼女の素肌の上に乗り毛布を被りました。
(もーっ! させてあげないっ!)
(じゃ、抱いてあげないっ!)
(ふーん、私の体、要らないの? 我慢できるの? こんなにおいしそうなのになぁ…)

彼女は乳房に両手を添えると乳首を私の胸にこすり付けました。

(あ、もう、起ってるし) 彼女が笑いました。
(ひとみだって…ほら…もう濡れてる…)
(あん…入れて…。 まことの…)

私達は一つになりました。
声を出すことも動くこともままなりませんでしたが、それで充分でした。
一度二人揃って逝くと今度は彼女が上になりました。
そして、また二人揃って逝くと彼女は股間に私を挟み込んだまま、私の胸に頬を当てました。

(ね…)
(うん?)
(このまま…寝てもいい?)
(うん)

ギュッと一際強く抱き締められました。

やがて彼女の寝息だけが私の耳に届きました。

私は彼女の髪を撫でながら、どうしようもなく好きで好きで堪らない自分の気持ちが整理できずに、彼女の体をただ抱き締めていました。

-------------------------------------------------------------------

翌朝早い時間に彼女が降車する駅に着きました。
私達は駅前のビジネスホテルに入り、そしてまた愛し合いました。
ただお互いの体を貪るようにして爛れた時間を過ごしたのです。


(ね、私のウチに来ない? 今日は貴方を帰したくない…)
(ここに一緒に泊まろうよ)
(今日帰ると伝えてあるの。 心配すると思うから…)
(でも…いいの?)
(う…ん…。 明日また貴方を送るわ、この駅まで…)

彼女は私の胸に顔を乗せるとつぶやきました。

(それで本当に…貴方のこと…忘れるわ…)
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−−−④旅立ち

私は彼女の乳房を吸いました。
彼女の乳首も初めて甘噛みし、うなじから背中、太腿、ふくらはぎ、足首へと唇を這わせていきました。
そして彼女の体を仰向けにすると、つま先から徐々に彼女の中心部へと舌を這わせていきました。

カーテンも無くなった部屋は、外から漏れてくる灯りだけで彼女を鑑賞するには充分な明るさを保っていました。

(全部…見せて…)

彼女はコクッと頷くと自ら股間を大きく開いて私に見せてくれました。
彼女の恥毛は割れ目の上の方だけを残して綺麗に剃毛され、そこだけが子供のようでした。
中からとてもエロティックなクリトリス、小陰唇が覗いています。

(剃っちゃったんだね…。 綺麗だ…)
(貴方が喜ぶと思ったの…。 恥ずかしいから…そんなに見ないで…)

私は彼女の花びら全体を頬張る様にして嘗めました。

(美味しい…。 それに…ツルツルして、とても舐めやすい…)
(あ、いやっ…恥ずかしいこと…。 貴方に食べて欲しかったの…。 いっぱい、いっぱい、食べて欲しかったの…)
(奥まで見せて…)
(あ、嫌っ! そんな所…、開いて見ないで…)
(嫌だ。 全部、目に焼き付けておくんだ)

彼女の勃起したクリトリスに唇を寄せると舌で弾くように転がしました。
彼女の花びらを両手で広げるようにして唇で摘み、蜜壷の奥まで舌を差し入れました。

(あぁ、いい…。 お願い…。 私が貴方の事を忘れられないように…たくさん…して…)

私は彼女のそばに置かれたコンドームを取り出すとペニスに手早く被せました。

(こっちに入れるよ? ここは…僕だけのものだから…)

彼女はその瞳を閉じたままコクッと頷きました。

-------------------------------------------------------------------

翌日、寝台列車で帰るという彼女を、その始発駅まで見送りに行きました。

私達はホームの柱の陰で長いキスを繰り返しました。
彼女の豊かに膨らむセーターを捲り上げ乳房を掌で揉みました。

私が欲しがっていることを感じ取ってくれたのだと思います。
彼女は出発までの時間を確認すると私のコートの懐に入り、そしてミニスカートを捲くり上げるとタイツとパンティを降ろしたのです。

(もう一度…最初に出逢った時のように犯して…)

私は彼女の体を支えながら挿入しました。
彼女の中心部はとても熱く濡れていました。

二人の姿は少し不自然に見えたかも知れません。
行き交う人が柱の陰の私達をチラッと見ては通り過ぎて行きます。

(あっ…見られちゃう…。 あ、また…。 ね、強く…ああ…感…じ…る…)

しばらくして彼女の膣が脈打つように私の分身を締め込み始めました。
私は彼女の体を背後から強く抱き締めながら、彼女の深奥へと大量の樹液を迸らせ続けたのです。

-------------------------------------------------------------------

出発の時刻が迫っていました。

(これが最後…)

そう言うと彼女は私の胸を正面から抱き締め私の唇に軽く触れました。


もう彼女は、口も利かなければ目を合わせようともしませんでした。
売店で駅弁を一つ買い列車に乗ると、彼女は私の居るホームとは反対側の端の席に座ってしまいました。
そして私とは反対側の窓の外を見て、二度とこちらを見ようとはしませんでした。

発車のベルが鳴りました。

『ひとみっ!』

窓ガラスを叩いて彼女の名前を叫びました。
彼女は一瞬ビクッとし、顔を両手で覆ってしまいました。

ベルの音は思ったより長く鳴り続けたような気がしました。

(ゴトン…)

列車が動き始めました。

『まことっ!』

突然、彼女は立ち上がり振り返ると私の名前を呼びました。

「…ハァハァ…何?」

彼女は目の前に息を切らした私が立っているのを見て、目を丸くして驚いています。

『ど、どうして!?』
「…ハァハァ…、一人にしたくなかった。 だから送って行く…。 もう決めたんだ」
「バ…バカ…」
「いいんだ、バカでも」

自分でもどうして乗ってしまったのか解からなかったのです。
私は不貞腐れたようにドカッと彼女の前の席に座りました。
そして窓の外に流れる夜景を眺めました。

窓ガラスに映る彼女は、顔を覆ったまま、いつまでも泣き続けていました。
やがて顔を上げると涙を拭いながら私の隣に座りました。

「私…今まで色んな男に泣かされて来た…。 でも…、貴方には一番泣かされた…。 本当に酷い人ね」
「ごめん…」
「バカね…そういう意味じゃ…」

彼女は微笑み、そして私の唇にキスをすると、さっき買ったばかりのお弁当を取り出し始めました。

「ね、お腹空いてない? これ、食べる?」

彼女は私の返事も聞かず、そして涙を拭いながら、一つしかない弁当の紐を解き始めました。
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−−−③彼女からの贈り物

やがて硬さを取り戻した私のペニスに手を添えると、熱く濡れた花芯に押し当て、静かに腰を降ろしていきました。
そして、ゆっくりと腰を上下させていきました。 私のペニスの先端が時折子宮口まで届くのが判ります。

(ああ…いい…。 もっとちょうだい…貴方の…)

徐々に彼女の動きは早くなり登りつめていくのがわかりました。

(ん…ん…ん…あっ…)

突然、彼女は乳房を押し付けるようにして私にしがみ付くと全身を硬直させました。

ぎゅっ…ぅぅぅ…。

膣全体がペニスを締め上げるのが判り、我慢し続けていた私もそれが限界でした。 彼女の子宮に向かって激しく脈動を繰り返しました。
二人はしばらくそのままでじっとしていました。
やがて彼女は私の胸から顔を上げ、私の目を見つめました。

(まだ…できるよね?)

彼女はそう言うと私のペニスを蜜壷の奥深く飲み込んだまま、膣をギュッギュッと締め付け始めました。
その快感に私の体は再び硬さを取り戻していきました。
彼女はそれを膣の奥深い所で感じ取ると私の分身の根元を握り、手馴れた仕草でコンドームを付けさせました。
そして私に背を向けるようにして横向きになると私の怒張を愛液にまみれたアナルへと導いたのです。

(ね…、今度はこっちに…)

私がペニスに手を添え彼女の小さな蕾にあてがうと彼女は大きく息を吸い込みました。

(お願い…そこは初めてだから…やさしくして…そっと…)

そこは彼女の言葉とは裏腹に、硬く閉ざされたままでした。
私は彼女の蜜壷から蜜をすくい上げては、その入り口の中と周りに充分に塗り込みました。
そして最初に親指を挿入させると中の広さを確認しました。

(あっ嫌っ!)

強い締め付けがあり指の進入をも阻んでいます。

(お願い…息を吐いて…力を抜いて…)
『あ、駄目っ! やっぱりできないっ! あ、嫌っ! 駄目っ! 抜いてっお願いっ!
 抜いてーーー!!!あっあぁぁぁ…入って来る…入って来ちゃうぅぅぅ…うっ…うっ…うっ…』

私は彼女が逃げようとするその肩を羽交い絞めにするようにガッチリと掴むとペニスを根元まで一気に押し込みました。

『あっ…あっ…嫌っ…あぁぁぁーーっ!!!』

収まってみれば彼女の中は窮屈で、ペニスの先端から根元まで、特に根元辺りを万力のように締付けています。
私は彼女の乳首を摘むようにして乳房を揉みながら、ゆっくりとした抽送を繰り返しました。

『あぁ…嫌っ!…お尻で逝っちゃう…あぁそんなに奥まで入れちゃ嫌っ…嫌っ、逝くっ逝くっ!』

彼女は乳房を掴む私の手を握り締めると、うずくまる様にして全身を痙攣させました。
私はそれに構わず、彼女の体の前に手を回し彼女の股間に手を差し入れました。
彼女のクリトリスの小さな突起を皮を剥く様にして親指と人差し指で軽く摘みました。
中指と薬指、そして小指を使い蜜壷の中を掻き回すように埋没させました。
それは彼女が背後から犯される時にとても好んだ弄り方でした。

『あっ駄目っ! そんなにいっぺんにいじっちゃ駄目っ!
 お尻とお○んこを同時に苛めないで、お願いっ! あぁ、また逝くっ! 
 また逝っちゃう・・・お願いっ! 駄…目…あぁっ…溢れちゃう…』

ビシュッ! ビシュッ!

私の手を激しい勢いで濡らしながら、ひときわ強い痙攣が彼女を襲いました。
私も永遠に続くかと思われるほどの射精を放ち続けました。

二人とも肩で息をしながら、しばらく動けずにいました。

(嫌…私…。 お尻で逝っちゃった…)
(アナルに入れたのなんか初めて…。 でも感動した…。 ずっごく良かった)
(そう? 良かった…。 私の体で貴方に上げられるもの…他に無かったから…)

やがて彼女は素肌に毛皮のコートを羽織ると、たくさんのタオルを持って来ました。
そして濡れてしまったホットカーペットの上にそれを敷き詰めました。

二人は再び、向かい合うように横になりました。

(髪、短かくしちゃったんだね…)
(そうよ? …変?)
(ううん。 似合ってる、とっても。 長い髪も素敵だったけど… なんだか別人みたいだ…)
(そう別人…。 もう貴方の知らない人になると決めたの)
(ど、どういうこと?)
(私、田舎に帰って結婚する事にしたの。 母もうるさいし…。 相手の人はとても優しくていい人)
(そんな…)

(お願い、聞いて。

 もう決めたの。

 私に貴方は似合わない…。

 だから…

 貴方は貴方で、早くいい娘を見つけて幸せになって)

「勝手過ぎるよっ! そんなのっ!」

(そうよ? 知らなかった?(笑)

 私は勝手な女なの…)

彼女は顔を上げバッグを引き寄せると中から小箱を取り出しました。

(はい、誕生日のプレゼント。 私のも給料の三か月分くらいだと思う。

 でも…

 貴方がくれようとした指輪ほどの価値は無いわ(笑))

今日が私の22回目の誕生日である事を彼女は覚えていてくれたのです。
彼女に促されるまま、中身を取り出すとズッシリとした重量感のある金色に輝く腕時計でした。

(気に入った?)
(う…うん…。 でも、こんな高そうな物…僕には似合わない…)
(じゃあ、早くそれが似合う男になりなさい。
 彼女ができたり、その時計に飽きたら貴方の指輪を失くしたあの場所に捨ててくれればいいわ。

 売ってもいい。

 とにかく…それで、おあいこにして)

(こんなものより、僕は…)
「もう何も言わないでっ!

 明日になったら私も… ここを出て行くんだから…」

彼女は私の頬に両手を当て涙を零しながら熱い唇を重ねてきました。


(貴方が気が済むまで私を抱いて。

 そして気が済んだら、私のことは忘れて…

 私も…


 貴方の事は忘れるから…)
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−−−②再会

彼女の誕生日から、ちょうど2ヶ月くらいたった日の事です。

『え、らっしゃーぃ!』

私は失恋の痛手が癒えぬまま、いつものように24時間営業の牛丼屋で夕方5時から夜11時まのアルバイトを再開しました。

卒業まで、あと僅かの日数を残すのみです。

『え、らっしゃ…い…』

一瞬、その人が彼女だとは判りませんでした。
長かった自慢の黒髪を切りショートカットにしたその人は、カウンターの中の私のまん前の席に座りました。

「あの…ご注文…は…」
「並…」

『並一丁っ!』


(コトッ)

私が牛丼を置いても彼女はそれを食べようとはしませんでした。
そんな彼女の事がとても気にはなりましたが、私は他の客の対応に追われていました。

彼女はただ黙って…あちらこちらの客に対応する私の姿を見ていました。

「ごちそうさま…」

牛丼に最後まで箸を付けないまま、彼女はそう言うと私に代金を支払いました。

「ね、アルバイトが終わるのは何時?」
「11時だけど…」
「今日は何か予定はあるの?」
「いや別に…無いけど…」
「それじゃアルバイトが終わったらウチに来て」
「う…ん…」

--------------------------------------------------------------------

彼女のマンションの部屋のインターホンを鳴らしました。

「僕…だけど…」
「鍵は開いてるわ。 入って来て」

ドアを開けると部屋の中は真っ暗でした。

「灯りは点けないでっ! 鍵を掛けたら…お願い…そのままこっちまで来て…」

驚いた事にマンションの中には家具らしい家具は何一つ無くなっていました。
私は手探りで壁を伝うようにして彼女のベッドルームに入りました。

窓から差し込む街明かりで部屋の真ん中に何かがあるのは判りました。

彼女はフローリングの床にホットカーペットを敷き、電気毛布にくるまり顔だけを出していました。
そして毛布の端を少し持ち上げると私に言いました。

(服着たままでいいから、来て…)

私は言われるままに彼女の毛布に潜り込みました。

彼女は毛布の下で全裸で横たわっていました。
そして私の服を一つ一つ脱がせると私の体の上に被さるようにして唇に舌を差し入れてきました。

(なんて暖かくて柔らかい…)

全身が彼女の体温に同化していくのがわかりました。

(冷たいね…貴方の手…。 大丈夫? 寒くない? 手、貸して…)

彼女は私の冷え切った手を自分の股間に挟み込み暖めてくれました。
手首に陰毛のシャリシャリした感じが伝わってきます。
汗ばんだような陰唇にピトッと掌が吸い付くように密着しています。

(お腹…空いてない?)
(バイト先で食べてきたから…)
(そう…。 ね、いつもあんな風に働いているの?)
(うん…。 昼間の人より時給がいいから1日4千円くらいにはなるんだ)

どうだ、結構稼いでいるだろうと、少し得意気だったかも知れません。

(あの時の指輪、いくらしたの?)
(バイト代の…3か月分…)

彼女に食べさせて貰った分、何処かに連れてって貰った分、それらはみんな、あの指輪を買う為に貯金したのです。

(本当にバカね。 それだけあればバイクとか、もっと好きな物が買えたでしょうに…)
(だから… 一番好きなものを手に入れたくて…指輪を買った…)
(バカ…)

私の手が指先まで温まった頃、彼女は私の全身を唇で辿り始めました。
首筋、肩、胸、乳首、わき腹…。
やがてその唇が私の中心を捉えると…その先端に唇を被せていきました。
それは長く続き全身まで吸い込まれそうな気がしました。

『あっ出る! 出ちゃうっ!』
(出して…)

私が射精を繰り返す間、彼女は根元まで咥えたまま、じっとそれが治まるのを待ってくれました。
やがて搾り出すようにして舌で絡め取ると喉を鳴らして飲み込みました。

(ね、もう1回…。 できる?)

私が頷くと、再び私のペニスを喉の奥まで飲み込んでいきました。
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第二章①彼女への贈り物

その女性は、私より7つ年上の28歳のソープ(当時トルコ風呂と呼称)に働く人でした。
私が割のいい夜の時間帯のアルバイトを好んでしていたせいで、その人とは生活のパターンがよく似ていました。
私のアルバイトが休みの時はその人を店まで送り、鍵を借りて部屋で帰りを待っていることが多くなりました。

その人は売れっ子だったようです。
毎日何人もの男の欲望を受け留めては「あー疲れたぁ」と言って帰ってきました。
私はそんな彼女を、大変な仕事なんだなと思いこそすれ、嫌だなと思った事は一度もありませんでした。

「私が誰かに抱かれているのが気にならないの?」
「別に。 それが仕事だと思っているから…」
「ふーん、変わってるね」
「いつも疲れているみたいで…それが可哀想…。 見ていて辛くなる」
「そっかぁ…。 ありがと(チュッ♪) あ、待たせてゴメンね? 今すぐ作るから待っててね?(笑)」

彼女はどんなに疲れていても私には必ず手料理を食べさせてくれました。
休みが合えば遊園地や映画、時には飲みにも連れて行ってくれたりと、年下の私を何かにつけ可愛がってくれたのです。

支払いはすべてその女性が済ませてくれました。
ですが、お小遣いなどの現金を貰ったことなどは一度もありません。

「子供じゃないんだから、男ならお金は自分で稼ぐのよ? いい?」

彼女はいつも、そう言っていました。

キャンパスに顔も出さずアルバイト三昧だった私には多少のお金はありました。
女に奢って貰うのは格好悪いと、せめて自分の分は自分で払うからと言っても聞いてくれる人ではありませんでした。

「何言ってるの子供のくせに。 私が誘ったんだから遠慮しなくてもいいの」

彼女はいつも、そう言っていました。

確かに自分でも子供なのか子供じゃ無いのか、よく分からない年頃ではありました。

彼女は同棲しようとも言いませんでした。
それどころか私が連泊することを絶対に許さない人でした。

「貴方はヒモじゃ無いんだから学校には必ず通いなさい」

彼女はいつも、そう言っていました。


私の就職が決まった年の冬。 彼女の誕生日の日。
私達は彼女の誕生日のお祝いと私の就職内定祝いを兼ね、中華街の高級飯店で食事をしようと待ち合わせをしました。
その頃、中華料理と言えばラーメン、チャーハンしか知らない私に、何種類もの料理を好きなだけ食べさせてあげるからと彼女が予約を入れてくれたのです。

その日、私はアルバイトで貯めた貯金の全額をはたいて指輪と花束を買いました。
彼女はその日、レストランに先に来て待っていました。
私は背中に隠し持っていた花束を差し出しました。

「はい、これ。 誕生日おめでと(笑)」
「わぁ綺麗。 ありがと〜♪」
「へへ。 今日はね、特別な日だからそれだけじゃ無いんだ」
「何?」
「これ…」

私はリボンで結んだ真っ赤な小箱をポケットから取り出しました。

「卒業したら結婚して欲しいと思って…(笑)」

私は彼女に喜んで貰えるとばかり思っていました。

彼女は…みるみるうちに目に一杯涙を浮かべると、私に向かって怒り出しました。

「バカッ! そんなこと… できるわけがないじゃない!」
「ど…どうして?」
「どうしてもっ! もぅ帰るっ!」

彼女は突然立ち上がると、コートを受け取り、そのまま外へと飛び出して行ってしまいました。

私は慌てて小箱を手に掴むと、食べてもいない料理の精算を済ませ、彼女の跡を追いました。
外にはチラホラと白いものが舞い始めていました。


遠くに見慣れた彼女の毛皮のコートを見付けました。
私は港のそばの公園辺りで、やっと彼女に追いつくことができました。
そして彼女の腕を掴んで引き止めました。

「待ってってば! どうしたんだよ。 俺、何か悪い事をした?」
「何も悪い事なんてしてないっ!」

彼女は振り返ると私に抱き付き、そして唇を重ねてきました。

「バカね…。 何も悪い事してないから怒ってるんじゃない…(泣)」

私の胸に彼女の嗚咽が響きました。

「意味が解かんないよ、そんなの…」
「駄目といったら駄目なのっ! 年上だし、第一、私…」
「そんなの関係ないっ! 本当に好きなんだっ! 卒業したら結婚したいんだっ!」
「だから、そんな事できないってば!」

「この指輪…受け取って貰いたくて一所懸命働いたんだ…」
「もうっ! そんな話、聞きたくないっ! 何よっ子供のくせにっ!」

『あっ!』

二人は同時に声を上げていました。

彼女が私の腕を振り払った拍子に、私の手から真っ赤な小箱が転がり落ちていったのです。
そしてそれはコロコロと転がり…港へと流れ込む川の水面に落ちていきました。

「ごめんなさいっ! 私… 私…」

彼女は目にいっぱい涙を浮かべたまま、私の手を振り払うと公園を走り抜けて行きました。

「あ、待って!」

私は彼女の後姿と、ゆっくりと流れていく小箱を交互に見ながら、まず指輪を何とか拾い上げなければと思い、辺りに道具になるような物は無いかと探しました。

でも、そんな物はどこにもありませんでした…。

私は小箱が港からの波に弄ばれ、やがて沈んでいくのを… ただ呆然と見ていました。

彼女が立ち去った小道を振り返れば、ただ粉雪だけが音も無く白い絨毯を紡ぎ続けています。

(本当なら二人で歩けた道なのに…)

そんな小道を、私は一人、歩き出しました。

終電までの間、彼女のマンションに何度か電話をしてみましたが、呼び出し音が空しく返って来るだけでした。
下宿先に帰る電車の中で、冷たい窓ガラスに額を当てると、哀しいのか、悔しいのか、わけのわからない涙が後から後から溢れ出してきました。


その後も彼女のマンションに何度か電話をしてみました。
彼女はお店も辞めてしまったようでした。

気が付けば彼女が住んでいたマンションの前に佇み、彼女の部屋を見上げていたこともあります。
部屋の灯りはいつも消えていて、インターホンにもドアのノックにも応えてくれる大事な人は居ませんでした。


私は指輪と共に彼女まで失くしてしまったのです。
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−−−③翻弄

女性は左手も後ろ手に回すと、器用にズボンから私の分身を取り出しました。
そして後ろ手に回した両手で亀頭と竿を包み込むように絶妙なタッチで触り始めました。

やがて私のペニスから先走り汁が出てくると、それをペニスの先端に塗り付けるようにして掌で刺激してきました。

(やばいっ! 出ちゃうっ!)
(いいわよ? 出して…)

その言葉を待たずに、私はビクンッビクンッと腰を引くようにして何度も何度も射精し続けました。
女性はそれをハンカチで受け留めながらペニスを扱いています。
私の射精が終わったのを確認すると精液でヌルヌルに濡れたペニスを再び扱き始めました。
今逝ったばかりだというのに…また射精感が襲ってきます。

(まだ駄目っ!)

射精直前である事を察知したのか女性は刺激するのを止め、竿の根元をギュッと握り締めました。
私が落ち着くのを待っています。

女性は私に背を向けたまま、ワンピースの裾を持ち上げショーツをお尻の方だけ下げたようです。
私のペニスが冷たいお尻に挟まれたのが判りました。
女性は後ろ手に私の腰に手を当て、少し腰を下げるよう促しました。
そして私のペニスを股間に導きました。

ペニスがシャリシャリとした陰毛とヌメヌメと濡れた蜜壷の感触を伝えてきます。
女性はやや前屈みになると自らの蜜壷に当てがいました。
ペニスの先端が熱く熱を帯びた膣口に当たっているのが判ります。

女性はピンヒールの踵を上げ爪先立つようにすると、ペニスの先端を導きながら、ゆっくりと踵を降ろしていきました。

ニュル…。

(あっ…)

ペニスの先端が狭い膣口をくぐり抜け熱い粘膜に包まれたのが判ります。
やがてそれは…1センチ…2センチと、粘膜の中に飲み込まれていきました。

(あぁ…いい…)

女性は完全に私の分身を飲み込み終えると深い吐息を漏らしました。
女性は前屈みになったまま私のウィンドブレーカーに手を交差させて掴まると私に囁きました。

(ね、ゆっくり動いて…)

私は女性の細い腰を掴むとゆっくりと抽送を繰り返し始めました。
射精感に囚われぬよう、とにかくゆっくりと…深く深く奥まで…そしてヌルヌルと引き出すように…。

(上手だわ…続けて…)

私は右手を女性の前に回すと服の上からクリトリスの辺りを刺激しました。
左手は女性の胸を揉み込むようにしながら…。

女性の子宮口が降りてきて私のペニスの先端に吸い付いてくるのが判りました。
もう我慢も限界でした。
私はさらに奥まで届けとばかり突き上げました。

(んっ…あっ…あっ…)

女性は私の射精の前兆を捉えると顔をあげ髪を振りました。
膣奥全体で私の分身を締付けてきます。

(貴方も…)

ぎゅぅぅぅ…。
私はその締め付けをペニスに感じた瞬間、ドクドクと射精してしまいました。
私のペニスはさらに強く締付けられ続けています。
女性の全身が硬直しているのが判りました。 乳房を掴む私の手に大きな呼吸が伝わってきます。

女性はしばらく挿入させたまま体を密着させていましたが、やがて私のペニスをゆっくりと抜き取りました。
そして服装を正してから私の前に向き直りしゃがみ込むと、私のウィンドブレーカーで顔を隠すようにしてペニスをしゃぶり始めたのです。

やがて最後の一滴まで吸い出すと濡れたティッシュで私のペニスを丁寧に拭き始めました。
自分の手指も拭っています。
そして素早くショーツを足から抜き取りました。

(ね、あいつらが怖いから外まで送ってくれる? はいこれ。 お駄賃(笑))

私の手に、たった今まで履いていたショーツを握らせました。
辺りを見回せば、確かに数人の痴漢らしき者たちが私達を見ています。
すぐそばで先程までの行為の一部始終を見られていたのです。

私は放心状態のままコクッと頷くと女性に手を引かれるようにして映画館を出ました。

雑居ビルの陰まで行くと女性はバッグからカードを取り出し何やら書き込み始めました。
そして私のジーパンのポケットにそのカードを差込むと私の耳元で囁きました。

(無口なのね貴方…。 でも、きっと… 女を泣かす男になるわ(笑)

 ね、したくなったらいつでも電話して。

 それじゃ… またね(笑))

私の唇に軽くキスをすると何事も無かったかのように背を向け立ち去っていきました。

私は手にショーツを握り締めたまま、まるで夢のように通り過ぎた時間がまだ理解できないままでいました。

(俺… 一生の運を使い果たしたかも知れない…)

街角に女性の姿が見えなくなると我に返り、友人との待ち合わせの時間が迫っている事を思い出しました。

(あいつに言っても信じないだろうな、こんなこと…)

待ち合わせの場所に向かって走り出しながら、私はジーパンのポケットから女性がくれたカードを取り出しました。
それには、お店の電話番号を二重線で消して電話番号が書いてありました。

『朝なら居ます。 XXX−XXXX』

(やった! また彼女に逢えるかも知れないっ!)

それが嬉しくて、私はガードレールを一気に飛び越えると猛然とダッシュを始めました。
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−−−②場末の映画館

二度目の痴女体験は大学生の頃でした。

友人との待ち合わせの時間までの暇つぶしにと、数百円で入れる格安の映画館を見つけたので入ってみたのです。
どうせ1時間足らずの時間だし座るまでも無いと一番後ろの壁に立って見ていました。

私が入って間もなくして、女性が一人、入ってきました。
その女性は超ミニのワンピースを着ていて私とは5メートルほど離れた場所に立つと、同じように壁に寄りかかるようにして映画を見始めました。

私は横顔をチラッ見てみました。
ピンヒールを履いたロングヘアのとても綺麗な人です。
その雰囲気から、一目見て風俗関係の人だと判りました。
でも… 何だか泣いているように見えます。

(何で泣いているんだろ。 でも、こんな所に一人で居たら痴漢に狙われるって)

私はスクリーンを見続けましたが、その女性の事が気になって気になって、ストーリーなどまったく頭に入りません。
そうこうしているうちに私とその女性との距離が狭まっているのに気付きました。

(って、おいっ!!!)

なんと、その女性の向こう側に、おじさんがピッタリと寄り添うように立っているのです。
どうやら痴漢のようです。
女性は胸や股間を触ろうとする痴漢の手を振り払いながら腰を引いて逃れようとしています。

彼女は痴漢に追われる様にして私の方へ少しずつ逃げて来ていたのです。

とうとう私のすぐ隣に立つことになりました。
私と痴漢に挟まれる格好でそれ以上逃れることができません。

痴漢は女性が声を上げない事をいいことに、執拗にちょっかいを掛けています。

(こんな所にそんな格好で来たら、そりゃ誰だって痴漢するよ。 でも嫌がってるみたいだしなぁ…)

私は意を決してその女性の左腕をグイッと掴み体を引き寄せると私の体の左側へ立たせるようにしました。
そして何か言いたげな痴漢の目を睨みつけアゴであっちへ行けと促しました。
痴漢は諦めてその場を離れて行きました。

(ありゃあアンタが悪いよ)

痴漢を誘うような格好で入って来た女性に少し腹を立てていたのです。
私は女性を無視したままスクリーンを見続けました。
映画のことなど、どうせ頭に入らないのは判っていましたが、そうするしかありませんでした。

(えっ???)

女性が私に体を寄せてきました。
ノースリーブの腕が腕組みした私の腕にピッタリと張付いています。
心臓がバクバクし始めました。 でも女性の顔をまともに見る事ができません。

私の腕のその部分だけが汗を掻き始めたのが判ります。
やがてその女性は、私の腰に腕を回すと胸を押し付けるようにして頭を私の肩にもたれるようにして寄り添ってきました。

「痴漢から助けてくれてありがと…。 しばらく貴方のそばに居させてね?」

何か返事しなきゃと思うのに、乾ききった唇がパクパク動くだけで何も言葉が出てきませんでした。

(ウフッ…可愛いのね…)

全身が緊張で金縛り状態でした。 情けない事に膝までガクガクと震え出しました。

小心者の私は女性をナンパした事も無く、まっとうに生きてきた男です。
それまで何人かの女性と付き合ったこともあり童貞でもありませんでしたが、こんなに綺麗で大人びた色気を漂わせる女性とは一度も話をしたことが無かったからです。

(寒いわね、ここ)

確かに館内は冷房が効き過ぎて寒いくらいです。
女性は私の前に立ち、私の手を取ると、私が体の前に組んでいた腕を降ろさせ、その手を自分の胸の辺りに巻きつけさせました。
要するに私が女性の後ろから抱き抱えるような格好です。
そして、私が羽織っていた股下まである長めの丈のウィンドブレーカーの懐に潜り込むようにして体を包み込んでしまいました。

知らない人が見たら、私達は仲睦まじいカップルに見えたと思います。
でも私の膝はカクカクし続けています。

その女性の体温と共に髪からはとても良い香りがしました。
今まで嗅いだ事の無いような甘い香り…。

形の良いヒップの柔らかさも薄い布地を通して伝わってきます。

(やばいっ! 俺、思いっきり起ってきた!)

私は腰を引き、分数の割り算を頭に浮かべ思考を逸らそうとしました。
私の分身はそんな事にはお構い無しにムクムクと鎌首をもたげ始めました。
それに気付いたのか、女性はクスッと笑い、バッグからハンカチを取り出し唇に咥えるとバッグを私の手に持たせました。

(いい? じっとしてるのよ?)

なんとその女性はウインドブレーカーの中で後ろ手に手を回すと、掌で私の股間を抑えるようにして触り始めたのです。
そして既に私の硬さが充分なのを確認すると今度はジーパンのファスナーを焦らす様にゆっくりとゆっくりと引き降ろしていきました。

(ジッ…ジィィィー…)

ジーパンの中に手が入って来ます。 やがてそれはブリーフの中に…。

私の怒張はしっかりと… その女性の掌に握られてしまいました。
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第一章①電車の中で

私は女性に対しまったく免疫も無い多感な時期に、痴漢、いえ痴女に出遭いました。
しかも二回も。

今まで生きてきた中で、男同士で自慢できるような事と言ったら、おそらくこれくらいのことしか無いと思います。

初めての痴女との遭遇は、まだ高校に電車通学していた頃のことでした。
その日の朝、満員電車に乗り込むと、私はいつものように混み合う出入り口付近を嫌い、車両の中ほどまで進みました。
そこで両足の間にカバンを挟む様にして置き、文庫本を取り出すと対面シートの肩の部分の取っ手を片手で掴み、そして読み始めました。

(ぷにゅ)

私の文庫本を持つ左手の肘に何かが当たりました。
誰かの体に当たったのは判りましたので、失礼の無いよう私は自分の肘を体に密着させるようにして引っ込めました。

(ぷにゅ)

また肘に何かが当たります。
満員電車の中、私はこれ以上詰めることもできません。

私は顔を上げ、窓の外を見るフリをして窓ガラスに映る私の隣の人物を見てみました。
20代後半のくらいの整った顔立ちのスーツ姿の女性でした。
スーツの襟を形の良い胸が押し上げています。 Dカップはありそうな…。

その女性は私と同じように窓の方を向いていました。
電車は短いトンネルに入り、窓ガラスが鏡のように車内を映し出しました。

(あっ…)

その女性は私を見ていたのです。
窓ガラスを通してハッキリと目と目が合ってしまいました。
そして… 微笑まれたような気がしました。

その頃まだ純情だった私は、慌てて視線を本に戻しました。
たったそれだけの事なのに心臓が早鐘のように鳴り出しています。

私は自分の肘の辺りを横目で見てみました。

なんと、その女性はスーツの襟からブラの透けるブラウスに納まった胸を突き出すようにして私の肘に押し付けているのです。

私の全神経が肘に集中してしまいました。
読んでいる本の内容などまったく頭に入りません。
おそらく耳まで真っ赤になっていたと思います。

その女性は柔らかい胸の頂き辺りを、ゆっくりと回すように私の肘に押し付けてきます。
私の肘は女性の乳首が硬く尖り始めたのを感じ取りました。

(やばい! 起っちゃう!)

乳首のコリッとした適度な硬さの感触が肘に伝わってきます。
それは時折離れてはツンッツンッと私の肘を突付き、先端だけで触れては乳房全体を押し付けたりと私の肘を弄びました。

(俺…誘われてる? どうしよ…どうしよ…)
(やめとけ。 下手に手を出して「痴漢っ!」って騒がれたらどうするっ!)
(何言ってんだっ! 今すぐ振り返って乳揉めっ! 今すぐにだっ!)

私の降車駅までの約10分間、私の心の中で天使と悪魔が取っ組み合いの喧嘩をし始めました。
もう文庫本の文字に焦点すら合いません。

天使と悪魔の決着が付かないまま、電車は私の降車駅に着いてしまいました。
その女性も降りる駅だったようです。 私の前を歩いています。

(声を掛けようか…。 勇気を出せっ! 出すんだっ!)

でも…。
小心者の私は彼女の後姿を見送るだけで終わってしまいました。

その女性とはその後何度か遭遇し同じ目に遭いましたが、結局、小心者の私からは何もできませんでした。

(痴漢って男だけじゃ無い… 女だって痴漢することがあるんだ…)

それは自分にとって一つの衝撃でした。
その女性の生の乳房も見たことが無いのに、その感触だけはしっかりと肘が覚えていました。

私は駅のトイレに走りこみ、遅刻ギリギリまで自慰行為を繰り返したのです。
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女性とはどういうものなのか。

それを私に教えてくれたのは、他ならぬ思春期から青春期に出逢った何人かの女性達でした。
その一人一人が、女性の持つ『性』そのものを私に教えてくれたのです。

当時の事を振り返る時、彼女達との間に生まれた小さなエピソードの一つ一つを鮮明に覚えているのなら、それはそのまま私の心の宝物なんだろうと思いました。
それが喜怒哀楽のどれに繋がる記憶であっても、やはり宝物であることには変わりはありません。

そんな彼女達との出逢いや別れ。
それはそのまま私自身の再出発のスタートラインになりました。

もう30年近くも昔のことです。
でもあの時、彼女達と出逢わなければ…今の自分は無かっただろうとすら思えてくるのです。

タイトルの『ビギニング(beginning)』には、そんな想いを込めてみました。

彼女達への語り尽くせない感謝の気持ちと共に…
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⑰再び私達夫婦の事【完】

「パパっ、来たよっ!」

どうやら、引越しのトラックがやって来たようです。

あの日以来、妻は私の事を時々「パパ」と呼ぶようになりました。
正直ムッとして文句を言ったことがあります。

「二人で居る時は「貴方」って呼ぶのに人前では「パパ」って言うのは何でだよっ!
 しかも、腕にぶらさがるようにして店の人の前でそれを言ったら、まるでパトロンみたいじゃないかっ!
 それとも何か? 歳も10歳しか違わないというのに、君の父親だとでも言うつもりかっ???」

言い終わってから、あっと思いました。
妻が幼い頃に父親を亡くし、女手一つで育てられた娘であることを思い出したのです。

「そうだよ? 他に質問は?」
「うー…」

その時一言も言い返せなかったせいで以後一切「貴方」と呼ぶことすら無くなりました。

私達夫婦のもう一つの大きな変化は、立場がスッカリ逆転してしまったことでしょうか。
以前の妻は、私の腕につかまり斜め後を寄り添うように歩いていました。
今は私の手を取ると私を引っ張るようにして歩きます。
そして、この私に… この私に向かって、何やかやと指図するようになりました。

ある日の事です。 妻が買い物から帰ってきました。

「パパ、今すぐ裸になって」
「は?」
「いいから早くっ! シャツもズボンも脱いで。 そのトランクスもっ!」

私が裸になると、妻は私の足を片足ずつ持ち上げさせ、真新しいパンツを私に履かせました。
そして、両手でパンツの腰骨の辺りを掴むとキュッキュッと私が爪先立つほどパンツを持ち上げ、股間を締付けました。
その履かせ方は、まるで幼児に対するそれです。
妻が私に履かせたのは、黒色のビキニパンツでした。

「これ…勃起したら、頭、出ちゃうと思うんですけど…(困) 第一こんな趣味の悪いの履けませんが?」
「勃起しなけりゃいいでしょ? それにもう履いてるじゃない。 じゃ次これ」

妻はガサゴソと新しいコットンパンツを紙袋から取り出し私に履かせました。
次に妻が取り出したのはボートネックのトレーナーでした。
その胸の辺りには何やら大きな絵が…。

「頭下げて。 そうそう。 いい子だからジッとしててね」
(この私に… この私に向かって、子供扱いですか?)
「うん、正解。 似合う、似合う」

妻は、パチパチと拍手すると私の足元に散らかったビニール袋などを紙袋に詰め、

「いい? 着てなきゃ駄目だよ? この後、食事に行くんだから」

そう言い残して部屋を出て行きました。 嵐のような時間が過ぎ去りました。
私は姿見に映る自分の姿を見て、今日は一歩も外に出たくないと思いました。
私には選択権も無くなりました。

妻は最近「パパは丸くなったね」と良く言います。 体型がというより性格が、だそうです。
そうかも知れません。 何も考えず、妻の言いなりに過ごす時間が心地良いのです。

「食器は洗ってくれるようになったし、お風呂場も掃除してくれるし、偉い偉い」

妻に頭を撫でられると、次は洗濯物も取り込みに行きたくなります。
私はその気持ちをグッと堪え、踏ん張りました。
冗談じゃ無い、そんな尻に敷かれたような軟弱な夫になってたまるかっ!

最後の家財道具を運び出すと結婚以来住み慣れた家に別れを告げました。
隣家の○○君にも挨拶しました。

「来年は頑張れよ!」

彼の浪人生活が2年も伸びたのは間違いなく妻のせいでしょう。
彼は私に目を合わせようとはしません。
彼には色んな意味で申し訳ない気がしています。

妻の露出癖は相変わらずです。
時と場所を妻なりに選んではノーパン・ノーブラで過ごしています。
ですが見せる相手は私だけになりました。
他人の目を盗んでは私を挑発し、その反応を楽しんでいます。
妻に言わせれば、その瞬間ドギマギする私の反応が面白いんだそうです。
露出に限らず卑猥な行為のすべては私が対象になった。
そんな感じです。

このあいだ、四国に讃岐うどんを食べに行きました。
満席の店の中で、私は大盛り、妻は小盛りのうどんを注文し長椅子で食べていると、先に食べ終わった妻が「パパ、ほらほら…」と私に言いました。
妻は、他の人には見えないようにしてミニスカートの裾を持ち上げ、ツルツルに手入れされた割れ目を露出していました。
私は思いっ切りうどんを吹き出してしまいました。
妻の言い分は「おかずが無くて可哀想だったから」の一言でした。

透ける水着も私が喜ぶから着ています。
最近では私が喜びそうなエロい下着を通販で見つけては内緒で購入したりしています。
この間は、どうせ捨てるブラだからと裏地を取り去り、自作の透けブラを作ってました。
そして私が帰宅すると、それらを身に着け下着姿のまま私に抱きついてくるのです。
そんな時、必ずと言っていいほど玄関先でそのまま妻を抱いてしまいます。
今はパブロフの犬の気持ちが良く解かります。

セックスレス夫婦になる以前の妻とのセックスは非常に味気ないものでした。
セックスの時、妻が積極的に何かするということは、まったくありませんでした。
私が頼めば上になったり下になったりと言う事は聞いてくれるのですが…。
んー…それじゃダッチワイフと変わらないと思いませんか?

でも今はまったく違うのです。
私が喜びそうな事を、あれやこれやと考え出しては私に試しています。

浮気でも何でも妻の好きにすればいい。 その気持ちは今も変わりはありません。
でもあの日以来、妻は私以外の男性とは一切接触しなくなってしまいました。

確かに妻が接触した男達は、体験談に書いたような「妻の合意」が得られるような人達ばかりではありませんでした。
妻にとって有害となる痴漢も多々居ました。 元々犯罪行為なので無害の痴漢と言うのも変ですが。
それらから妻を守るにはそれなりにエネルギーを必要とします。
妻が嫌がるようなことをすれば妻の態度でもそれとなく判るし、時には妻自身の口から「あの人に○○された」と言ってくる事もありました。
そういった人達には、妻とは別の場所で二度と妻に近づかないように私からお願いしてきたつもりです。
妻に嫌われるようでは私にとっても存在理由が見当たらない訳ですから、丁重にお引き取り願うしかないのです。

ただ最近は妻が、「あの人に○○されたー」と何でもかんでも報告してくるので「もーそれくらいいいじゃない、許して上げなよ」とこちらがそれらの男性を擁護する始末です。
というか、そんなことでイチイチ起こさずに私をゆっくり寝かせて欲しいんですが。

そんな最近の妻を見ていると、最初から好き好んで他人に抱かれたくは無かったんだな、と今にして思います。
私も妻も、この三年間の行動については、お互い相手の事も自分の事も、一切口にしませんから真偽の程は定かではありませんが。

私は妻と結婚してからこの方、妻以外の女性に目をくれた事など一度もありませんでした。
信じられないでしょうけど本当です。 私が女性にもてない訳ではないんですけどね。
妻には「いや、パパは男にもてるタイプだ」とスッパリ切り捨てられていますが、まだまだ言い寄られることだってあるんです。
「それじゃ、君は何で俺を選んだんだ」と妻に問えば「ボランティア」の一言。 まさに一刀両断です。

でも、本当に妻以外にはまったく興味が無いのです。
私の「妻が」誰かに覗かれたり「妻が」誰かに抱かれたりすることに興奮する性癖も、多分その表れだったんだと思います。
そしてその時の「妻の」反応が見てみたい…。 まぁ屈折しているのは確かですが。

妻も私以外の男には、まったく興味が無い人間なんだと思います。
妻に聞いた訳ではありません。 ただ、そう考えると妻の取った行動の多くが納得できる気がするのです。

この三年間の性的体験を通して得た、私達夫婦間の不思議な一体感は、ジグソーパズルの最後の一つを嵌め終わった時の感じに似ています。
一度お互いに性交渉を絶ち、性に関して様々な体験をしたことで、自分の心と体の中の足りないものを知り、探してみたら、それはやはりお互いの心と体の中にあった…。
おそらく、そんなことなんだろうと思います。

最後に残っていた荷物をキャンピングカーに運び終わると、私達は新居に向かい出発しました。
私達の新居は郊外の戸建住宅です。 私の50歳の節目と二人の再出発の意味も込め思い切って買い替えました。
ここからは1時間足らずの距離です。

引越しの1ヶ月ほど前、荷物を整理していて、お宝映像の詰まった8ミリビデオテープが100本近く出てきました。
それからは毎晩のように徹夜してテープの取捨選択作業が始まりました。
捨てる物(私にとっての超お宝映像以外の物)はすべてパッケージを破壊しテープを引き出した上でハサミで裁断です。
文字通り、気の遠くなるような作業です。
裁断した磁気テープは途轍もない量にかさばりました。

強力磁石で消去を試みましたが映像は消去しきれませんでしたし、環境問題から燃やすこともできず、いくら妻を覗かせたい性癖を持つ私でも、さすがに妻のビデオを売ったり譲るわけにもいきません。
結局、裁断することにしたのです。

あの日以来、家の中でも妻は私から決して離れようとはしません。
常に一緒に居ます。 書斎はもちろん風呂までも。
そう。 トイレ以外は。
いや、トイレに立つ時も「どこ行くの?」って聞かれる時があります。
家の中に居てトイレに立つ時、イチイチどこに行くのかと奥さんに聞かれる旦那が他に居たら教えて欲しいと思います。

とにかく、妻には極秘の作業を予定している私にとってはマンツーマンディフェンスを掛けられた状態です。
このプロジェクトは妻が寝静まった深夜に決行することになりました。

ある晩、黙々と作業をしていると、突然ガチャリとドアが開いて、妻が目をこすりながら「パパー、も1回しよー」と入って来ました。
私は心臓がひっくり返るくらい驚いて、

(も1回しよっじゃねえよっ! トットと寝とけよっ! いや、その前に…、もう煙も出ないってばっ!)

声には出しませんでした。 私が妻にそんなこと言える訳ないですから。
絶叫しそうになった、ただそれだけのことです。

「さ、もぅ遅いし、明日は早いし、外は寒くなったし、ローンは始まるし、ちゃんと寝よ? な? な?」

もう家の中にも安息の地は見当たりません。

新居に向かい出発して間もなくすると連日の仕事疲れから私は生あくびの連発です。

「目、覚ましてあげよっか?」

妻が危険な目をしています。
最近よく見かける何かを企んでいる時の目です。
妻はシートベルトを外すとパンティを脱ぎました。
そして、ドアにもたれる様にして私の方に下半身を向けると、その足を広げました。

「ねぇ見て…」

私の大好きな妻の部分を、妻は惜しげも無く指で広げて見せてくれます。
膣口まで覗くほど開いた妻の卑猥な姿に、私の分身もズボンの布地を押し上げ始めました。、

「やだなぁ、貴方の目を覚まさせてあげようと思っただけなのに、こっちの子も目が覚めちゃったの? やれやれ、仕方ないな」

そう言うと妻は、私の股間からペニスを取り出し咥え始めました。

「おいおい、危ないって」
「貴方は運転に集中してて。 真由美はこの子と遊んでるんだから。 ねー?」

私のペニスに話しかけるように、そして愛しそうに唇で咥えると、喉奥まで飲み込み始めました。
しばらくして、弄ばれ続けたペニスに射精感が押し寄せてきました。
妻はそれを察知すると唇を離し、

「ねぇ見て…真由美の○○○○も…もぅこんな…」

トロトロと愛液に濡れた局部を指で押し広げ、私に見せ付けました。
パブロフの犬が頭の中を駆け回り始めます。

私は通りすがりにコンビニを見つけると駐車場に車を乗り入れました。
そしてズボンを下げシートを倒すと、妻を私と向き合うように跨らせました。
妻の膣奥まで、ヌルヌルとペニスが飲み込まれていきます。

「あぁ、いぃ… 私、すぐ逝っちゃうかも…」

通りがかりの人がこちらを見ています。

「あっ嫌っ! 見られちゃう! 真由美の○○○○、覗かれちゃう!」
「見たいやつらには見せてやればいい」

妻の膣奥の子宮口の感触をペニスの先端で味わいながら、再び射精感が押し寄せてきました…。

「出すぞ!」
「私もっ! 来てっ、来てっ、一緒にっ、一緒にっ!」

ガクッガクッと妻が腰を刻みます。 私のペニスが大量の精液を妻に流し込み続けています。

「パパ…」

妻はそう言うと、私の体を強く抱き締めました。

新居に越してから荷物を片付けるのに1ヶ月以上かかりました。
何だかんだと妻の目を盗んではビデオテープの裁断作業です。
ハサミを握る握力も増しました。指にはタコまで出来ました。

撮った時にはあれほど興奮させてくれたビデオも、ライブの妻ほどには私を興奮させてはくれません。
結局、4本残して全部処分しました。
この4本も特に残しておきたいというわけでなく、ただ、何となく、です。

この4本の妻を盗撮したビデオには過激な映像など入っていません。
妻の露出行為も無く、ただ画面中央にプールや海で一人で佇む妻の姿を捉えただけの何の変哲も無いビデオです。
そのテープには、画面から私が立ち去った後と、私が戻った時の妻の表情が映っています。
私が戻る時、妻の表情に光が差すのがわかる。そんなビデオです。
可愛いらしい妻の表情はすべて私だけに向けられていた。
そんなことを気付かせてくれたビデオです。

毎日毎日、私が妻の顔を見るたびに、いえ、私が妻を見ることで、妻が美しく綺麗になっていく、そんな気がしています。

そんな妻は、今もベッドにも行かず、私の膝を枕にして安心しきったように眠っています。
妻の横顔を眺めながら、ずっと心に引っ掛かっていた、あの時妻が私につぶやいた「私も生きてるのかなぁ」の言葉の意味が解かったような気がしたのです。

妻は私がそばに居ることで、見守って貰える安心感に浸っていたのだろうと。
そんな些細なことで、自分が生き、生かされている喜びを見出していたのだろうと。

妻にとって私は父親でもあり子供でもあるのです。
父親であり続けるために、彼女が甘えたい時には好きなだけ甘えさせてあげようと思っています。
子供であり続けるために、時には私からもワガママを言ってみよう。 そんなことも考えます。
僅かに残る私の夫としての立場など、セックスの時だけで充分なのですから。


妻の横顔を見つめながらその頬に手を当てると、妻が眠たげに目を覚ましその瞳を私に向けました。

「なあに?」
「なぁ…知ってるか? 俺は君を愛してるんだ」
「知ってる…」
「いや、たぶん君が思ってる以上にさ」
「じゃあ、それを教えてくれる?」
「ああ、少しずつな」
「だーめ。 いーまっ!」

妻は私の膝枕のまま体の向きを変えると、私のペニスを取り出し始めました。

「もう、起たないよ」
「そうなの? んー…それじゃ吸っててもいい?」

私は頷きました。

妻は赤子のようにそれを唇に咥えると、その瞳を静かに閉じました。
そして、時折思い出したようにそれを吸っては、またウトウトとし、やがて深い眠りに落ちていきました。

私は妻の髪を撫でながら、ただその横顔をずっと眺め続けているだけでした。

【真由美】 【完】  
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⑯邂逅

静寂が続きました。
レストルームの中はあちらこちらから寝息が聞こえるだけです。
妻の体を味わいつくした痴漢達も戻って来る様子も、新たに来る様子もありません。

妻はまた誰かが来る事を待ち続けているようでした。
さらに30分くらい? 経った頃でしょうか。
妻は諦めたのか、タオルケットの下でモゾモゾし始めたのが見えました。
やがて顔を出すと私の方を見ています。
起き上がりました。
ちゃんとムームーを着ています。
妻がレストルームを出て行きました。

数分が経ち、私は妻のことが心配になり始めました。
そして、妻を捜しに行こうかと起き上がりかけた時です。
妻が戻って来ました。
そして真っ直ぐに私の方に近づいて来ました。
私は寝ているふりをしました。

(待ってたのに…)

今にして思えば、妻は確かにそう呟いたんだと思います。
大浴場に備え付けられていたボディソープの良い香りがしました。

(そっか… シャワーを浴びてきたのか…)

妻が突然私の唇にキスをしてきました。
私はビックリして目を開けました。

「ど、どうした?」
「ううん、何にも!」
「こっちに移ってくるといい」

私は隣のリクライニングシートをアゴで指し示しながら言いました。

「嫌っ! こっちがいい!」

妻は私のタオルケットの中に潜り込んできました。
そして私の体の上に乗り上がって来ると、妻はタオルケットで二人の全身を覆ってしまいました。
タオルケットの中は、はからずも二人だけの世界になりました。

「二人して、ここでこんな格好はマズイだろ」と、声を潜めて言う私。
「全っ然っマズク無いっ!」と、頬を膨らませて怒った顔をする妻。
「んーーー、ま、いっか」と、もはや無理やり納得する私。

私は壁際の柱とリクライニングシートとの間の床にタオルケットを敷き直し、妻と二人で横になることにしました。
そして二人の体にもう一枚のタオルケットを掛け、妻の体を抱き寄せました。

妻は私の胸に耳を当てると目を閉じ、私の胸の鼓動を聞き始めました。

「動いてるね」
「当たり前だよ。生きてんだから」
「私も生きてるかなぁ…」
「何だよ突然」
「ねぇ…」
「ん?」
「私の事、愛してる?」
「愛してるよ」
「嘘っ!」
「コラコラ。 誠心誠意、愛してますって」
「誓える?」
「誓うって、誰に。 キリストに? 神に? 仏に?」
「そんな、死んじゃった人になんかじゃなくって、真由美にっ!」
「わかった! わかったから…そんなに大きな声、出すなよ(困)」

私は宣誓のポーズのつもりで小さく右手の掌を妻に向けました。

「宣誓…」

妻はその手を取り左乳房に当てさせると自分の手を重ねました。
妻の重量感のある乳房の重みと乳首の硬さが私の掌に伝わってきます。

「あ…貴方の手…感じる…。 続けて…」
「私は真由美を愛しています…」
「世界中の誰よりも、が足りない」
「私は真由美を世界中の誰よりも愛しています。 真由美様に右、誓います、マル。 これでいいか?」と言いました。
「ん、宜しい。 じゃ何でも真由美の言うこと聞く?」
「聞くよ。 と言うか、いつも聞いてると思…うっ…ぷ」妻は私の唇を指で摘んでそれ以上言わせないようにしました。
「それじゃあーねー…んーとねー」何を照れているのか、妻の顔が赤く染まり始めました。
「何だよ。 早く言えよ」
「海とかぁ…山とかぁ…車の中とかぁ…プールとかぁ…サウナとかぁ…遊園地とかぁ…人のいっぱい居るトコとかぁ…」
「おー、いっぱいあるなぁ(笑) わかったよ、連れて行けばいいんだろ、連れて行けば(笑)」
「ちっーがーうっ! 最後まで聞きなさい!」
「はいはい」
「例えばこーゆートコでもぉー…」妻の顔はよほど恥ずかしいのか真っ赤です。
「うん。」
「真由美が…抱いてって言ったら…抱いてくれる?」

心臓を掴まれた気がしました。
それは、私が妻から一番聞きたかった言葉だったからです。

「真由美が抱いてって言わなくても抱いてくれる?」

妻は今まで私に言えなかった言葉を、やっとの想いで言い終えると瞳を輝かせて私の顔を覗き込みました。
私の返事を待っているのです。
私は妻の言葉が内心嬉しくてドキドキしていましたが、今さら何だ、と半分意地もあり、そっけない返事をしていました。

「あ、ああ。 いいよ?」
「やったあ!」

妻は嬉しそうにムームーを捲り上げ脱ぎ捨てると、アップに纏めていた髪を解きました。

「じゃ、抱いてっ!」
「って、おい。 今? ここで?」
「うんっ! しよっ?(笑)」

私は慌ててタオルケットから顔を出し周囲を見渡しました。
リクライニングシートの陰…。
良かった。
誰にも私達の事を気付かれていないようです。

いえ、それより何より、折角の妻からの申し出なのに、何回か放出した後の私は、正直なところ起つかなと妙な心配をしてました。

「周りのことなんて気にしないで! 真由美だけ見てて!」

そんな私の心配などお構い無しに妻は私のシャツのボタンを全て外し、ズボンを下げ私の股間を露わにすると私の体に跨りました。
私自身、もう誰に見られても構わないと思っていました。
私の理性のヒューズも飛んでいたのです。

妻は乳房を私の唇に含ませました。

「吸って…」

私は左右の硬く硬く尖った突起を、交互に唇で捉えると舌で転がしながら吸い上げました。

「あ、いい…貴方の唇…感じ…る…。 お願い…その唇も…ちょうだい…」

妻は唇を私の唇に重ね、舌を交換するような長いキスをすると私の体の上にピッタリと自分の体を密着させました。
そして、乳房と局部を私の体に擦り付ける様にしながら、その舌と唇を私の首筋から下半身へと滑らせていったのです。
途中、その舌と唇は私の左右の乳首に寄り道をしながら更に下腹部へと向かって行きました。

私はタオルケットを持ち上げるようにして妻の顔を眺めました。
妻は妖艶な瞳で見つめ返してきます。
そして私の視線を逸らさぬよう見上げながら私のペニスの根元から先端へ、丹念に舌を這わせ始めました。

(そんな娼婦のようなこと…)

「食べて…いい?」

私が頷くと、妻は先端部分にねっとりと唇を被せていきました。

妻の唇は先端から根元に向かってゆっくりと飲み込んでいき…そしてゆっくりと吸い上げました。
やがてそれが充分な硬さになったのを確かめると、再び私の胸元へ這い上がり、自らの手を添えると体の中心部に当てました。
妻はペニスの先端に、熱い蜜壷からの蜜を絡め取るように塗りつけると、それを使って、今度は自分のクリトリス、大陰唇、小陰唇の周りに塗り付け始めました。

「あぁ…いい…。 これが欲しかったの…。 貴方のが欲しかったの…」

妻は私のペニスの先端部分だけを自らの膣穴に埋没させました。

「あっ…あっ…あっ… もう…」
「どした?」
「これだけで… 逝っちゃいそうに… ああ…」
「もっと奥まで入れさせてくれなきゃ…」
「う…ん…」

妻は、唇を噛み締めながら、ゆっくりと、ゆっくりと、私のペニスを埋没させて行きました。

「あっ…あっ…貴方のが…入って来る…貴方のが入って来るっ…うっ…うっ…うっ…」
「何処に? 何処に入って来るのか、言えるかい?」
「真由美の…真由美のやらしい…オ…マ…ンコに…あっ駄目っ! 逝っちゃう… いっ…いっ…逝っ…くっ…」

妻は私の分身を完全に埋め込まれる前に…私の前で初めて口にする羞恥にまみれた言葉を発しただけで…。
妻は激しく逝ってしまいました。

ギュッギュッギュッ…。

妻の膣の締め込みを感じながら、私は妻の腰を持ち私の股間に押し付けるようにして妻の深奥に届けとばかりに打ち込みました。

「あっ駄目っ! まだ動いちゃ駄目なのにっ! また逝っちゃう。 あなたのだと○○○○が勝手に何度も逝っちゃう… うっ…うっ…うっ…」

ぎゅ…ぅぅぅぅぅぅぅぅ…。
妻の激しい痙攣とともに膣は収縮し、さらに強く、痛いほど強く、私のペニスは締め込まれました。

「あっ!」

突然、妻の局部から激しい勢いで噴出したもので二人の腰の辺りはびしょ濡れになってしまいました。
妻の静かで、そしてこんな激しい絶頂の迎え方を見るのは、私にとって(妻にとっても?)初めての経験でした。
女に対する男の征服欲が満たされた、一瞬でした。
私の股間にも自信がみなぎってくるのを感じました。

「凄い…あっ駄目…じっとしてて! これ以上貴方に動かれたら…私…死んじゃう…うっ…うっ…うっ…」

私のペニスを膣奥深く飲み込んだまま、妻は肩で息をしながら痙攣が治まり体が落ち着くのを待っていました。

やがて、目的を失った私のペニスも萎えた頃、妻はそれをゆっくりと引き抜くと、突っ伏していた顔を上げました。
そして、私を見ると恥ずかしそうに舌をペロッと出して言いました。

「ごめんね? 私だけいっぱい、いっぱい逝っちゃった…(照)」

そして私の萎えたペニスを、その手の中に優しく包み込むように持って言葉を続けました。

「ねぇ…。 お口で…して上げよっか? その…ほら…私のオマ…ン…だと久しぶりの貴方のアレ、感じ過ぎて私の方が駄目みたいだから…」
「いいさ。 その代わり明日、プールかサウナで君を抱く。 人が見ててもお構い無しに、だ(笑)」
「ホントに!?(喜)」
「ああ。 真由美様に誓っちゃったからな(笑) っと言うよりは、だ」
「なに? なに?(笑)」
「これからは君の、このココが…」
「うん」

私はまだ熱く濡れそぼった妻の蜜壷に掌を当てるとワザと乱暴に言いました。

「欲しくなった時は遠慮なくぶちこんでやる! 真由美様を犯してやる!」
「やったぁ! って犯されちゃうのに喜んでちゃ変だね私(照) ちょっと待ってて、貴方の着替え、取って来る」

妻はムームーを着るとタオルケットを抜け出しました。
私は妻の手首を掴み、その体を引き寄せました。

「え? 何?」
「真由美を…今、ここで食べたいんだ」

私は妻を顔の上に跨らせるとムームーの中に頭を入れ…そして舐め始めました。

「あっ…そんな…」

私は妻のクリトリスを唇で挟むようにして吸い立てました。
そして尿道、膣口も舌で掻き回すようにして舐め回しました。

「あっ…激しくしないで! また逝っちゃうから! また溢れちゃうから!」
「あーーー! 逝くっ、逝っちゃう! あ、また逝っちゃう! 真由美の○○○○何度でも…あっ…あっ…あっ…」

妻の尿道深く尖らせた舌先を押し付けた時、それは始まりました。

「あっそれ駄目っ! 出ちゃう! 出ちゃうからっ! ごめんなさい…もう…もう…逝っ…くっ…」

ビュッビュッビュッ。
私の顔に、その飛沫は飛び散りました。
妻の全身が硬直しているのが判ります。

妻はやがて落ち着きを取り戻すと、思い出したように慌ててムームーの下の私の顔を覗き込みました。

「ごめんなさい! だってあんなに激しくするんだもん…」
「君の○○○○、おいしかった」
「もぅ…(微笑) それじゃタオルも取って来るね?(嬉)」

しばらくして、いそいそと新しいタオルケット2枚と私の為の着替えの館内着、濡らしたタオルを持って戻ってきました。
新しいタオルケットを敷き、そこに私を寝かせると再び私に体を預けてきました。
そして先ほどと同じように、もう一枚のタオルケットを二人の体に被せました。
そして、軽く私の唇にキスをすると私の顔を濡れたタオルで拭き始めました。

「もー、あんまり苛めないで…(照)」
「久しぶりに君が抱けて嬉しかったんだ。 だからつい…苛めたくなった(笑)」
「私も…貴方に抱いて貰えて…嬉しかった…」

妻は再び私の唇に軽いキスをすると、また私の胸に耳を当て心臓の鼓動を聞き始めました。

「動いてる…」
「生きてるからな」
「私も…生き返った気がする…」

妻はさっきと似たような会話を繰り返しました。

私は満たされた気持ちで目を閉じ、妻の髪を撫でていました。

長い静寂があったかと思います。

しばらくして、突然、妻がポロポロ、ポロポロと涙を零し始めました。

「どうした?」
「ん…うん」
「何?」
「ごめんね?」
「何が?」
「私…子供産めない体で…」
「バカ…」

心臓を殴られた気がしました。
それは、私が妻から一番聞きたくなかった言葉だったからです。

「そんなこと…気にしなくていいんだ。 そんなこと、二度と口にしちゃいけない」
「だって…だって…」

堰を切ったように肩を震わせ泣きじゃくる妻の体を、私はただ抱き締める事しかできませんでした。
妻が一人で背負ってきた深い大きな哀しみが、そのぬくもりを通して私の心に流れ込んできました。

「本当だ。 君さえ居ればいいんだ。 他には何も要らない」

どうすればそれを信じて貰えるのか。 どうすればそれを忘れさせる事ができるのか。


今まで私は、妻がこんな風に泣いた所を一度も見た事が無かった…。
あんなにたくさんの時間を共に過ごしていながら…。
妻は私の胸で泣きたいと思った時が、今までどれほどたくさんあっただろう。
そんな事にも気付かない馬鹿な私を、妻は許し続けてくれていたのか…。

なのに…

「ごめんね…ごめんね…私…私…」 妻は私の胸で泣きじゃくりながら謝り続ける…。
「もう言うな。 謝らなきゃいけないのは俺の方だ、ごめん。 辛い思いを…さ…せた…」

妻の体を一際強く抱き締めながら、私にはそれだけを言うのが精一杯でした。
妻の哀しみを一度も受け留めようとしなかった自分が悔しくて、ただ、ただ、涙が溢れてきました。


すべてが理解できたのです。

妻は…、
私が妻を求めなくなったのは「女としての魅力が無いせいだ」と考え、
私が妻を抱こうとしないのは「抱いても面白みの無い女なんだ」と考えたのだと。
他の男を実験台にして、女としての魅力を再確認しながら乾いた体を満たしつつ、私が求め、喜ぶような女になりたいと。

私が覗いていることなど、とっくに気付いていたことだろう。
妻には私の企てを見抜くことなど造作も無い事だっただろう。

妻は私の企みが解るとそれに合わせ、時には強がって娼婦の様な真似までしてみせた…。
それもただ、私に抱かれ、喜ばれたい一心で…。

今まで妻から私に何も言わなかったのは、「貴方の好きにしていい」という強い意思の表れだったのだ…。


妻の嗚咽が治まるまでのしばらくの間、私は妻を抱き締めながら涙を拭うこともできず、顔を背けたままでいました。

(心の底から君を愛している… それは本当なんだ…)

言葉にならない想いを込めて妻の髪に口付けをすると、妻は顔を上げ、私の唇を受け留めました。
今まで二人が交わした中で一番しょっぱい口付けでした。
でも、二人の絆をより強くした口付けでした。

何よりも代えがたい存在…。
今は狂おしいほど妻が愛しい…。

なのに…

私のこの場を何とか取り繕おうとして口をついて出した言葉は、あまりに、この場にそぐわない間の抜けた台詞でした。

「いつまでも泣いてばかりいると犯しちゃうぞ。」と、顔を背けたまま。

妻は、ぷっと吹き出しながら、

「また、犯されちゃうの? 私(笑)」

妻が涙を拭いながら笑顔を輝かせました。
そして私の顔を覗き込むと悪戯っぽく言いました。

「それじゃ、いっぱい、いっぱい犯してね?(嬉) 今までいっぱい、いっぱい…泣いて来たんだからっ!」
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⑮レストルームでのセックス

その施設には女性にはムームー、男性にはハーフパンツとアロハシャツの組み合わせの館内着が用意されていました。

水着を脱水機に掛け館内着に着替えると、私達はビールを飲みながらの軽い食事を取りました。
そしてレストルームへ。

その施設にはレストルームが三箇所ありました。
男性専用、女性専用、そして普通に男女混合で利用できる所。
もちろん、私は(普通の)レストルームに向かいました。

レストルーム内は薄暗く、正面の大スクリーンに向かって40席程のリクライニングシートが並べられています。
そのシートには恋人同士や夫婦連れの姿もチラホラ見受けられます。
皆、思い思いにリクライニングシートを移動し、自分達の都合の良いように寄せたり離したりして利用しているようです。

(私にとって幸運な事に)二つ並んだ席が見当たりません。
私達は出入り口側の最後列に、分かれて仮眠することなりました。
最後列は左右3席ずつに寄せられ計6席。
左端から [男][私][男]  [男][妻][男] の順です。
この三つの席と席との間隔は密着しています。

私達はタオルケットを取るとそれぞれのシートに横になりました。
この状況から妻がどんな行動を起こすのか。
私はすでに興奮状態にありました。

私は水平だったリクライニングシートをやや起し気味にし、妻の姿が良く見えるようにしました。
わずかに起こしただけで横一列全員の姿を見渡すことができます。

妻は私が横になると1分も経たず熟睡してしまう事を知っています。
そして一旦寝たら朝まで起きない事も。
妻は横たわるとタオルケットを頭まで被りました。
しばらく大きな深呼吸が続き、やがて妻はタオルケットの下で何やらモゾモゾし始めました。

(!!!)

妻はタオルケットから顔を出すと着ていたムームーを頭から抜き取ったのです。
そして、そのムームーをタオルケットの中に隠すと、再びタオルケットを頭から被りました。
私は妻がノーブラ、ノーパンだったことは確認しています。
妻は今、タオルケットの下で全裸で横たわっているのです。

私を息苦しいほどの興奮が襲いました。

妻の形良く盛り上がった胸の辺りが大きな呼吸を繰り返しているのが判ります。

しばらくして、妻は「うーん…」と小さな声を上げ、寝返りを打つように左ひざを立てると、それを左側の男性の方に倒したのです。
タオルケットから妻の太腿の中ほどあたりまで露わになった左足が男性の太腿の辺りに当たりました。
その男性は何事かと驚いたように上半身を起こしました。
自分の体の方に突き出された妻の真っ白い左足と、頭からタオルケットを被った妻の体を交互に見比べています。
妻がさらに寝返りを打つように、タオルケットを巻き込みながら上半身を右側に少し向けました。
さらにタオルケットは引っ張られ、男性側に突き出されていた妻の左足は太腿の付け根どころか腰、わき腹まで露わになりました。
この男性には妻がタオルケットの下は全裸だと判ったはずです。

この時の男性の気持ちを考えてみてください。
隣に少なくとも下半身裸の女がタオルケット一枚、あと数センチタオルケットを捲るだけで「あの部分」が覗けるとしたら…。
しかもその女は熟睡しているらしい…。

男性が辺りをキョロキョロと見渡しています。
私同様、心臓が爆発しそうなくらい興奮していることでしょう。

彼は妻の股間辺りまで前屈みになると妻の股間に乗ったタオルケットを、ほんの少し持ち上げました。
下半身を覗きこんでいます。
それを見た瞬間、あえなく、私は握り締めた股間のタオルに暴発です。
私の弱点は、妻が見知らぬ男に目で犯されるだけで、興奮が頂点に達してしまうことです。

しばらく覗き込んでいた男性は、妻の左半身に掛かるタオルケットをそーっと捲くり上げると、ツルツルに剃られた妻の割れ目から左乳房の乳首が露出するところまで捲り上げました。
そして妻の体を横目で見ながら猛烈な勢いで自慰行為を始めました。
男性は、覗き行為をしてしまったという罪の意識があるのでしょう。
自慰行為が済むと妻のタオルケットを全身に掛け直し逃げるようにレストルームを出て行きました。

再び静寂が戻りました。

私は妻の行動を観察するつもりが、不覚にも昼間の運転の疲れからかミストサウナ同様、寝入ってしまったのです。

2時間? 3時間? どれくらい熟睡してしまったでしょうか。
ハッと我に返り目を覚ましました。

両隣の席に寝てたはずの男達も今は居らず空席がかなり目立ちます。
私は妻を隣の席に呼ぼうと思いました。
その妻は?
相変わらず妻は、頭からタオルケットを被って寝ているようです。
妻は羞恥に染まるような行為をする時は決まって顔を隠す癖があります。
まさか今度はオナニーでもしてるんじゃ…。

案の定、妻の下腹部あたりのタオルケットが蠢いています。
でも、こんな時間まで妻がオナニーをし続けてる?
目を凝らすと妻の胸元の位置のタオルケットも不自然に動いています。
時折、妻の体が波打つようにのけぞりました。
私はさらに良く見ようと、頭を持ち上げ目を凝らしました。

(!!!)

妻の両側に寝ている男達がモゾモゾと動いています。

あろうことか、妻は左右に座る男達の手で気をやらされていたのです。
妻と両側の男。
その三人が三人ともタオルケットを頭から被り暗がりの中で異様な光景を見せています。

(!!!)

妻の足元にも、身を隠すようにしゃがみ込み妻のタオルケットの奥深く手を差し込んでいる男がいるではないですか!
妻は私が知らない間に、三人の痴漢達の格好の餌食になっていたのです。

妻の足元にいる男が、妻のタオルケットを足元からゆっくりと捲り上げました。
いきなり真っ白な妻の下半身が露わになります。

男は、妻が全裸であることと、ツルツルに剃られた妻の卑猥な割れ目を見て、驚き、そして喜んでいるようです。
男は妻の膝をMの字に大きく開かせたまま手で押さえると全開になった妻の股間にむしゃぶりつきました。
妻の体が仰け反ります。
その間、両側の男達はタオルケットの下で妻の乳房をおもちゃにしています。
時折タオルケットから妻の乳房を露わにしては乳首に吸い付いています。

妻の蜜壷を嘗め尽くした男が顔を上げました。
汗を拭い、素早く館内着のパンツを下ろすと、妻の足をさらに押し広げるようにして両脇に抱え上げ妻に挿入しました。
男の尻が妻の股間に打ち込まれます。
わずか数十秒で男は射精を迎えたようです。
男はグッグッと尻を押し込むと動きを止めました。

やがて男はペニスを妻から引き抜くと満足したように妻の体をポンポンと叩き、辺りから身を隠すように中腰のままレストルームを出て行きました。

次に行動を起こしたのは妻の左側、私から見て手前の男でした。
その男は妻の体を押し妻に背中を向けるよう促しました。
妻が素直にそれに応じています。
その男は妻の背後からタオルケットを捲り上げると、すでに剥き出しなっている妻の尻を自分の腰の方に引き寄せました。
どうやら横になったまま妻を背後から犯そうと考えたようです。
挿入を試みる男の尻がひときわ強く押し出され、その後ゆっくりとした前後運動に変わったことで男のペニスが妻の膣内に完全に埋没したことを知りました。

しばらくして男は、大きく腰を突き出した後、尻をビクッビクッと痙攣させ、そして動きを止めました。
肩で大きく息をしています。
射精を済ませたその男も満足げに妻の体をポンと叩くと席を立ちレストルームから出て行きました。

妻はその頃はすでに、向こう側の男のタオルケットの下に頭を入れさせられていました。
その男の股間の辺りのタオルケットの下で妻の頭がゆっくりと上下しています。
そのゆっくりとしたストロークの大きさから妻はその男のペニスを喉の奥まで咥え込んでいるのが判りました。
男は目を閉じうっとりとした表情を見せています。
男は逝きそうになると妻の頭をその手で抑え、妻の唇による奉仕を一旦止めさせます。
射精を堪えているようです。
そんなことが何度も繰り返され…。
5分? 10分? とても長い時間に感じました。

やがて妻の動きが止まり、男の体がしなりました。
男がやっと逝ってくれたようです。
妻はペニスを咥え込んだまま男の脈動が治まるのを待ち、やがてそれを確認すると、再び頭をゆっくりと上下させ始めました。
最後の一滴まで飲み干そうとしているのです。
妻に精を吸い取られる間、男の体はガクガクと痙攣し続けています。

やがて妻にしゃぶり尽くされた男は何度も何度も妻の頭を撫で、そして深いため息をつくとレストルームを出て行きました。


妻はしばらくそのままでした。
やがて妻がタオルケットから少し顔を出しました。
周りの状況を確認しています。
それから私の方をチラッと見ました。
私の様子を窺っているようです。
私が寝ているとみて安心したのか妻はタオルケットを全身に掛け直すと、肩で息をしながら目を瞑っています。

その時、誰かがレストルームに入ってくる気配がしました。
妻はまたタオルケットを頭から被り直しました。

男が入って来ました。
男は辺りを見回し、タオルケットを全身に被った妻の姿を見つけると迷わず妻の枕元に立ちました。
そして妻の頭の横に跪くと、館内着のズボンの前を下ろしシャツの間からペニスだけを覗かせ、妻の頭を引き寄せました。

(!!!)

妻は僅かに顔を出すと垂れ下がったペニスの先端を唇に咥え、ペニスだけを自分のタオルケットの中に導き入れたのです。
妻は男のペニスをタオルケットで隠すようにしながら吸っています。
やがてペニスの硬さが確認できたのか、今度はゆっくりと大きなストロークで喉の奥まで飲み込んでいきました。
男が時折、ビクッビクッと腰を引くような動作をします。
でも妻の唇はそれを離そうとはしませんでした。
さらに大きなストロークでペニスの根元まで飲み込もうとします。
やがて男が腰をガクッガクッと痙攣させました。
男が逝ったのです。
妻はその痙攣が収まったのを確認すると、再び根元まで飲み込み、最後の一滴まで吸い取ると、やっと男のペニスを開放しました。
男は深いため息に似た吐息をもらすと妻の頭を撫でレストルームから出て行きました。


妻の痴態に、何度も股間のタオルに射精を繰り返したはずなのに、私の股間はまた爆発寸前でした。

私は立ち上がると今の男を真似て妻の傍らに跪くとペニスをズボンとシャツの間から取り出し、そして妻の頭を引き寄せてみました。
妻はタオルケットを私の怒張にかぶせると唇を寄せ、そして喉の奥底まで飲み込んでいきました。

(ああ…君は何て事を…)

妻の大きなストロークが始まりました。
やがて、猛烈な射精感に襲われ、二度、三度、妻の喉の奥深く私は放ち続けました。
妻に最後の一滴まで吸い取って貰いながら、「今君が味わっているのは君が求めようとしなかった私のペニスなんだよ、おいしいかい?」と私は妻に、そう問い掛けたくて仕方ありませんでした。


私とは知らぬ妻に最後まで始末して貰うと、私はレストルームを出るふりをして再び自分のリクライニングシートへと戻りました。
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